北村匠海が主演を務めるフジテレビ系ドラマ『サバ缶、宇宙へ行く』(毎週月曜21:00~ ※FOD・TVerで見逃し配信)の第6話が、18日に放送された。

本作は、海辺の町で教師になるという“なんとなく”の動機で、とある田舎町の水産高校に赴任してきた新米教師が、同じく“なんとなく”日々をやり過ごしてきた生徒たちと出会い、高校自慢の「サバ缶」を宇宙食にするという夢に向かっていく、実話をもとにした青春学園ドラマ。

今回は、廃校の危機、実習の制限、そして東日本大震災――自分ではどうすることもできない出来事によって夢を絶たれた井畑の背景が描かれることで、本作がこれまで積み重ねてきた青春の尊さが、より鮮明に立ち上がった。

  • 荒木飛羽=『サバ缶、宇宙へ行く』第6話より (C)フジテレビ|

    荒木飛羽=『サバ缶、宇宙へ行く』第6話より (C)フジテレビ

描かれたのは“道を少しそれてしまった青春”

このドラマの良さは、これまで何度も述べている通り、「サバ缶を宇宙へ!」という途方もない夢に対して、誰もが“まっすぐ”に突き進む、その姿勢の潔さにある。

それは波乱万丈で激動、感情を無理やり揺り動かしてくるエンターテインメントに徹底する最近のドラマへのアンチテーゼでもあるかのように、大きすぎる夢への嘲笑や、わかりきった衝突、結論ありきの紆余曲折などをあえて描かない。いや、描かないからこそ、よりストレートに感情を伝えることができる。そんなドラマなのだ。そしてそれこそが、本当の“青春”であるかのように…。

しかし当然、“青春”とは劇中のような“まっすぐ”なだけではない。夢に向かって青春を謳歌するその姿は確かに尊い。だが、その尊さは“簡単ではない”と私たちは知っているからこそ、心の機微に触れるのだ。

そんな青春を送った人も、送れなかった人も、いずれにしてもその青春を俯瞰(ふかん)する立場になった筆者のような大人は、まっすぐ過ぎる青春を謳歌する学生たちの姿に、否応なしに感動してしまう。あんな青春が当たり前ではないことを知っているからこそ、そんな尊い青春を送っている学生たちに対して、「当たり前じゃない」と冷笑する邪念を捨て、ただただ感動できるのである。

けれど本作は、第5話まで“まっすぐ過ぎる青春”を描き切った次の回となる今回の第6話で、真っ当に進むだけの青春を描かなかった。映し出されたのは、“道を少しそれてしまった青春”だ。

人は生まれながらの悪人ではない――はずである。順調に育ち、まっすぐ前を向いて生きていける人もいれば、周囲の環境によって少しずつ横道へ逸れ、そのまま元に戻ることすら難しくなってしまう人もいる。今回、本作はその“環境”を、井畑(荒木飛羽)という生徒に背負わせた。

“宇宙”だからこそ成立する青春ドラマのロマン

これまで連綿とつながれてきた「サバ缶を宇宙へ!」という夢を、幼少期に受け継ぎ、それを果たそうと若狭水産高校に入学した井畑。だが、その瞬間、学校は廃校の危機にさらされ、サバ缶作りの実習も自由にできなくなった。さらに追い打ちをかけるように、東日本大震災が起こる。

彼の“まっすぐな青春”は、誰のせいでもない、いや、自分自身ではどうすることもできない不可抗力によって、“絶たれて”しまったのである。

井畑は、いわゆるテレビドラマでよく描かれる“不良”だ。だが本作は、そんなステレオタイプな“不良”に、ここまでの背景を丁寧に重ねることで、単なる記号ではない“血肉”を持った存在へと変えてみせた。その結果、彼の荒れた言動すら、痛々しいほど心情として伝わってきた。

そして同時に、これまで描かれてきた“まっすぐ夢へ向かえる青春”が、決して当たり前ではなかったことも浮かび上がらせた。だからこそ、これまで描かれてきた青春も、今回の井畑の青春も、どちらも等しく尊いものだったのだと気付かされるのである。

終盤、井畑を救った友人・佐伯(市原匠悟)は、「サバ缶を作りたい!」ではなく、「井畑と一緒にやりたい!」と語った。そのあまりにもまっすぐで、清々しい思いの発露は感動的だった。しかし、彼自身は否定するかもしれないが、あえて言いたい。やはり今回、井畑を救ったのは、「サバ缶を宇宙へ!」という壮大すぎる夢そのものだったのではないだろうか。

夢は大きすぎるほど、時に霞んで見え、挑戦する気力すら失わせる。だが、“宇宙”という言葉には、それでも人を惹きつけてしまうロマンがある。どうしても追いかけたくなってしまう魔法がある。今回のエピソードは、極端に言えば、別の夢でも成立したのかもしれない。たとえば野球やサッカーなどのスポーツでも似た構造にはできただろう。井畑を救うこともできたかもしれない。

けれど、それが“宇宙”になることで、ここまで物語の見え方が変わる。そう思わされるほど、今作における「サバ缶を宇宙へ!」というテーマには、唯一無二のロマンと大きさがある。

第6話は、そのことを改めて感じさせてくれるエピソードであった。

  • (C)フジテレビ