普段の会話などではあまり使うことはありませんが、ビジネス文書やお礼の手紙など、かしこまった文書を出す場合においては季節の挨拶が重要です。

厳しい寒さが続く2月ですが、暦の上では2月初旬の節分後に立春を迎え、春が始まります。

季節の挨拶は同じ2月の中でも、時期や挨拶を送る相手によって使用する文言が異なります。

本記事では2月にふさわしい時候の挨拶をピックアップ。文書の冒頭で使える時候の挨拶や例文、結びで使える挨拶を、ビジネス/カジュアルシーンごとに紹介。2月の季語も見ていきましょう。

  • 2月の季節の挨拶と一緒に覚えておきたいルール

    季節の挨拶を用いて、この時期ならではの雰囲気を伝えよう

季節の挨拶文(時候の挨拶文)の基本の書き方・構成

「季節の挨拶」とは「時候の挨拶」ともいい、四季折々の季節感を重んじる日本において、手紙やはがき、書面などの冒頭に用いる挨拶文のことを指すとされます。また、結びの文にも季節感を取り入れるといいでしょう。

以前と比較すると手紙を書く機会は少なくなりましたが、改まったメールでも用いることがあります。

[ビジネス]季節の挨拶文の基本の書き方

手紙やメールにもさまざまな表現があります。同じ時期に書く手紙であっても、ビジネスシーンとプライベートでは季節の挨拶の表現も使い分けが必要です。

ビジネスシーンや目上の人への手紙では、一般的に「◯◯の候」などの漢語調の挨拶が使われます。少し硬い表現にあたりますが丁寧な印象となるため、気を遣わなければならない相手やかしこまった内容の手紙やメールで使うようにしましょう。

なお主にビジネスシーンでは、「拝啓」など文章の最初の書き出しである「頭語」の後に季節の挨拶を書きます。そして頭語を使う場合、文末には「敬具」などの「結語」で文章を結ぶのが原則です。

  1. 頭語(拝啓など)
  2. 時候・季節の挨拶
  3. 主文
  4. 結びの言葉
  5. 結語(敬具など)

[カジュアル]季節の挨拶文の基本の書き方

親しい友人などへの手紙で漢語調の表現を使うと、堅苦しい印象を与えてしまいます。カジュアルなシーンでは口語調が使われるのが一般的です。

口語調の表現はとてもわかりやすく、親しみを感じさせてくれるので、家族や親しい友人などへの手紙にぴったりです。

また、頭語や結語も同様に堅苦しいため省略して、季節の挨拶から書き出すこともできます。

  1. 時候(季節)の挨拶
  2. 主文
  3. 結びの言葉

ビジネス用、カジュアル用の季節の挨拶の例は、後ほどそれぞれ紹介します。

2月の季語一覧

季節・時候の挨拶を送る際は、本文にその月を表す季語を入れるといいでしょう。

2月における季節の風物詩、季節の動植物などが季語に含まれます。2月に行われる「豆まき」「バレンタインデー」「受験」なども季語に含まれますよ。

季語を使うと、2月の雰囲気が感じられますね。

植物 梅(白梅、紅梅)・ラッパ仙水・寒椿・雪割草・蕗の薹(ふきのとう)・ヒヤシンス・春菊・かぶ・せり・三ッ葉
生き物 鶯(うぐいす)・雲雀(ひばり)・わかさぎ
風物詩 豆まき・梅見・針供養・バレンタインデー・受験シーズン・野焼き・麦踏み
  • 2月の季節の挨拶と例文(漢語調・ビジネス基本編)

    2月を連想させる言葉はたくさんあります

[ビジネス]2月の季節の挨拶(書き出し) ・漢語調(改まった文書や目上の人用)

