取引先から季節の挨拶がきて、どのように返信したらよいかわからなかった経験はありませんか。社会人になって誰しもが通る「季節の挨拶」メールですが、その季節にあった正しい表現ができているのでしょうか。

本記事では実際に使える事例を踏まえて、構成方法、返信の仕方をご紹介します。また、そのまま当てはめて使えるような具体例も紹介しますので、ビジネスマンの方も適宜活用してみてください。

  • 季節の挨拶はどのような時に使うもの?,A@季節の挨拶 意味

    季節の挨拶はどのようなときに使う?

季節の挨拶(時候の挨拶)とは?

季節の挨拶とは、春夏秋冬をそれぞれの季節を大事にする日本の文化からくる季節ごとの挨拶を指します。特に文書においては、誰かに手紙を送る際に内容を記載する前にくるものを指し、季節感のある文言を入れることが、マナーとされています。

季節の挨拶に厳密なルールは決して多くありませんが、目上の人には、かしこまった定型句を、友人や親しい先輩には少し砕けた表現を使うのが一般的です。

季節の挨拶の種類

季節の挨拶には漢語調と口語調の2種類があります。漢語調は、「早春の候」「酷暑の候」といった「~の候」と付く、かしこまった表現の言葉です。主にビジネスシーンで使います。

一方、口語調は「春霞のただよう季節となりましたが」「いよいよ夏本番となりました」のような話し言葉で表現したもの。主にプライベートで使いますが、ビジネスシーンでも硬い表現を避けたい場合などに使うことができます。

ビジネスシーンで使うときは相手との関係性などを考慮し、適した方を使いましょう。

季節の挨拶の書き方

季節の挨拶メールを書くときは、シーンごとに気を付けるべきポイントが異なります。ここでは、ビジネスとビジネス以外それぞれの文章の流れと注意点を解説します。

ビジネスで使用する場合(フォーマルな文書)での用途

ビジネスにおいて利用する場合に注意する点として、あまり古典的な表現ばかりを使うと他人行儀でよそよそしい印象を与えてしまうので、定型文ばかりではなく少しだけ自分の感性を含んだ文書にしましょう。

文章の流れとしては、「拝啓」→「時候・季節の挨拶」→「主文」→「結びの言葉」→「敬具」となります。

ビジネス以外(カジュアルな文書)での利用

ビジネス以外の場合では、「拝啓」から書き始めると文章が硬くなりすぎてしまう傾向にあるので、「時候・季節の挨拶」→「主文」→「結びの言葉」とするとよいでしょう。

また、お見舞い、お詫びの手紙など、相手への最大限の気遣いが必要なときは、場合によっては季節の挨拶を省くケースもあります。

ビジネスシーンで利用できる季節の挨拶と結びの言葉

では実際にビジネスシーンで利用できる季節の挨拶と結びの言葉を、季節ごとにご紹介します。ビジネス向きの硬い表現である漢語調と、ビジネスでも硬い表現を避けたいときに使える口語調どちらも紹介するので、相手にあわせて使い分けてみてください。

また、季節の挨拶文について馴染みがあまりない方は、時節や時季を表す候のあとに以下のように言葉をつなげる形を覚えておくとよいでしょう。

○○の候、
・○○様におかれましてはますますご清福にお過ごしのこととお喜び申し上げます。
・○○社におかれましてはご隆昌のこととお慶び申し上げます。
・貴社におかれましてはますますご清栄のこととお慶び申し上げます。

  • 季節の挨拶を使った例文とは?,A@季節の挨拶 例文

    季節の挨拶を使った例文とは?

