人は誰かと出会う前から、無意識にフィルターをかけてしまっているのかもしれない。ドラマ『100⽇後に別れる僕と彼』(MBS 毎週火曜24:59〜/TBS 毎週火曜25:26〜放送中)でディレクター・茅野志穂役を演じる鳴海唯が、作品や自身の経験を通して、カテゴライズすること、されることについて考えを巡らせた。
佑⾺と樹の本音の中に散りばめられた“宝物みたいな言葉”
――脚本を読んだのですが、とても面白かったです。ハッとするセリフや展開がいくつもあり、この物語が映像になったドラマを早く観たくなりました。鳴海さんは最初に脚本を読んだとき、どんな感想を持ちましたか? (※取材はドラマ放送開始前に実施)
最初に脚本を読ませてもらったとき、もやがふわっと晴れたような気持ちになって、すごく衝撃を受けました。佑⾺と樹がずっと嘘をついて、ドキュメンタリーに参加してくれるんですが、最後に語られる2人の本音が、この作品の全てを物語っている。そんな印象的なシーンが最後に描かれるのですが、2人から発せられる本音の中には宝物みたいな言葉がたくさん散りばめられてる印象がありました。
ドラマの題名だけを見ると、LGBTQ+の作品であるというカテゴライズをされるかもしれないのですが、それだけじゃなくて、志穂の女性としての葛藤や、志穂の先輩の尚美さんが抱える育休中の葛藤や難しさといったものもすごく丁寧に描かれているので、ひとくくりにできない面白さがある作品だと、脚本を読んだときに思いました。そして、私がこの脚本を読んでハッとしたように、ドラマを観てくださる方にも同じような体験をしていただけたらいいなと思いました。
――脚本を読んでいて私が一番共感したのが、鳴海さん演じる志穂で。第4話で志穂が自分の考え方について気づきを得たシーンは考えさせられました。
おっしゃっていただいたように、作品を通して視聴者の目線に一番近いのが志穂だと思うので、その役割を担うことができたらいいなというのが最初に思ったことでした。(このドラマは佑⾺と樹の)2人の物語ではあるんですけど、志穂の1人の女性としての葛藤と、ディレクターとして2人に向き合う上での葛藤みたいなものも並行して丁寧に紡いでいけたらいいなと。それを6話という話数の中でどれくらい丁寧に表現できるかは課題の1つでした。
自分の撮影がないシーンでも現場にいた理由
――志穂はドキュメンタリーを撮っているディレクターじゃないですか。その役を鳴海さんが演じると聞いて、ぴったりだなと思ったんです。というのも、はじめて鳴海さんを取材させていただいたとき、インタビュー中に私の話も聞いてくださって、人に興味がある方なんだなという印象があって。
うれしい。ありがとうございます。
――なので、ディレクターという仕事に就いている人を演じることはどのような感覚だったのかが気になったのですが、いかがでしたか?
今回はいつもとはちょっと違う新境地に挑んだ感覚があって。カメラが自分のほうに向けられてない時間を過ごしたというか、自分が撮影じゃないシーンでもその場にいることが多かったんです。(佑⾺と樹にカメラが向けられている)2人のシーンを撮っているので、私はその場にいなくてもいいんですけど、2人はディレクターの志穂に向けてしゃべっているので。
――カメラに映っていなくても、志穂としてそのシーンに参加する意味があった。
2人をずっと見守る形で、自分のシーンじゃなくても一緒にいる時間が長かったので、志穂なのか私なのか、境界線がない。本当にドキュメンタリーを撮影しているようでした。2人を見ていたいという気持ちに自然となりましたし、志穂は2人に関連する方々の取材にも行くのですが、そのシーンの撮影で、監督がカットをかけてから「ちょっとそのまましゃべっていてください」と伝えて、セリフ以上の言葉が生まれる瞬間もたくさんあって。
――それを鳴海さんが志穂として目の当たりにしている。
はい。そういう瞬間が多々あったので、自分のシーンじゃないときも常に志穂としての感情が蓄積される時間がたくさんあって、不思議な体験でした。いつもは自分がカメラを向けられている側なので、その逆の立場にずっといるという感覚が面白かったです。5話は特にワンカットを意識して監督が撮られていたので、よりドキュメンタリー要素がぐっと強まっていて、全体を通してリアリティがすごくある仕上がりになってるんじゃないかなと思います。
――監督から鳴海さんに演出について何かお話はありましたか? もしくは鳴海さんから聞いたことだったり。
それでいうと、監督の草野(翔吾)さんがディレクターとして一番近くにいてくださるお手本だったというか。
――なるほど! 現場で監督の立ち振る舞いを見ていることも役作りになるわけですね。
そうなんです! 志穂にとっては、このドキュメンタリーが初の監督作品になるんですけど、実際に草野さんが初めてディレクターを務めたときの気持ちを聞かせてもらったり。草野さんもディレクターである志穂という役への思い入れが強かったので、その期待に応えたいという思いもありました。


