第15話「死を呼ぶ手袋」では、1779(安永8)の様子が描かれた。
今回は次期将軍・徳川家基が不審な死を遂げ、幕府内が大いに荒れる様子が描かれた。また、エレキテルが原因で闇落ちが確定しつつある平賀源内もクローズアップされ、全体的に不穏な雰囲気がただよう回となった。
注目度トップ3以外の見どころとしては、何といっても「白まゆげ」こと松平武元が挙げられる。田沼意次にとっては目の上のたんこぶといった存在で、何かにつけ意次をイジメてきた武元だから、意次を犯人と決めつけてくると誰もが予想しただろう。しかし武元は冷静に状況を分析して犯人は意次ではないと断言した。「そなたが謀ったのであるならば、早々に引き上げるなど何か手を打つはずであろう」というセリフは非常に重みがあった。武元は敵対しながらも意次の能力を認めていることが分かる。史実では武元と意次は師弟のような関係であったとも言われている。『白い巨塔』の東教授もそうだったが、石坂浩二は目をかけてきた弟子をイジメる役が絶品だ。
武元と意次の年齢は、ドラマでは親子ほどの差があるようなビジュアルとなっているが、実際は6歳差。一説では同い年とも言われている。SNSでは、「田沼意次と松平武元のシーンは胸が熱くなった。考え方は違っても、国のことを思っているのが伝わってくる」「武元さま、敵対する相手でもそれはそれとして、分別ある判断のできる方だったんだな」「意次のやり方は気に食わないけど、それでも一定の理解を示し、認めていた関係は素晴らしい」と、残念ながら今回で退場となる武元の評価が、最後の最後でストップ高となった。
そしてその武元の死に関わっていそうな一橋治済(生田斗真)にも注目が集まっている。松平定信(寺田心)の兄・田安治察(入江甚儀)が謎の死を遂げた時と同様に人形を操る姿には多くの視聴者が震撼したようだ。SNSでは、「一橋治済のお人形さんが映った瞬間にうわぁーって声出ちゃった」「治済の底知れない恐ろしさに背筋が凍りついたよ」とその暗躍ぶりに注目が集まっている。果たして家基・武元暗殺の黒幕は治済なのだろうか。
また、冒頭の瀬以(小芝風花)を失ったショックからいまだ立ち直れずにいる蔦重の姿は切なかった。瀬以との幸せな生活を夢に見るほどに引きずり、半次郎(六平直政)や留四郎(水沢林太郎)から心配されていた。
そして今回、山中聡演じる杉田玄白が初登場を果たした。玄白はドイツの医師・クルムスの解剖書のオランダ語の訳本『ターヘル・アナトミア』を前野良沢・中川淳庵とともに和訳し『解体新書』として1774(安永3)年に須原屋市兵衛の下で刊行した。平賀源内とも付き合いがあり、1765(明和2)年にはオランダ商館長やオランダ通詞らの一行が江戸へ参府した際、玄白は源内とともに、一行の滞在する長崎屋を訪れている。りつ(安達祐実)のジョブチェンジも話題となっている。
りつは女郎屋をやめ、芸者の見番になると表明した。見番は芸者を統括・管理する事務所のことだ。また、丁子屋長十郎(島英臣)は病にかかった女郎を休ませるために寮を活用することを提案していた。りつや長十郎のはからいで、吉原の職場環境が改善されると素晴らしい。
きょう20日に放送される第16話「さらば源内、見立は蓬莱」では、源内と意次が激しく口論を繰り広げる。そして蔦重は源内に戯作の執筆を依頼するが、源内の様子はどこかおかしく、奇妙な言動を繰り返す。そんな折、意次のもとに源内が人を斬ったという知らせが入る。