春(3月・4月・5月)に使える季節の挨拶と結びの言葉

3月の挨拶と結びの言葉

3月はまだ寒い時期ではありますが、暦の上では春として扱います。そこで利用できるワードは、「春雪」「早春」「春眠暁」「春暖」「沈丁花」「浅春」「桃の節句」など春の始まりを表す言葉となります。表現としては雪が溶けで次第に春に近づいていく様子をイメージするとよいでしょう。

書き出しとしては以下のようなものがあります。

・春暖の候、○○様におかれましてはますますご清福にお過ごしのこととお喜び申し上げます。
・早春の候、貴社におかれましてはご隆昌のこととお慶び申し上げます。
・三寒四温の言葉どおり、あたたかさと寒さが交差する日々が続きますが、〇〇様におかれましてはお元気でご活躍のこととお喜び申し上げます。
・春霞のただよう季節となりましたが、いかがお過ごしていらっしゃいますか?

結びの言葉には以下のようなものがあります。

・春暖定まらぬ時期が続きますが、くれぐれもご自愛のほどお祈りいたします。
・季節の変わり目ですので、くれぐれも体調にはご留意ください。

もっと詳しく : 「春風の候」「花の息吹が」 3月に使える季節の挨拶【文例紹介】

4月の挨拶と結びの言葉

4月は入学や就職祝いなど新生活の始まりが多い季節となります。そんな時期だからこそ相手を励ますような文言を入れると良いでしょう。「清和」「桜花爛漫」「春風駘蕩」「花冷え」「陽春」「桜花」「陽炎」などの言葉を利用してみてください。

書き出しとしては以下のようなものがあります。

・桜花爛漫の候、○○様におかれましてはますますご清福にお過ごしのこととお喜び申し上げます。
・麗春の候、貴社におかれましてはご隆昌のこととお慶び申し上げます。
・春爛漫の折、皆様はいかがお過ごしでしょうか。
・初夏の香りを運んでく季節となりましたが、いかがお過ごしでしょうか。

結びの言葉には以下のようなものがあります。

・陽春のみぎり、皆様の更なるご活躍をお祈り申し上げます。
・花冷えの頃ですが、くれぐれもお身体にはご留意ください。

もっと詳しく : 「桜花の候」「うららかな」 4月に使える季節の挨拶【文例紹介】

5月の挨拶と結びの言葉

5月は、春が終わりを迎えつつあり、夏の始まりを感じさせる季節となります。新緑の美しい表現で、「新緑」「惜春」「暮春」「立夏」「薫風」「万緑」などを使ってみましょう。

書き出しとしては以下のようなものがあります。

・心地よい風が頬を撫でる新緑の候、いかがお過ごしでしょうか。
・若葉の候、貴社ますますご発展のことと拝察いたしております。
・鮮やかな万緑の候、皆様におかれましては一段とご清栄のご様子、心よりお喜び申し上げます。
・葉桜の候、皆様におかれましてはますますご清祥のこととお喜び申し上げます。
・新緑の候、皆様にはいよいよご清祥のことと存じます。
・薫風の候、貴殿ますますご健勝のこととお慶び申し上げます。

結びの言葉には以下のようなものがあります。

・向暑の折、皆様のご健勝をお祈り申し上げます。
・梅雨入りも間近となりましたが、くれぐれも健康にはご留意ください。

もっと詳しく : 「若葉の候」「風薫る」 5月に使える季節の挨拶【文例紹介】

夏(6月・7月・8月)に使える季節の挨拶と結びの言葉

6月の挨拶と結びの言葉

6月になると暦の上では夏になります。梅雨の季節でもあるので、雨に関する季語を入れると季節感が出るでしょう。例えば、「梅雨」「梅雨寒」「梅雨冷」「初夏」「黄梅」「首夏」などがあります。

書き出しとしては以下のようなものがあります。

・初夏の候、~。
・夏至の候、~。
・向暑の候、~。
・梅雨の候、~。
・紫陽花が色づき始めた頃、~。

結びの言葉には以下のようなものがあります。

・初夏のみぎり、皆様の更なるご発展をお祈り申し上げます。
・雨ばかりの日々ですが、体調を崩されませんよう、くれぐれもご自愛ください。

もっと詳しく : 「向暑の候」「雨上がりの」 6月に使える季節の挨拶【文例紹介】

7月の挨拶と結びの言葉

次に7月ですが、ここには「盛夏」「大暑」「猛暑」「酷暑」など暑い夏を表現する季語を使うとよいでしょう。また涼しい夏の場合は、「冷夏」とするのがよいとされています。

