主要22作がそろった2023年の冬ドラマ。今回もドラマ解説者の木村隆志が、主要新作の初回放送をウォッチし、俳優名や視聴率など「業界のしがらみを無視」したガチンコでオススメ作品を探っていく。

別記事(『星降る』『夕暮れ』『100万回』…“silent基準”に挑む大御所たち 2023年冬ドラマ22作の傾向&オススメ5作)において2023年冬ドラマの主な傾向を【[1]“silent基準”に挑む大御所たち [2]オリジナルだからこその“功罪”】の2つと分析。

おすすめドラマとして、『スタンドUPスタート』(フジ系 水曜22時)、『ブラッシュアップライフ』(日テレ系 日曜22時30分)、『ワタシってサバサバしてるから』(NHK 月~木曜22時45分)、『罠の戦争』(フジ系 月曜22時)、『大奥』(NHK 火曜22時) の5作を選んだ。

本記事では、それらを含む全作品のショートレビューと、目安の採点(3点満点)を挙げていく。


『女神の教室~リーガル青春白書~』 月曜21時~ フジ系

出演者:北川景子、山田裕貴、及川光博ほか
寸評:「ロースクール」は法律モノの安定感と若者群像劇の瑞々しさを併せ持つ好バランスな設定。純粋な主人公、対立する同僚教師、問題を抱える生徒などの定番で押す脚本が鮮度に欠け、“青春”感は消化不良か。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 期待度☆☆】

  • 北川景子


『罠の戦争』 月曜22時~ カンテレ・フジ系

出演者:草なぎ剛、井川遙、杉野遥亮ほか
寸評:前2作より明らかに進化した草なぎの演技と彼を知り尽くすスタッフの力が見事に結集。セリフに頼らず表情や佇まいで勝負できる段違いの存在感を見て、6年のブランクを作った各局に猛省を促したくなった。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆☆ キャスト☆☆☆ 期待度☆☆☆】

  • 草なぎ剛 撮影:宮田浩史


『ワタシってサバサバしてるから』 月~木曜22時45分~ NHK

出演者:丸山礼、トリンドル玲奈、犬飼貴丈ほか
寸評:自身のSNS以上に突き抜けた丸山の演技は、民放各局ができそうでできないNHKの手柄。アドリブを生かした演出は福田雄一監督を彷彿とさせ、単に笑いを誘われる。「夜ドラ」の新たな可能性を示した。
採点:【脚本☆ 演出☆☆☆ キャスト☆☆☆ 期待度☆☆☆】

  • 丸山礼


『ダ・カーポしませんか?』 月曜23時6分~ テレ東系

出演者:武田鉄矢、伊野尾慧、観月ありさほか
寸評:もはや“秋元康枠”となった設定勝負のエンタメ枠に「金と命を懸けた運命ゲーム」というテーマがフィット。『カイジ』『イカゲーム』らと比べられるだけに、曲者がそろうキャストの熱演を引き出したい。
採点:【脚本☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 期待度☆】

  • 武田鉄矢


『星降る夜に』 火曜21時~ テレ朝系

出演者:吉高由里子、北村匠海、ディーン・フジオカほか
寸評:『silent』直後で設定かぶりは痛恨だったが、そこは大御所の大石静。聴覚障害や手話を特別視せず、主人公たちの背景を描いて恋愛に留まらない人間ドラマに昇華させた。ネット上の反響がもっとほしい。
採点:【脚本☆☆ 演出☆ キャスト☆☆ 期待度☆☆】

  • 吉高由里子


『夕暮れに、手をつなぐ』 火曜22時~ TBS系

出演者:広瀬すず、永瀬廉、夏木マリほか
寸評:極端な田舎娘や同居恋愛の古典的設定も、コンポーザーや仮面アーティストのトレンド添付も、表面的で深掘りなし。北川悦吏子を制作側がコントロールできていない感が濃い。
採点:【脚本☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 期待度☆】

  • 広瀬すず


『大奥』 火曜22時~ NHK

出演者:冨永愛、中島裕翔、山本耕史ほか
寸評:原作・よしながふみ×脚本・森下佳子の鉄板コンビ。予算も時間も余裕のあるNHKが初めて大政奉還まで描くだけに「反則」レベルか。ジェンダー、権力構図、疫病などを現在に重ねる楽しみもある。
採点:【脚本☆☆☆ 演出☆☆ キャスト☆☆☆ 期待度☆☆☆】

  • 冨永愛