普段の会話などではあまり使うことはありませんが、ビジネス文書やお礼の手紙など、かしこまった文書を出す場合においては季節の挨拶が重要です。

すっかり夏が終わり、秋空が美しい10月。「神無月(かんなづき)」と呼ばれるこの季節、暦の上では毎年10月8日頃に「寒露(かんろ)」を迎え、10月23日頃に「霜降(そうこう)」を迎えます。

季節の挨拶は、同じ10月の中でも、時期や挨拶を送る相手によって使用する文言が異なります。

本記事では10月にふさわしい時候の挨拶をピックアップ。文書の冒頭で使える時候の挨拶や例文、結びで使える挨拶を、ビジネス/カジュアルシーンごとに紹介。10月の季語も見ていきましょう。

  • 10月に使える季節の挨拶を紹介

    10月の季節の挨拶の書き方を紹介

季節の挨拶文(時候の挨拶文)の基本の書き方・構成

「季節の挨拶」とは「時候の挨拶」ともいい、四季折々の季節感を重んじる日本において、手紙やはがき、書面などの冒頭に用いる挨拶文のことを指すとされます。また、結びの文にも季節感を取り入れるといいでしょう。

以前と比較すると手紙を書く機会は少なくなりましたが、改まったメールでも用いることがあります。

[ビジネス]季節の挨拶文の基本の書き方

手紙やメールにもさまざまな表現があります。同じ時期に書く手紙であっても、ビジネスシーンとプライベートでは季節の挨拶の表現も使い分けが必要です。

ビジネスシーンや目上の人への手紙では、一般的に「◯◯の候」などの漢語調の挨拶が使われます。少し硬い表現にあたりますが丁寧な印象となるため、気を遣わなければならない相手やかしこまった内容の手紙やメールで使うようにしましょう。

なお主にビジネスシーンでは、「拝啓」など文章の最初の書き出しである「頭語」の後に季節の挨拶を書きます。そして頭語を使う場合、文末には「敬具」などの「結語」で文章を結ぶのが原則です。

  1. 頭語(拝啓など)
  2. 時候・季節の挨拶
  3. 主文
  4. 結びの言葉
  5. 結語(敬具など)

[カジュアル]季節の挨拶文の基本の書き方

親しい友人などへの手紙で漢語調の表現を使うと、堅苦しい印象を与えてしまいます。カジュアルなシーンでは口語調が使われるのが一般的です。

口語調の表現はとてもわかりやすく、親しみを感じさせてくれるので、家族や親しい友人などへの手紙にぴったりです。

また、頭語や結語も同様に堅苦しいため省略して、季節の挨拶から書き出すこともできます。

  1. 時候(季節)の挨拶
  2. 主文
  3. 結びの言葉

ビジネス用、カジュアル用の季節の挨拶の例は、後ほどそれぞれ紹介します。

10月の季語一覧(金木犀、紅葉など)

季節・時候の挨拶を送る際は、本文にその月を表す季語を入れるといいでしょう。

10月に行われる行事や季節の風物詩、季節の動植物、「時代祭」や「紅葉狩」「柚子」「雁(かり)」などが季語に含まれます。季語を使うと、10月の雰囲気が感じられますね。

植物 栗・銀杏・紅葉・金木犀(きんもくせい)
生き物 頬白(ほおじろ)・鶺鴒(せきれい)・猪
風物詩 新米・菊人形・芋煮会・蘆火(あしび)
  • 漢語調を使った10月の挨拶とは?,A@季節 挨拶 10月 漢語

    10月を連想させる言葉はたくさんあります

[ビジネス]10月の季節の挨拶(書き出し) - 漢語調(改まった文書や目上の人用)

ここからは、実際にビジネスシーンで使える例文を交えながら、10月にふさわしい季節の挨拶をご紹介します。

前述のように、ビジネスメールやかしこまった文書では、漢語調を使うことが多いです。

漢語調の季節の挨拶は、上旬・中旬・下旬など、月のいつの時期かによっても使う言葉が異なります。10月のそれぞれの時期別に、季節の挨拶をご紹介しましょう。

10月全般(上旬・中旬・下旬) - 1日~月末

紅葉の候(こうようのこう)を用いた例文

10月の上旬から10月下旬まで、ほぼ全般わたって使えるのが「紅葉の候」です。

その名の通り、秋になり葉が色づき始める季節を指した言葉です。どのような年代の人にも伝わりやすく、秋の様子がイメージしやすい挨拶と言えるでしょう。

【例文】
拝啓 紅葉の候 貴社益々ご隆昌のこととお慶び申し上げます

清秋の候(せいしゅうのこう)を用いた例文

「清秋(せいしゅう)」とは「空が青く澄みわたった秋」という意味の言葉です。

秋晴れの爽やかな青空を表わすことができます。すっきりと天気がいい日が続く10月全般に使用できます。

【例文】
拝啓 清秋の候、貴社にはいよいよご隆盛の趣、慶賀の至りに存じます

10月上旬

仲秋の候(ちゅうしゅうのこう)を用いた例文

10月上旬に使用する時候の挨拶としては、「仲秋の候(ちゅうしゅうのこう)」が使えます。

「仲秋」は旧暦の秋を7月・8月・9月の3つに分けたうちの中頃、つまり8月を表わしています。白露(9月7日頃)から寒露の前日(10月7日頃)まで使うことができます。

