主要22作がそろった2025年冬ドラマ。今回もドラマ解説者の木村隆志が、主要新作の初回放送をウォッチし、俳優名や視聴率など「業界のしがらみを無視」したガチンコでオススメ作品を探っていく。

別記事(「2025年冬ドラマ」オススメ5作&傾向分析 1位は“幅広い視聴者層”と“セルフアンチ” 苦境フジテレビに求められるものとは)において2025年冬ドラマの主な傾向を【[1]さらなる保守化の中、際立つ日曜劇場と金曜ドラマ】【[2]苦境のフジテレビに求められるものとは】の2つと解説。

おすすめドラマとして、『御上先生』(TBS 日曜21時)、『クジャクのダンス、誰が見た?』(TBS 金曜22時)、『ホットスポット』(日テレ 日曜22時30分)、『日本一の最低男』(フジ 木曜22時)、『東京サラダボウル』(NHK総合 火曜22時)の5作を選んだ。

本記事では、それらを含む主要22作のレビューと目安の採点(3点満点)を挙げていく。


『119 エマージェンシーコール』 月曜21時~ フジ

出演者:清野菜名、瀬戸康史、見上愛ほか
寸評:指令管制員にフィーチャーした新しさがある反面、NHKのドキュメンタリーシリーズとの比較は避けられない。横浜消防局の協力を得られただけに、いかにドラマティックな物語を手がけられるか。現場の消防士と比べて動きのない立場ゆえに揺れ動く心理や決断の難しさをしっかり描きたい。序盤は先の読めるエピソードが続いただけに意外性に期待したいところ。地震や会見などに妨害されたのは不運だった。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 期待度☆☆】

  • 清野菜名


『秘密 ~THE TOP SECRET~』 月曜22時~ カンテレ・フジ

出演者:板垣李光人、中島裕翔、門脇麦ほか
寸評:架空の組織と架空のMRI捜査という刑事ファンタジー&サスペンスは、「斬新か幼稚か」紙一重の設定。そのため主人公が「死者の最期まで秘めていた想いを見てしまう」という葛藤でいかに引きつけるか。若く童顔なメインの2人はこれまで以上に熱っぽい演技が求められる。
採点:【脚本☆ 演出☆☆ キャスト☆ 期待度☆☆】

  • 板垣李光人


『バニラな毎日』 月~木曜22時45分~ NHK総合

出演者:蓮佛美沙子、永作博美、木戸大聖ほか
寸評:業績不振で閉店、多額の借金、バイト掛け持ちという過酷な状況に追い込まれた主人公の設定は夜の帯ドラマとしてはヘビー。しかし、謎の料理研究家が醸し出す不思議なムードで中和している。「心に痛みを抱えた人々を“お菓子教室”で癒していく」という筋書きは救いがある反面、ご都合主義の感も否めない。美しくおいしそうなスイーツとレシピをベースにしたコンセプトはこの時期にピッタリ。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 期待度☆☆】

  • 蓮佛美沙子


『財閥復讐~兄嫁になった元嫁へ~』 月曜23時6分~ テレ東

出演者:渡邊圭祐、瀧本美織、西垣匠ほか
寸評:深夜ドラマのメインジャンルである復讐劇に財閥をプラス。不倫も絡めたけれんみしかないような世界観はテレ東が自ら手がけたオリジナル漫画だけに、マーケティングの上で勝機を見い出しているのだろう。もはや往年の東海テレビ昼ドラを思わせるレベルであり、渡邊と瀧本も役に入り切っているが、肝心の“財閥感”が薄い。
採点:【脚本☆ 演出☆ キャスト☆☆ 期待度☆】

  • 渡邊圭祐 撮影:泉山美代子


『アイシー ~瞬間記憶捜査・柊班~』 火曜21時~ フジ

出演者:波瑠、森本慎太郎、山本耕史ほか
寸評:同枠復活の第2弾も刑事ドラマであり、次の『踊る大捜査線』を生み出したいという狙いは明らか。主人公の女性刑事は「クールで壮絶な過去を持つ」「班を率いる主任」であり、佐藤祐市監督の演出も含め、『ストロベリーナイト』を思わせる仕上がりに。オーソドックスな刑事ドラマだけに、わざわざ採り入れたカメラアイ(瞬間記憶能力)という設定をどう生かすのか、脚本の完成度が問われる。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 期待度☆☆】

  • 波瑠


『東京サラダボウル』 火曜22時~ NHK総合

出演者:奈緒、松田龍平、中村蒼ほか
寸評:リアルな社会で次々に報じられる外国人の事件や犯罪を扱った作品は鮮度が高い。ただ視聴率が取りづらいテーマと外国語が飛び交う物語のためNHKでなければドラマ化できなかっただろう。報道では事件とひとくくりにされがちだが、どんな真実があるのか。偏見や差別はなかったか。そこに向き合おうとする刑事と通訳人は魅力的に見えるし、異国で暮らす人々の知られざる人生をのぞき見る楽しさもある。
採点:【脚本☆☆☆ 演出☆☆ キャスト☆☆☆ 期待度☆☆】

  • 奈緒


『まどか26歳、研修医やってます!』 火曜22時~ TBS

出演者:芳根京子、鈴木伸之、高橋ひかるほか
寸評:古くから研修医が主人公の医療ドラマは多いが、若手俳優の登竜門という意味合いが濃かった。その点、当作は実績も実力も折り紙付きの芳根京子。彼女があえて「医師1年目のイマドキ研修医」を演じる必然性がほしいが序盤では見えてこない。研修医としての2年間をどう濃密に描くのか。主演に負担をかけないスタッフの奮闘が求められる。
採点:【脚本☆ 演出☆ キャスト☆☆ 期待度☆】

  • 芳根京子