ここからは、実際にビジネスシーンで使える例文を交えながら、2月にふさわしい季節の挨拶をご紹介します。

前述のように、ビジネスメールやかしこまった文書では、漢語調を使うことが多いです。

漢語調の季節の挨拶は、上旬・中旬・下旬など、月のいつの時期かによっても使う言葉が異なります。2月のそれぞれの時期別に、季節の挨拶をご紹介しましょう。

2月全般(上旬・中旬・下旬) ・1日~月末

向春の候(こうしゅんのこう)を用いた例文

2月の上旬から2月下旬まで、ほぼ全般にわたって使えるのが「向春の候」です。

その字の通り、春が訪れる頃、春に近づいている時期を指した言葉です。どのような年代の人にも伝わりやすく、春に向かう様子がイメージしやすい挨拶と言えるでしょう。

【例文】
拝啓 向春の候、貴社益々ご隆昌のこととお慶び申し上げます

梅花の候(ばいかのこう)・梅鴬の候(ばいおうのこう)を用いた例文

「梅花の候」は梅の花が咲く頃という意味の言葉です。また「梅鴬の候」とすると、梅が咲き鶯(うぐいす)の鳴く頃を表す、さらに情緒あふれる表現となります。

これらも2月全般に使用できます。

【例文】
拝啓 梅花の候、貴社にはいよいよご隆盛の趣、慶賀の至りに存じます

2月上旬~中旬

立春の候(りっしゅんのこう)を用いた例文

「立春」は、暦の上で春が始まる日です。「立春の候」は、二十四節気の大寒が終わってから雨水の前日までの、2月4日頃から2月18日頃まで使うことができます。

ちなみに立春が始まる日の前日が、節分です。

【例文】
拝啓 立春の候、貴社におかれましては益々ご清栄のことと心よりお喜び申し上げます

余寒の候(よかんのこう)を用いた例文

「余寒の候」は、立春(2月4日頃)を過ぎた後、まだ肌寒い時期に使用します。

【例文】
拝啓 余寒の候、貴社におかれましては、益々ご発展の段、大慶に存じ上げます

春寒の候(しゅんかんのこう)を用いた例文

「春寒の候」は、言葉の通り「春なのに寒い」、つまり立春(2月4日頃)を過ぎた後、寒さがぶり返す時期に使用します。

【例文】
拝啓 春寒の候、貴社におかれましては益々ご清栄のことと心よりお喜び申し上げます

2月下旬~3月上旬

雨水の候(うすいのこう)を用いた例文

「雨水」とは二十四節気のうち、2月19日頃から3月4日頃にあたります。

雪ではなく雨が降り始め、また田畑の雪解けが始まる頃を表しています。

【例文】
拝啓 雨水の候、平素は格別のご高配を賜り厚く御礼申し上げます

三寒四温の候(さんかんしおんのこう)を用いた例文

「三寒四温」とはもともと、冬に寒い日が3日ほど続くと、その後4日ほどは暖かい日が続き、これを繰り返すことを表す言葉です。主に中国北東部や朝鮮半島などで見られる現象です。

冬の季語にもなっているものの実際に日本では冬にそのような事象はあまり無く、2月の終わりから3月初め頃の春先に、徐々に暖かくなりつつも、寒暖の差が見られるという時に使われることが多くなりました。

【例文】
拝啓 三寒四温の候、○○様におかれましては、益々ご健勝のことと存じます

[ビジネス]2月にふさわしい結びの言葉

漢語調の場合、結びの文に季節的な要素を入れなくても問題はありませんが、2月にあった結び文を入れることで、より季節感のある文書となります。

2月にふさわしい結びの例をご紹介しましょう。

季節に関する結び

・向春のみぎり、貴社のさらなるご繁栄をお祈り申し上げます
・春の訪れを感じる季節、○○様の益々のご活躍をお祈りいたしております

健康に関する結び

・暦の上では春と言いますが、寒い日が続きます。くれぐれもお体にはご留意くださいませ
・余寒厳しき折、皆様のご健康をお祈りしております

  • 2月の季節の挨拶と例文(口語調・ビジネス口語・プライベート編)

