業績も社員数も右肩上がりで、オフィスはコワーキングスペースでの起業からすでに3回移転。急成長のため、2年契約をやむを得ず半年で退去して解約費用を払ったこともあったという。

現在のオフィスは東京・渋谷に構えるが、「TikTokを運営するByteDanceやGoogleなど、プラットフォームの会社が近くにあること。また、次のカルチャーはやっぱり若い街から生まれるということで、若い社員の意見も取り入れました」(米永氏)と選定した。

ベンチャー企業だけにリモートワークが中心と思いきや、意外にも対面を重視している。

米永氏は「クリエイティブの仕事は、リモートのミーティングだけじゃ伝えきれないことがあるんです。上の人に質問したい時に、“今5分空いてるかも”という感覚で話しかけられないと成長のスピードが遅くなってしまう。若い子たちが育ちやすい環境にするためにも、マネジメントのメンバーと対面でいられるようにするのを大事にしています」と説明。

平日朝9時から毎日出社するという橋本氏も「“最近何が面白い?”、“こんなの作れないかな?”、“このタレントさん、めっちゃ面白かったんだよね”みたいに、雑談で生まれることって大きいんです。日テレでも、トシさん(高橋利之氏、『行列のできる相談所』など)とか古立(善之、『世界の果てまでイッテQ!』など)さんとか、先輩の総合演出がみんなを雑談に巻き込んでくれましたから」と自身の経験から賛同している。

炎上は狙わない…大義を持ったコンテンツ制作

テレビ局を含む各社が参入する縦型ショートコンテンツ市場だが、米永氏は「まだ伸びていくと思います」と期待を示す。

「SNSの時代になってフォロワー数が重視されてきましたが、縦型ショート動画は最初にコンテンツを出すと100~400人のタイムラインに出てきて、反応が良いと次の1,000人、2,000人へと広がっていく、極めて“コンテンツファースト”なアルゴリズムになっているんです。シンプルに流れてきたものが面白いかどうかが一番の判断基準になってくるので、よりリッチなコンテンツが求められるというのが、大きな流れとしてあると思います」(米永氏)

ショート動画界隈は、バズるための過激で刺激的なタイトルやサムネイルが氾濫するイメージがある。この点について、米永氏は「たしかにマイナスの感情にアプローチして炎上的にバズるケースもありますが、TikTokなどは中高生まで見るプラットフォームなので、規制も厳しくなっています。やはり長い目で見ると、どのプラットフォームも、上質でいいコンテンツが残っていく時代になっていくと思います」と予測。健全なコンテンツを作ることは、いわゆるナショナルクライアントの企業との向き合いにおいても重要になるという。

橋本氏も「炎上を狙ってしまうと、作り手の気持ちが荒んでしまう」とした上で、「世の中にとっていい影響を与えるコンテンツを作るということは、すごく話しています。毎朝ショートコントを配信することで、ひと笑いして会社に行くという習慣があったらみんなが楽しくなる――それがKDDIさんと決めた最初のコンセプト。何のために作るのかという思いが、これから大事になってくると思うんです」と、大義を持って制作に臨んでいる。QREATIONの強みである「最高品質」は、こうした面でも今後さらに真価を発揮することになりそうだ。

同社の掲げるもう一つの大義は、「若い世代に提案し続ける会社」であること。米永氏は先述の時代劇『江戸にログインしました。』を例に挙げ、「日本が誇るエンタメカルチャーを次の世代に紡いでいき、その先にはグローバルに届けたい。それをかなえるために、縦型という若い世代に向いて、グローバルにも出やすい形態で取り組むのが、新しい時代劇の形だと思ってやっているプロジェクトです」と意義を語る。

橋本氏も「流行りの楽曲を勉強してそのコンテンツを作るというのもあっていいと思うのですが、若い世代に迎合するのではなく、“志を持ってデジタル起点で作っていく”という気持ちが大事だと思うんです。テレビというメディアは元々そういうもので、『有吉の壁』もお笑い番組がなくなっていた状況であのフレームを作って、有吉(弘行)さんが乗ってくれて実現できた。新しいフィールドに飛び込むには勇気とリスクがいりますが、デジタル市場ではそういう会社がまだ少ないので、挑戦し続けたいですね」と意欲を示した。