ビデオリサーチ主催の「VR FORUM 2025」では8日、札幌テレビ、中京テレビ、読売テレビ、福岡放送の日本テレビ系列基幹4局が経営統合して今年4月に誕生した読売中京FSホールディングス(FYCS=フィックス)のセッションが行われ、これまでの手応えや今後の展開などについてトークが繰り広げられた。

  • FYCSのセッション

    FYCSのセッション

「プロ野球いれコミ情報」的企画を展開

FYCSは「新たな協力体制を構築して経営基盤を安定させ、将来にわたり良質な情報や豊かな娯楽を安定的に視聴者の皆様に提供し、地域社会に貢献するという社会的責務を果たしていく」というミッションを掲げて設立。

日テレ前社長の石澤顕FYCS社長は「4局のサービスエリアの人口規模は4,000万人超、世帯数は2,000万世帯。これは1都6県のキー局とほぼ同じです。ここからどういった価値を生み出して4局のエリア、あるいは日本列島全体にどのようなサービスが展開できるかがポイントだと思っています」と語る。

目指すのは、スケールメリットとシナジーの両立。スケールメリットについては、「4局の経営資源、ヒト・モノ・カネを一つに合わせると、大きな規模の経済の効果が出てきます」とメリットを挙げる。

シナジーについては、朝帯・夕方帯の生放送の情報番組で相互乗り入れしながら、一緒に企画を展開した事例を挙げ、石澤社長は「昔『ズームイン!!朝!』でやってた『プロ野球いれコミ情報』のようなものです」と表現。また、6月には初の4局共同制作によるtimelesz冠のバラエティ特番『未来人に残したい! ふるさとタイムレスカプセル』を放送し、「4局での放送後には、番販として系列の局に買っていただき、そういった形で系列局にも貢献していきます」とした。

スケールメリットとシナジーを生かした施策としては、海外展開へのチャレンジにも意欲。また、読売新聞グループが15%以上の2位株主となっているが、「伝統メディア同士、信頼が一番大事であるという価値観は同じです。例えば地方公共団体の公募案件に、放送と活字メディアを組み合わせ、さらにいろんなステークホルダーとスキームを組んで提案ができ、実例が出始めています。これを通じて、地域貢献をしっかり進めていきたい。また、不動産の有効な利活用については新聞社さんが先行しており、全国規模で優良物件の情報が入ってきますので、テレビと一緒にやれる案件に参画することもできると思います」と期待した。

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    FYCSの石澤顕社長

コードネームで呼び合う極秘の経営統合準備作業

後半のセッションでは、FYCSシナジー戦略局長の鈴木教弘氏(中京テレビ出身)、読売テレビビジネス局東京ビジネスセンター長兼東京ビジネス部長の三田谷卓郎氏、中京テレビメディア戦略局長の市健治氏、福岡放送執行役員技術局長の野田清茂氏、札幌テレビ取締役総務局長の古川祥司氏が登壇し、具体的な事例について紹介。経営統合の準備作業を極秘に進めるにあたり、互いをコードネームで呼び合っていたそうで、古川氏は札幌テレビのイニシャル「S」から「スキップトン」というイギリスの城の名前が与えられたという。

朝・夕帯の情報番組のスタッフは、もともと横のつながりがあったため、共同での番組制作も比較的にスムースにできたというが、バラエティはそうしたつながりがほとんどなかったため、『ふるさとタイムレスカプセル』では、制作の作業を進める中でお互いを知って理解するという流れに。そんな苦労の甲斐あって、「また次の番組に向けて、同じ制作のメンバーが集まってやっているのですが、妙な結束力が生まれています(笑)」(市氏)とのことだ。

ちなみに、『ふるさとタイムレスカプセル』はCMセールスが好調で、「4局共通枠の8枠は、すぐに完売になりました」(三田谷氏)という。

「あの局のあの人と考えよう」をスタンダードに

走り出して半年が経ち、三田谷氏は「系列各局がいろんな場面でつながってきまして、電話一本で気軽に相談できるようになりました」といい、市氏も「今まで企画も個社で考えていたことが、“あの局のあの人と考えよう”ということが今後スタンダードになってくれば、もっと面白く広がっていくのではないかと思います」と期待。

『ズームイン!!朝!』や『高校サッカー選手権』『NNNドキュメント』など、共同で取り組む番組が多いこともあり、古川氏は「もともと仲の良い系列だと思っていますが、FYCSの座組が生まれてからさらに親密さが増したような気がします。頼りになる仲間と自分たちをつないでくれるハブのような存在がFYCSだと思っています」と絆の固さを強調した。

今年の「VR FORUM 2025」は、8日・9日の2日間で53人の登壇者による全19セッションを開催。オンラインを含む4,900人が参加した。全19セッションのアーカイブ動画は、14日以降、順次公開予定となっている。