主要20作がそろった2025年秋ドラマ。今回もドラマ解説者の木村隆志が、主要新作の初回放送をウォッチし、俳優名や視聴率など「業界のしがらみを無視」したガチンコでオススメ作品を探っていく。
別記事(「史上最高レベルの…」「大河ドラマ級」2025年秋ドラマ、オススメ5作は? ドラマ解説者が20作の傾向を徹底分析)において2025年秋ドラマの主な傾向を【[1]ドラマ史上最高レベルの豪華キャスト [2]新旧の脚本家が顔を合わせた異例の状況】の2つと解説。
おすすめドラマとして、『ザ・ロイヤルファミリー』(TBS系 日曜21時)、『すべての恋が終わるとしても』(ABC・テレビ朝日系 日曜22時15分)、『もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう』(フジテレビ系 水曜22時)、『じゃあ、あんたが作ってみろよ』(TBS系 火曜22時)、『シナントロープ』(テレビ東京系 月曜23時6分) の5作を選んだ。
本記事では、それらを含む主要20作のレビューと目安の採点(3点満点)を挙げていく。
『絶対零度~情報犯罪緊急捜査~』 月曜21時~ フジ系
出演者:沢口靖子、安田顕、横山裕ほか
寸評:局のブランドであるシリーズだが、今作は“最低温度”を彷彿させるヒリヒリとしたムードは薄く、テーマの情報犯罪も前作“ミハン”のような斬新さはない。現場を走り回る沢口の姿は『科捜研の女』榊マリコのイメージを生かしたギャップこそ感じるが、「なぜ還暦の彼女が最前線にいるのか」という違和感は拭えないまま推移。「高齢の主人公が悪を裁く」という図式は『水戸黄門』の世界観に近い。
採点:【脚本☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 期待度☆】
『終幕のロンド ―もう二度と、会えないあなたに―』 月曜22時~ カンテレ・フジ系
出演者:草なぎ剛、中村ゆり、八木莉可子ほか
寸評:カンテレ主演10作目の草なぎは安定した演技で、三宅喜重監督や河西秀幸プロデューサーらは今回もその魅力を引き出している。遺品整理のエピソードは丁寧に作られている一方で気になるのは“感動”に偏りすぎて“厳しい現実”が描かれないこと。さらに、大企業の闇や不倫などのサイドエピソードが多く、ネット上に「消化不良」という声があがる結果を招いている。遺品整理に絞ればシリーズ化も可能で、やればやるほどエピソードの精度や具体性があがっていくのではないか。劇伴や主題歌などの“音”が映像から浮いている感も。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 期待度☆☆】
『シナントロープ』 月曜23時6分~ テレ東
出演者:水上恒司、山田杏奈、坂東龍汰ほか
寸評:クールでスタイリッシュな映像と音楽を連ね、若手俳優たちのみずみずしい演技を引き出すなど、多くのクリエイターが「こういうのが作りたい」というドラマなのだろう。全編を通してゆるさが漂い見やすい反面、ミステリーはなかなか掘り下げられず、店の成功や人物の成長も描かれないなど、エンタメ性は控え目。それでも制作サイドのこだわりは相当なものがあり、見れば見るほどハマる中毒性がある。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆☆ キャスト☆☆☆ 期待度☆☆】
『ちょっとだけエスパー』 火曜21時~ テレ朝系
出演者:大泉洋、宮崎あおい、ディーン・フジオカほか
寸評:動きの少ない序盤は大泉洋×野木亜紀子ならではの余裕か。『スーパーサラリーマン左江内氏』やバカリズム脚本のような“ちょっとだけ”ファンタジーを楽しめるのか、評価の分かれる作品になりそう。「エスパーの設定もミッションの成否も脚本家が自由自在に変えられる」という押しの強い作風だけに、それが気にならないくらいの大団円を見せたいところ。同じコメディ巧者のファンタジー作『ふてほど』が“阿部サダヲ劇場”にならなかったように、当作も“大泉洋劇場”にならないようなテーマの追求と助演の活躍が求められる。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 期待度☆☆】
『新東京水上警察』 火曜21時~ フジ系
出演者:佐藤隆太、加藤シゲアキ、山下美月ほか
寸評:佐藤が熱く純朴な男を演じた『海猿』の20年後に海のドラマで主演を務めるめぐり合わせも、「デリカシーのない水恐怖症のリーダー」という役柄も面白い。“水上”は事件の内容も解決に向かう映像もバリエーションが難しいのか、水上警察VS地上警察、海技職員の葛藤など人間模様がしっかり描かれている。「やっぱり刑事にしろ恋愛にしろフジは海辺のドラマがしっくりくる」と思いきや、終始「なぜ夏ドラマではなく、寒々しい秋ドラマなのか」という苦しさがつきまとう。
採点:【脚本☆☆ 演出☆ キャスト☆ 期待度☆】
『シバのおきて~われら犬バカ編集部~』 火曜22時~ NHK総合
出演者:大東駿介、飯豊まりえ、片桐はいりほか
寸評:脱走癖やしっぽ特集などの「柴犬あるある」も、愛らしいカットも芯を食っているのは原作に忠実だから。編集部のメンバーも編集作業もツッコミどころだらけだが、1話1号の構成はわかりやすい。ただ視聴者に「平成の話」であることをしっかり伝えられていないため、“犬バカ”の描写に「今とは違う」という令和とのズレを感じる。問題は「呼んだらすぐ来る」「お座りしてなでられる」「犬同士仲よくする」などの都合のいい描写。柴犬の飼い主たちは首をひねっているだろう。
採点:【脚本☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 期待度☆】
『じゃあ、あんたが作ってみろよ』 火曜22時~ TBS系
出演者:夏帆、竹内涼真、中条あやみ ほか
寸評:最大の話題作であり、遊び心のある演出と竹内の役作りは出色。「続きを見たくなる」「語りたくなる」制作方針が徹底されている。しかし、初回の開始25分で主人公の性格が一変するなど人物描写は粗く、同じ町の同じ商店街に住み続け、偶然の出会いが目白押し。また、男女ともに周囲を“いい人”で固めた分、成長物語としてのカタルシスは薄くなった。今秋の『小さい頃は、神様がいて』もそうが、このところ令和の人々に昭和の男性を揶揄させるような作品が多発。悪いところのみをデフォルメして切り取り、話題性を狙うアンフェアさがある。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆☆ キャスト☆☆☆ 期待度☆☆】






