2番目に注目されたのは20時27分で、注目度76.9%。左大臣・藤原道長が高松殿で突然倒れるシーンだ。

「いずれこの子も、殿のお役に立ちますように心して育てます」道長の妻妾である源明子(瀧内公美)は、生まれたばかりの長女・寛子を抱きながら、夫である道長にそう宣言した。明子としては、道長と嫡妻・源倫子の長女・彰子が入内したことに、心中おだやかではいられないのだろう。しかし、そんな明子の気持ちにはおかまいなく、「そのようなこと考えるな」と、道長は言い放った。「え?」思わぬ返答に明子は言葉を詰まらせるが、「入内して幸せなことなぞない。その子は穏やかに生きた方がよい」と、道長は静かに諭す。

明子は隣で並んで控えている長男・巌君(のちの藤原頼宗:渡邉斗翔)、次男・苔君(のちの藤原顕信:佐藤遙灯)、は君(のちの藤原能信:平山正剛)を見やり、「この子らも『蒙求』をそらんじることができるのでございますよ。さあ父上の前で言ってごらんなさい」と、日頃の勉学の成果を披露するよう、3人の息子たちに命じた。3人は「王戎簡要 裴楷清通 孔明臥龍 呂望非熊 楊震關西」と声を揃えて暗唱する。満足そうな表情の明子とは裏腹に、息子たちの表情は心なしか暗い。

「『蒙求』か…今度ゆっくり聞かせてくれ。はあ…父は疲れておるゆえ」と、道長は立ち上がった。彰子の入内から中宮立后と、政(まつりごと)に注力するあまり疲れているのもあるが、息子たちが政治の世界での立身を遂げることを目標とし、教育をほどこす妻・明子との考えのずれが、道長を一層、安らぎから遠ざけてしまっているのだった。「どうかお許しを」と、明子が謝罪すると、道長は「うむ」とうなずいた。「さあ、お下がりなさい」と明子は3人の息子たちに退席を命じると、「はい」と、素直に従いそそくさと退出した。

明子は道長を気遣い、「子供らのことに気を取られてしまい…」と詫びると、夫の身体を支えながら「横になられませ」とそっと寄り添った。道長は、「よい。少しじっとしておればおさまる」と、言った次の瞬間、どっと足元から崩れ落ちた。「殿! 殿!」突然の出来事に明子は顔を青くしながらも、床に這いつくばる夫に懸命に呼びかける。「ああ…」と、苦し気にうめき声をあげる道長は、次第に意識を失くしていった。

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柄本佑の演技にも注目が集まる

ここは、道長がもう一つの家庭である高松殿で過ごす様子と、その場で倒れてしまうショッキングな展開に、視聴者の注目が集まったと考えられる。

これまでの激務がたたり、ついに倒れた道長だが、ネット上では、「倒れる前の道長、本当に痩せている」「普通に立ってはいるけど調子がおかしい道長」「疲れすぎた表情がうますぎる」などと、柄本佑の演技にも注目が集まっている。道長の妻である源明子は、「安和の変」で失脚した左大臣・源高明の娘。申し分のない高貴な家に生まれながらも、父の失脚によって脆弱な立場であった明子にとって、現役の左大臣である道長との子らの栄達はまさに念願であったと思われ、そんな明子の期待がよく描かれたシーンだった。

明子の母である愛宕は、藤原師輔の五女で藤原兼家の妹なので、道長とはいとこ同士の関係。また今回登場した道長の次男・巌君はのちの藤原頼宗。長じて紀貫之・平兼盛と並び称されるほどの非常に優れた歌人となる。そしてなんと、将来の正室は藤原伊周の長女だ。三男・苔君はのちの藤原顕信。道長や明子に将来を期待されるほどの才を持っていたが若くして出家し、道長と明子は嘆いたという逸話がある。四男・は君はのちの藤原能信。兄と同じく若くして歌人としての才能を発揮するが、父・道長に似た勝気な性格(※『光る君へ』の道長はまったく勝気な性格ではないが)であったと伝わっており、血気にはやり様々な問題を引き起こす。道長には、倫子との間にできた二男四女に加えて、明子との間にも多くの子をもうけた。この多くの子らが、これからの道長の繁栄を盛り立てていくことになる。