書き出しとしては以下のようなものがあります。

・酷暑の候、~。
・早星の候、~。
・小暑が過ぎて、~。
・いよいよ夏本番となりました、~。
・梅雨があけ、暑さが日ごとに加わる季節となりました、~。
・空に一片の曇りのない季節となりました、~。
・暑中お見舞い申し上げます、~。

結びの言葉には以下のようなものがあります。

・暑さの折、皆様の更なるご活躍をお祈り申し上げます。
・暑い日々が続きますが、体調にはくれぐれもご留意ください。

もっと詳しく : 「大暑の候」「長雨の続く」 7月に使える季節の挨拶【文例紹介】

8月の挨拶と結びの言葉

暑い夏にも終わりが見え始める8月は、「晩夏」「立秋」「残暑」などの季語を使うとよいでしょう。そのほかにも、「熱帯夜」「夏休み」「台風」「納涼」「納涼花火大会」などの言葉も季節感が出ます。

書き出しとしては以下のようなものがあります。

・真夏の日差しの残るなか、~。
・秋の到来が待ち遠しい今日この頃、~。
・残暑お見舞い申し上げます、~。
・残暑お伺い申し上げます、~。
・晩夏の候、~。
・立秋の候、~。

結びの言葉には以下のようなものがあります。

・残暑厳しき折、皆様の更なるご発展をお祈り申し上げます。
・厳しい暑さが続きますが、夏バテなどなさいませんよう、くれぐれもご自愛ください。

もっと詳しく : 「残暑の候」「立秋の候」 8月に使える季節の挨拶【文例紹介】

秋(9月・10月・11月)に使える季節の挨拶と結びの言葉

9月の挨拶と結びの言葉

季節は秋になり、残暑から秋冷の時期となります。9月に使える言葉としては、「萩の花」「残暑」「秋刀魚」「初秋」「新秋」「秋冷」などがあります。

書き出しとしては以下のようなものがあります。

・処暑の候、~。
・白露の候、~。
・秋晴の候、~。
・秋晴の候、~。
・鈴虫の鳴き声が美しく鳴く頃、~。
・さわやかな秋晴れの季節となりました、~。
・秋の訪れが感じられる季節となりました、~。

結びの言葉には以下のようなものがあります。

・豊穣の秋、皆様の更なるご発展をお祈り申し上げます。
・朝晩の冷え込みが増してくるこの季節、くれぐれもご自愛ください。

もっと詳しく : 「初秋の候」「虫の音に」 9月に使える季節の挨拶【文例紹介】

10月の挨拶と結びの言葉

秋の深まる10月ですが、秋と涼しさを表現する季語がよいとされます。例えば、「秋涼」「秋麗」「初霜」「紅葉」「錦秋」「金木犀」などを使ってみましょう。

書き出しとしては以下のようなものがあります。

・秋たけなわの頃、~。
・秋も深まって参りました、~。
・味覚の秋、~。
・紅葉の候、~。
・清秋の候、~。

結びの言葉には以下のようなものがあります。

・実りの秋、貴社の更なるご繁栄をお祈り申し上げます。
・寒露の折、くれぐれも健康にはご留意ください。

もっと詳しく : 「紅葉の候」 「金木犀の香りが」 10月に使える季節の挨拶【文例紹介】

11月の挨拶と結びの言葉

秋の終わりを示す11月は、「向寒」「霜寒」「深秋」「晩秋」「冬将軍」「小春日和」などが挙げられます。

書き出しとしては以下のようなものがあります。

・立冬の候、~。
・深秋の候、~。
・冬が駆け足で近づき始めた今日この頃、~。
・落ち葉が風舞う季節となりました、~。
・日に日に寒さが加わる季節となりました、~。

