テレビ画面を注視していたかどうかが分かる視聴データを独自に取得・分析するREVISIOでは、10月にスタートした秋ドラマ初回の注目度ランキングを作成し、人気の傾向を分析した。

  • 『終幕のロンド』主演の草なぎ剛

    『終幕のロンド』主演の草なぎ剛

若い世代が注目『すべての恋が終わるとしても』

初回放送の個人全体注目度で1位を獲得したのはカンテレ・フジテレビ系『終幕のロンド―もう二度と、会えないあなたに―』。2位にはTBS系『フェイクマミー』、3位には同じくTBS系の日曜劇場『ザ・ロイヤルファミリー』がランクインした。上位3作品はいずれも女性の注目度が70%を超えており、全体のランキングにも大きく影響を与えていることがみて取れる。

視聴質の観点から注目したいのは、ABCテレビ・テレビ朝日系『すべての恋が終わるとしても』。個人全体注目度では13位だったが、コア視聴層の注目度では3位と、若い世代から注目されたことが読み取れる。若者の間で人気となった冬野夜空氏の同名小説が原作となっていることや、複数の男女が絡む王道のラブストーリーであること、さらに神尾楓珠やなにわ男子の藤原丈一郎など、若い世代から人気のある役者が出演していることが、コア視聴層の視線をくぎづけにした理由ではないだろうか。

世帯テレビオン率(※世帯視聴率と同義)を見てみると、注目度でも3位にランクインした日曜劇場『ザ・ロイヤルファミリー』が10.7%で1位となった。日曜劇場は毎クール高い世帯視聴率を獲得しており、この枠に期待している視聴者が多いことがうかがえる。

続く2位はテレビ朝日系『緊急取調室』、3位はテレビ朝日系『相棒season24』、4位はフジテレビ系『絶対零度~情報犯罪緊急捜査~』と、シリーズものの作品が上位にランクインする結果に。安定した面白さが期待できるシリーズ作品は、リアルタイム視聴で注視されやすい傾向があると考えられる。

ここからは、個人全体注目度で1~3位を獲得した作品について、視聴者からの注目を集めた理由を考察していく。

  • 秋ドラマ初回注目度ランキング

    秋ドラマ初回注目度ランキング

女性視聴者の感情移入しやすい要素が多数

『終幕のロンド―もう二度と、会えないあなたに―』は、個人全体注目度ランキングで堂々の1位(注目度72.0%)を記録。特に女性からの注目度が高く、75.5%で1位を獲得。SNSでは「涙が止まらなかった」という感想が相次ぎ、初回から大きな反響を呼んだ。

主演を務めるのは、2年半ぶりの連続ドラマ主演となる草なぎ剛。草なぎが演じるのは、シングルファーザーとして幼い息子を育てながら、遺品整理会社「Heaven’s messenger」で働く鳥飼樹だ。故人と遺族の「橋渡し」をする遺品整理人という仕事を通じて、人の“終わり”と“つながり”を静かに見つめていくヒューマンドラマとなっている。

第1話では、樹が孤独死した女性の遺品整理に赴くエピソードが中心に描かれた。故人と疎遠になっていた息子に遺品を渡す過程で、母が生前に残した想いが明らかになる展開に、多くの視聴者が胸を打たれたようだ。「遺品を片付ける」という行為が、ただの作業ではなく“故人の人生を整理し、遺族の心を癒やす仕事”として丁寧に描かれており、温かくも深いテーマ性が共感を呼んだ。

一方で物語は、中村ゆり演じる御厨真琴のストーリーも同時に進んでいく。大企業の跡取りの妻でありながら、子どもができないことを姑から責められる真琴。絵本作家としてデビューし、表向きは完璧に見える彼女の生活にも、孤独や葛藤が隠されている。そんな真琴の母が、生前整理の見積もりを「Heaven’s messenger」に依頼したことから、樹と真琴の物語が交わっていき、今後の展開を期待させる大きな伏線となった。

本作の第1話では、特に女性の視聴者が感情移入しやすい要素が多く盛り込まれていたといえる。孤独死した女性と息子の確執、子を持たない女性の苦悩など、現代社会で多くの人が抱えるテーマが描かれていた。女性視聴者が自分ごとのように感じ、画面にくぎづけになったことが、注目度の高さにつながったのではないだろうか。

また、第1話の終盤では、樹自身がかつて妻を亡くし、その死に際して深い後悔と痛みを抱えていることが明かされた。その際「Heaven’s messenger」を利用したことをきっかけに今の仕事に就いたという背景が描かれ、物語に一層の説得力と深みが加わった。草なぎの繊細な演技に、視聴者の多くが心を揺さぶられたようだ。

今後は、樹が出会うさまざまな故人の“最後のメッセージ”がどのように描かれるのか、そして真琴との関係がどのように変化していくのかに注目が集まる。家族の絆や命の尊さを改めて考えさせられる本作。今クールを代表する感動ドラマとして、ますます注目を集めそうだ。