【例文】
拝啓 仲秋の候、貴社におかれましては益々ご清栄のことと心よりお喜び申し上げます

10月中旬

秋冷の候(しゅうれいのこう)を用いた例文

「秋冷(しゅうれい)」とは「秋になって感じる冷気」という意味の言葉です。これを時候の挨拶にすることで、秋になって涼しくなってきた様子を表すことができます。

【例文】
拝啓 秋冷の候、貴社におかれましては、益々ご発展の段、大慶に存じ上げます

錦秋の候(きんしゅうのこう)を用いた例文

「錦秋(きんしゅう)」とは「紅葉が錦のように色鮮やかな秋」という意味の言葉です。色鮮やかな秋の葉を表わした挨拶となります。

【例文】
拝啓 錦秋の候、貴社におかれましては益々ご清栄のことと心よりお喜び申し上げます

10月下旬・11月上旬

霜降の候(そうこうのこう)を用いた例文

「霜降」とは二十四節気のうち、毎年10月23日頃~立冬の前日の11月6日頃にあたります。

気温が下がり、草木に霜が降り始める季節を意味する言葉です。

【例文】
拝啓 霜降の候、平素は格別のご高配を賜り厚く御礼申し上げます

初霜の候(はつしものこう)を用いた例文

「初霜の候(はつしものこう)」とは文字通り、初めて霜が降りる頃に使える挨拶です。「霜降の候」と同様に10月23日頃~11月6日頃に使うのにふさわしい挨拶と言えるでしょう。

【例文】
初霜の候、貴社におかれましては、益々健勝にお過ごしのことと存じます

[ビジネス]10月にふさわしい結びの言葉

漢語調の場合、結びの文に季節的な要素を入れなくても問題はありませんが、10月にあった結び文を入れることで、より季節感のある文書となります。

10月にふさわしい結びの例をご紹介しましょう。

季節に関する結び

・爽やかな秋空が美しい季節となりました。貴社のさらなるご繁栄をお祈り申し上げます
・実りの秋、ますますのご活躍をお祈りいたします

健康に関する結び

・秋の深まりとともに寒さが募る季節ですが、くれぐれもおからだにはご留意なさってください
・寒露の折、皆様のご健康をお祈りしております

  • 10月に使える口語調の季節の挨拶とは?,A@季節 挨拶 10月 口語

    自分なりの発想で10月を表現することも大切です

[カジュアル]10月の季節の挨拶 - 口語調(やわらかい表現、学校のおたよりや親しい人用)

次に、前述の通り親しい人などカジュアルなシーンに用いる口語調の季節の挨拶について、時期ごとに見ていきましょう。

漢語調に比べて自由度が高いので、送る相手や状況に合わせて内容をアレンジしてもいいでしょう。

10月全般

・拝啓 天高く馬肥ゆる秋となりました
・スポーツの秋、食欲の秋となりましたが、◯◯様はどのようにお過ごしでしょうか

現代において、10月はまさに秋の真っただ中と言える季節。秋そのものに着目した挨拶が使いやすいでしょう。

芸術、スポーツ、食欲など、送る相手に合わせた秋の楽しみを感じさせる挨拶や、秋の爽やかさを感じさせる挨拶がおすすめです。

10月上旬~中旬

・涼やかな秋の風が吹く季節となりましたが、いかがお過ごしでしょうか
・稲穂が黄金色に輝く季節です。皆様におかれましてはお元気でお過ごしのことと存じます
・爽やかな秋晴れの日々が続く、過ごしやすい時節となりました

10月中旬~下旬

・金木犀の香りが感じられるようになりました。お健やかにお過ごしでしょうか
・朝晩の冷え込みが感じられる時期ですが、お元気でいらっしゃいますか
・紅葉や菊の花が美しい季節となりました

10月下旬~立冬の前日(11月6日頃)まで

・暦の上では霜降となり、肌寒さを感じる季節となりました
・紅葉の山々、黄色みを帯びる街路樹など、目にも秋を感じられるようになりました

  • 季節の挨拶でメールを楽しもう,A@季節 挨拶 10月 楽しむ

    ビジネスとプライベートで季節の挨拶をうまく使い分けましょう

[カジュアル]10月にふさわしい結びの言葉

口語調の文書に合う、10月にふさわしい結びの言葉をご紹介しましょう。

季節に関する結び

・実りの秋、この好季節をご満喫されますようお祈りいたします
・すがすがしい秋晴れのように爽やかな◯◯様の、さらなるご活躍を楽しみにしております

健康に関する結び

・灯火親しむ秋の夜長、夜更かしをしてお風邪など召されませぬようご自愛ください
・寒露の折から、くれぐれもおからだにはご留意くださいませ

[番外編]10月に送る、コロナ禍における手紙・メールの文例

ようやく落ち着きを見せてきた、2020年頃より世界中で蔓延した新型コロナウイルス感染症。

2023年5月には感染症法上の位置づけの「5類」に移行したこともあり、コロナ禍についてわざわざ言及する必要はないでしょう。

しかし相手の体を気遣う言葉として、文頭や結びの言葉で軽く触れる程度ならばいいかもしれません。

【例文】
拝啓 紅葉の候、貴社におかれましては益々ご活躍のことと、お慶び申し上げます。
さて…(主文)
秋の深まりとともに寒さが募る季節ですが、風邪やコロナなどを召されませんように、皆さまのご健康と、益々のご繁栄を心よりお祈り申し上げます。

10月らしい季節の言葉を入れたはがきやお礼状などを送りましょう

秋の深まりとともに寒さが増す10月という季節。この時期には、10月らしい表現を盛り込むだけではなく、健康を気遣う言葉を入れるといいいでしょう。

収穫の秋、食欲の秋、そしてスポーツの秋や芸術の秋といった、10月ならではの楽しみや喜びを文章に上手に取り入れつつ、相手を気遣う気持ちのこもった手紙を送りましょう。