――八木さんは也英という役について満島さんに相談したとおっしゃっていましたが、木戸さんは晴道について佐藤さんに相談することはありましたか?

木戸:僕も晴道を演じる上で悩んでしまったときは、健さんにもひかるさんにも相談しました。北海道で僕たちのシーンを撮ったあとに、健さんたちのシーンがあって、僕たちは先に帰京するという日があったのですが、スタッフさんにお願いして2人のシーンを撮られる時間も残って相談させてもらったり、健さんがお世話になっている演技の先生をご紹介してもらったり、いろいろと助けてくださいました。一番印象的だったのは、晴道を演じる上で「自分も今悩んでいる」とおっしゃっていて、健さんも悩まれているんだって、それがすごく僕の中で安心したというか、同じ役を演じさせてもらっているんだなと実感しました。

――佐藤さんからはどういったアドバイスをもらったのでしょうか。

木戸:「素の大聖が持っているものを見て監督もスタッフさんも晴道としてキャスティングしたんだから、とにかく自信を持ってやればいい」と。僕は最初の頃、晴道と通ずるものがあるとはいえ、かけ離れた存在のように感じていて、晴道にならなきゃって意識しすぎていたのですが、大聖が持っているものそのものでいいんだよと。それは同じくひかりさんもおっしゃってくださいました。今後違う作品においても、自分とかけ離れている遠いものに近寄ろうとするのではなく、キャスティングされたということは自分に通ずるものがあるのだと自信に持って演じていこうと思いました。とても自信になりました。

――八木さんは佐藤さんと接する機会はありましたか?

八木:佐藤さんと関わる時間はそんなに多くはなかったですが、天狗山に登ったときに佐藤さんもいらっしゃいました。そのとき私は四つ葉のクローバーを見つけるのが得意になっていて、いろんな人に渡していたのですが、天狗山でも四つ葉のクローバーを見つけて、佐藤さんにも「もしよかったら……」って渡させていただきました。きっかけは、スタイリストの方が四つ葉のクローバーを見つけて「台本に挟んでおきなよ」とくださって、それがうれしくて、その方に返すために探していたらどんどん見つけられるようになりました。

――佐藤さんに喜んでもらえましたか?

八木:喜んでいただけていたらいいなと(笑)。大聖くんにも渡させていただきました。

――改めてこの作品はお二人にとってどんな経験になったかお聞かせください。

八木:一言で表現するのは難しいですが、役との向き合い方を教えていただいた作品になりました。完全に自分とは別人としてお芝居するのか、それとも自分の中から感情を引き出して演じるのか、何もわかってなかったのですが、この作品をやっていく中で、私は自分の感情を大切にして、自分事として捉えないとダメなのだと気づきました。也英にすり寄っていこうと思って、私はエビが苦手でしたが、也英はエビが好物なので食べてみようと思って食べたら、だんだんおいしく感じてきて、そうやって也英に近づけた気がしています。

木戸:長い期間撮影をして、今までの現場にはない挫折を味わったなと感じていて、それほどまでに一人の人間を芝居の中で生きるということは大変なことなのだと実感しました。ここまで現場で悩んだことがなかったので、本当にいい経験をさせていただきました。それくらい身を削って一人の人間を演じるという責任が役者には必要なんだなと、そう簡単にできるものではないということも知ることができました。

――満島さんと佐藤さんからも大切なことをたくさん教わったということですが、お二人はどんな存在になりましたか?

八木:ワークショップを開いていただいたりお話を聞いていただいたり、すごく導いてくださった方だと感じています。作品としても、満島さんと佐藤さんが私たちを持ち上げてくださっているなと、完成したものを見て感じました。

木戸:健さんと同じ人物を演じ、一緒に彼の人生を演じた大先輩ということが、僕の中でとても特別なものになりました。並木晴道という人物を演じる上で一緒に悩んだという……「一緒に」と同じ目線でおこがましいですが、それはすごく僕の中でうれしかったですし特別でした。もちろんまた共演したいです。ひかりさんもそうですけど、一緒に共演して、そのときにこの作品についてお話が出来たらたらうれしいなと思います。

八木:私もぜひぜひ、また共演させていただきたいです。

■八木莉可子(やぎ・りかこ)
2001年7月7日生まれ、滋賀県生まれ。2015年11月に開催された「#THE NEXT ~ASIA CROSS MODEL AUDITION2015~」でグランプリを受賞しデビュー。2016年、大塚製薬「ポカリスエット」イメージガールに抜擢。同年より、雑誌『Seventeen』の専属モデルとして活躍し、2021年3月に卒業。また、ドラマ『チア☆ダン』(2018/TBS)、『鎌倉殿の13人』(2022/NHK)、映画『HOMESTAY(ホームステイ)』(2022/Amazon Prime Video)、『おそ松さん』などに出演。
■木戸大聖(きど・たいせい)
1996年12月10日生まれ、福岡県出身。2017年7月にトライストーン・エンタテイメントに所属し、芸能活動を開始。2018年4月から2021年3月までNHK BSプレミアム『おとうさんといっしょ』にレギュラー出演。俳優としてはドラマ『Memories~看護師たちの物語~』(2020/BS日テレ)、『家族の写真』(2022/東海テレビ)、映画『サヨナラまでの30分』(2020)、『のぼる小寺さん』(2020)、『大怪獣のあとしまつ』(2022)などに出演。『メイヘムガールズ』が公開中。