3番目に注目されたシーンは20時39分で、注目度76.1%。中宮・藤原定子と清少納言が語り合う最後の場面だ。

一条天皇の3人目の御子をみごもった定子は体調を崩していた。食事もままならない定子を見かねた清少納言は、めずらしいお菓子を用意し、「中宮様、こちら…」と差し出した。「これは何?」定子の問いに、清少納言は「節句の頂き物で青ざしという麦のお菓子でございます。これでしたら少しは召し上がれるのではと思いまして…」と答えた。「ありがとう少納言。そなたはいつも気が利くこと」と、定子にとって清少納言のこまやかな気遣いは、なにものにも代えがたい。定子は刀子で青ざしの敷き紙を切り取ると、そこに歌をしたため清少納言へ渡した。「みな人の 花や蝶やと いそぐ日も 我が心をば 君ぞ知りける(人がみんな花や蝶やと浮かれてるこんな日にも、私の気持ちをあなたはよくわかってくれているのね)」という、清少納言への感謝をつづった歌だった。

続けて定子は「そなただけだ。私の思いを知ってくれているのは」と打ち明けた。清少納言は敬愛する主・定子からの歌と言葉に胸を震わせながら、「長いことお仕えしておりますゆえ」と答えた。「いつまでも私のそばにいておくれ」と続ける定子に、「わたくしこそ、末永くおそばに置いていただきたいと、いつもいつも念じております」「そなたの恩に報いたいと、わたしもいつもいつも思っておる」定子と清少納言は、偽りのない気持ちを互いに相手に伝えると、2人は顔を合わせ、声をそろえて「いつもいつも」と笑い合った。

定子は、清少納言と話すうちに元気が出たようで、「少納言と話をしていたら力が出てきた。青ざし、頂いてみる」と、手に取った青ざしをちぎりながら、ゆっくりと口に運んだ。清少納言は、青ざしが定子の口に合うか不安混じりで見つめていると、定子はその美しい顔に穏やかな笑みをうかべ、「おいしい」と言った。「ああ…」清少納言は安堵し、胸をなでおろす。2人はしばらくの間、穏やかで幸福なひと時を過ごしたが、空には暗雲が立ち込めていた。

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「定子さまと清少納言が尊い」

ここは、定子と清少納言の変わらぬ美しい絆に、視聴者は心を打たれ画面を注視し続けたのではないか。

『光る君へ』での重要なキーワードのひとつに「ソウルメイト」があるが、定子と清少納言の2人の関係性は、まさにこのキーワードを体現している。また清少納言にとって定子は「光る君」であり、定子と清少納言はまひろと道長とは対をなす、作品を象徴する2人と言える。

定子と清少納言の穏やかなひと時が描かれたこのシーンに、ネット上では「定子さまと清少納言が尊い」「役者に清少納言が降りている」「定子様と清少納言の『いつもいつも』がじわじわくる」「定子様が清少納言に歌を送ったシーンで号泣した」「清少納言は定子様の魅力を1000年後に伝えるファンの鏡」といった多くのコメントがアップされた。

また、Xでは「高畑さんが何も言わずに私の楽屋にお菓子を置いて行ってくれた! これ枕草子の定子さまの逸話の引用だ! 凄い! スゴイ!」「え? 何その逸話……知らない……」という、枕草子の逸話を彷彿とさせる、ファーストサマーウイカと高畑充希の撮影の幕間のエピソードが、完全に現代の清少納言と定子さまの関係だと、注目を集めている。定子と運命の出会いを果たし、定子の苦難の日々を支え続けた清少納言。定子を失った彼女は、今後どのように物語に関わってくるのか。