結びの言葉には以下のようなものがあります。

・小春日和が続くこの頃、益々のご活躍をお祈り申し上げます。
・年末が近づき、忙しくなる時期かと思いますが、体調に気を付けてお過ごしください。

もっと詳しく : 「霜月の候」「立冬を迎え」 11月に使える季節の挨拶【文例紹介】

冬(12月・1月・2月)に使える季節の挨拶と結びの言葉

12月の挨拶と結びの言葉

底冷えする冬の季節の挨拶です。12月は「クリスマス」「ポインセチア」「初雪」「初冬」「寒冷」「師走」「荒涼」などイベントを含んだ季語などが挙げられます。

書き出しとしては以下のようなものがあります。

・寒冷の候、~。
・初冬の候、~。
・師走の候、~。
・歳末の候、~。
・カレンダーも残すところあと1枚となりましたが、~。
・年の瀬も迫って参りました、~。
・今年もあとわずかとなりましたが、~。

結びの言葉には以下のようなものがあります。

・ 師走の候、ご多忙かと存じますが、皆様の更なるご活躍をお祈り申し上げます。
・年末で慌ただしい日々が続くと思いますが、お体を大切にお過ごしください。

もっと詳しく : 「寒冷の候」「師走を迎え」 12月に使える季節の挨拶【文例紹介】

1月の挨拶と結びの言葉

そして年が超えた1月では、新年の挨拶、まだまだ続く冬、かすかに感じる春を表現するような季語を使うとよいでしょう。例えば、「厳冬」「寒風」「酷寒」「寒冷」「寒気」「初春」「新春」などがあります。

書き出しとしては以下のようなものがあります。

・新春の候、~。
・寒冷の候、~。
・厳冬の候、~。
・三寒四温の候、~。
・底冷えする寒さが続きますが、~。
・初春のみぎり、新春のお慶びを申し上げます。~

結びの言葉には以下のようなものがあります。

・厳寒の折、風邪など召されませぬようご自愛ください。
・本年も変わらぬお付き合いの程、よろしくお願い申し上げます。

もっと詳しく : 「大寒の候」「鏡開きも済んで」 1月に使える季節の挨拶【文例紹介】

2月の挨拶と結びの言葉

暦の上では早い春の始まる季節ですが、実際には1年の中で一番寒い時期である2月は「余寒」「春寒」「残寒」「残雪」「などの季語を、そして、2月下旬になれば、「立春」などの春を感じさせる言葉を使ってみましょう。

書き出しとしては以下のようなものがあります。

・立春の候、~。
・梅花の候、~。
・向春の候、~。
・春とは名ばかりの風の寒さですが、~。
・余寒の厳しき折、~。

結びの言葉には以下のようなものがあります。

・春寒の折、皆様の一層のご健康をお祈りいたします。
・まだまだ厳しい寒さが続きますが、どうぞお風邪などひかれませんよう。

もっと詳しく : 「向春の候」「梅の香りが」 2月に使える季節の挨拶【文例紹介】

コロナ禍に使える季節の挨拶

2020年初頭より世界中を騒がせている新型コロナウイルス。コロナ禍についてわざわざ触れる必要はありませんが、文頭や結びの言葉で軽く触れるのもよいでしょう。

 ○○(季節に合わせる)の候、皆様におかれましてはコロナ禍においてもお元気でご活躍のこととお喜び申し上げます。
 さて、~~。(主文)
 先の見通しがつき辛い日が続きますが、○○(寒さ厳しい/寒さの残る/暑さ厳しい/暑さ残る等、季節に合わせる)時節柄、何卒ご自愛のほどお願い申し上げます。

基本的には、先述の季節の挨拶や結びの挨拶をベースにして作成するのがよいでしょう。また、カジュアルな手紙・メールの場合にはもう少しかみ砕き、より自分らしい言葉で先方への心配や自身の状況説明などを行うようにしましょう。

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定型的な季節の挨拶もいいですが、時には自分らしく季節を彩る挨拶を書いてみるのもいいですね。今回ご紹介した表現をぜひともビジネス文書にご活用ください。