星野リゾートが展開する温泉旅館ブランド「界」は6月1日、「温泉文化いろは」の提供を全国の施設で開始した。
日本は世界屈指の温泉資源を誇る温泉大国であり、古くから独自の「温泉文化」を築いてきた。現在、2030年のユネスコ無形文化遺産登録を目指す動きが本格化しており、その価値を次世代へ継承する機運が国内外で高まっている。一方で、現代の旅行においては、温泉が「ただお湯に浸かってリラックスする場所」という一面的な消費にとどまりがちであるという課題があった。そこで同社は、先人たちが繋いできた温泉地の歴史や伝承、自然環境の豊かさに着目。宿を訪れる旅行者の知的好奇心を満たす新たな入浴提案を行うことで、日本が誇る温泉文化のさらなる活性化に寄与したいと考え、同プログラムの開発に至ったという。
単に「浸かる」だけではない、新しい温泉文化体験
単にお湯に浸かるだけでなく、体内や手足、嗅覚をフルに使い、温泉の力に触れる体験を提案する。「界 ポロト」(北海道白老郡)が着目したのは、北海道遺産にも登録された稀有な「モール温泉」。太古の植物が織りなした地層の成り立ちを紐解きながら、その美肌の秘密に迫る。ハイライトは、豊かな潤い成分「シリカ」を、冷たいシリカ水としてグラスで贅沢に味わう試飲体験。温泉が生まれる仕組みを五感で知ることは、温泉文化を深く愛する第一歩。ただ浸かるだけでは終わらない、深い驚きと納得の時間を届ける。
地域を愛するスタッフが知られざる物語を語り継ぐ
全国のスタッフが「界の湯守り」となり、その土地ならではの温泉文化を自らの言葉で伝える。「界 アルプス」(長野県大町市)が用意したのは、どこか懐かしいオリジナルの紙芝居。北アルプスの麓、長野県大町市では「泉小太郎伝説」など、豊かな自然と険しい山々をルーツとした民話が幾つも語り継がれており、同施設では大町温泉郷の湯元である名湯・葛温泉にまつわる民話を鮮やかに紐解く。紙芝居を楽しんだ後は、そのまま大浴場へ。雄大な山々を望む露天風呂で名湯に身を委ねれば、先ほど触れた民話の世界が、視覚、聴覚、そして湯の心地よさを通じて全身へと染みわたる。
独自の空間と緻密な演出で、物語の世界へ誘う没入設計
各施設が保有する非日常の空間やロケーションを最大限に活かし、ゲストが物語の当事者となる没入空間を設計している。源泉数・湧出量ともに日本一を誇り、多種多様な泉質が楽しめる別府温泉において、湯めぐりのフィナーレを飾る「仕上げ湯(美肌の湯)」として知られる「界 別府」(大分県別府市)では、実験室をイメージしたモダンな館内空間「ラボ」に集う。別府に根付く共同浴場(ジモ泉)と人々の暮らしの歩みを紐解きながら、温泉が持つ美肌成分の秘密を学び、本物の温泉水を配合した自分だけのオリジナル温泉ミスト作りを体験できる。