    自分なりの発想で2月を表現することも大切です

[カジュアル]2月の季節の挨拶 ・口語調(やわらかい表現、学校のおたよりや親しい人用)

次に、前述の通り親しい人などカジュアルなシーンに用いる口語調の季節の挨拶について、時期ごとに見ていきましょう。

漢語調に比べて自由度が高いので、送る相手や状況に合わせて内容をアレンジしてもいいでしょう。

2月全般

・節分が終わり、寒さの中にも少しずつ春の気配を感じる頃となりましたが、いかがお過ごしでしょうか
・暦の上では春とは言うものの、まだ寒い日が続く今日この頃、お変わりございませんでしょうか
・立春を迎えたとはいえ、まだまだ寒い日が続いておりますが、いかがお過ごしでしょうか
・梅のつぼみもふくらみ始め、春の兆しを感じる季節となりました
・時折感じられる暖かい日差しに、春がすぐそこに来ているのが感じられます
・春一番が吹き、ようやく春の訪れを感じられるようになりました
・早くも鼻がムズムズし始め、花粉症には試練の季節がやってまいりましたが、いかがお過ごしでしょうか

なお春一番とは、立春(2月4日頃)から春分(3月21日頃)までの期間に、初めて吹く強く暖かい南風のことです。実際にいつ吹いたどの風を春一番とするかは、気象庁が判断しますので、ニュースに合わせて使用しましょう。

2月上旬~中旬

・立春を迎え、わが家では雛人形を出しました。○○様はお元気でお過ごしでしょうか

雛人形は一般的に、節分の翌日(立春/2月4日頃)から2月中旬頃までに飾るといい、とされています。

2月下旬~3月上旬

・雪が雨へと変わり、ようやく春を感じられる頃となりましたが、いかがお過ごしですか

前述のように、「雨水」とは二十四節気のうち、2月19日頃から3月4日頃にあたり、雪ではなく雨が降り始め、また田畑の雪解けが始まる頃を表しています。

「雨水の候」とするのではなく、このように口語調でやわらかく説明することもできます。

  • シーンに合った2月の時候の挨拶で、粋な書き出しに

    ビジネスとプライベートで季節の挨拶をうまく使い分けましょう

[カジュアル]2月にふさわしい結びの言葉

口語調の文書に合う、2月にふさわしい結びの言葉をご紹介しましょう。

季節に関する結び

・少しずつ暖かくなってまいりましたので、わが家にもぜひまた遊びに来てくださいね
・幸多き春の門出となりますよう、さらなるご活躍を楽しみにしております
・そちらはまだ連日雪と伺いましたので、くれぐれも事故などにはお気を付けくださいませ

健康に関する結び

・時節柄、体調を崩されませぬよう、ご自愛くださいませ
・まだまだ寒い日が続きますので、お互い風邪など引かぬように気を付けましょう

[番外編]2月に送る、コロナ禍における手紙・メールの文例

ようやく落ち着きを見せてきた、2020年頃より世界中で蔓延した新型コロナウイルス感染症。

2023年5月には感染症法上の位置づけの「5類」に移行したこともあり、コロナ禍についてわざわざ言及する必要はないでしょう。

しかし相手の体を気遣う言葉として、文頭や結びの言葉で軽く触れる程度ならばいいかもしれません。

【例文】
拝啓 春寒の候、貴社におかれましては益々ご清栄のことと、お慶び申し上げます。
さて…(主文)
暦の上では春と言いますが、まだまだ寒い日が続きます。風邪やコロナなどを召されませんように、皆さまのご健康と、益々のご繁栄を心よりお祈り申し上げます。 敬具

2月らしい季節の言葉を入れたはがきやお礼状などを送りましょう

寒さの中にも少しずつ春の気配を感じる2月。この時期には、春への喜びと期待や、健康を気遣う言葉を入れるといいいでしょう。

また2月は住む地域によって、寒暖差の激しい時期でもあります。相手の状況に合わせた言葉を選び、気持ちのこもった手紙やメールを送りましょう。