韓国で生まれた大ヒットミュージカル『シデレウス』が、日本人キャストによりLDH主催で上演される(自由劇場 6月17日〜6月30日)。全15曲に及ぶナンバーを3人で届けていく同作は、時代の壁に遮られ言えなかった真実を命をかけて研究した2人の学者、ガリレオとケプラー、そしてガリレオの娘・マリアの姿を描き、オリオン公演(石井一彰/小野塚勇人/石川由依)、ペガスス公演(鮎川太陽/神永圭佑/七木奏音)、ペルセウス公演(井澤勇貴/吉田広大/礒部花凜)、カシオペア公演(財木琢磨/少年T/富田麻帆)のクワトロキャスト編成となる。

今回は、オリオン公演で若きドイツの数学者・ケプラーを演じる小野塚勇人(劇団EXILE)にインタビュー。最近は自ら「ミュージカルをやりたい」と周りにも言っているという小野塚に、ミュージカルにかける思いなどについて話を聞いた。

  • 小野塚勇人 撮影:宮田浩史

    小野塚勇人 撮影:宮田浩史

■「ぜひ挑戦したい」と公言

――小野塚さんは「ミュージカルをやりたい」とオーディションなども受けられているそうですね。

2021年にMusical『INTERVIEW〜お願い、誰か僕を助けて〜』という作品に出演して、難しさと同時に楽しさ、達成感を得て「いろんなジャンルのミュージカルに挑戦させていただきたいな」と思い始めました。周囲のスタッフ、マネージャー陣にも「自分に出来る作品があるのであればぜひ挑戦したい」と言っていました。

――Twitterでは「小野塚ミュージカル勇人です」と自称されていましたが、8〜9月にはミュージカル『DOROTHY~オズの魔法使い~』出演も決まって。

今、間違いなく小野塚ミュージカル勇人モードになってます(笑)。『DOROTHY』はライオン役ということで、ビジュアルもまだ見慣れなさすぎて、自分でもちょっと笑っちゃうんです。だから、まず自分がライオンになるという意識から始めなきゃいけないなと思っています。

――『シデレウス』は韓国ミュージカルということで、感情を出す部分や掛け合いも多く、かなり大変なのではないかとも思いました。

大変だと思います。ソロの曲を歌い上げることはほとんどなくて、会話の延長が歌になる感覚に近いので、楽しみでもあります。逆に『DOROTHY』はファンタジーなので、もっとエンターテインメントで全然違うアプローチになると思い、ミュージカル作品は幅が広くて奥が深いなと感じました。

――ミュージカルに挑むにあたっては、ボイトレなどもされているんですか?

今は定期的にボイストレーニングをしています。基礎の成長には時間がかかるものなんですが、無意識でやってしまってる癖などを意識できるようになっただけで変わると思うので、経験を積んでいきたいです。

――周りにもボーカルの方がいっぱいいらっしゃると思いますが、歌について話したりすることはありますか?

全然話してないです(笑)。アーティストの歌とミュージカルは違うと思うので。僕も歌手を目指してボイストレーニングをしていた時期もあったのですが、改めてミュージカルとして使える筋肉をつけようと思っているところで、ボーカルともまた違うのかなという感覚があります。“歌わないで歌う”というのがたぶん1番理想の形だと思うんですけど、めちゃくちゃ難しい。役の感情や台詞に音がついている状態が最高だなと思いながら、それが達成できたら苦労はないな、と。頑張って目指しているところです。

――ミュージカルに出演した先に、「この作品に出てみたい」といった目標はありますか?

やはり、いつかは東宝ミュージカルに出てみたい、帝国劇場に立ってみたいという思いはあります。どれくらいかかるのかわからないし、全然見えてなさすぎるんですけど……もちろん、素晴らしい作品や劇場がたくさんあると思うんですが、例えばアーティストの方が「武道館に立ちたい」というような目標として自分の中にあります。

■エネルギーを込めた歌を伝えたい

――実際に前回『INTERVIEW』に出演されたことで発見した課題や今後に生かしたいことはありましたか?

やっぱり、歌の難しさはひしひしと感じています。感情を優先すると声がブレるし、 声を意識すると感情がどこかにいってしまうので……前回もそこがすごく課題でしたし、何年後かわからないですけど、もっと成長した時に、『INTERVIEW』を再演できたらいいなとも思っています。やることは山積みです。

『INTERVIEW』は俳優の方もたくさん観にきてくださって、褒めてもらうこと多かったので、挑戦して良かったということは感じました。劇団EXILEの中では、秋山(真太郎)さんも「代表作なんじゃない?」と言ってくれて。間違いなく今までにやってきた作品の中で1番難しかったので、それだけ向き合った結果、そう言っていただけたことを嬉しく思います。ミュージカルは芝居と歌があって、やることが倍だというすごさも感じたので、この大変さにも慣れていかないと。「最初から完璧にできるわけがないし、とにかく観に来てくださった方たちに、思いだけは伝えよう」と思って、多少声がブレようとも、それすら芝居として見せてやろうと決めていました。今回はまた前作とは違う方向ですが、明るい希望のエネルギーを込めた歌を伝えていきたいなと思っています。

――最近のLDHさんはどんどんミュージカルを主催されていますが、そういう方針などは聞いたりされるんですか?

方針までは、僕にはわからないです(笑)。ただLDHが舞台、ミュージカルに挑戦していることは間違いないと思うので、今後より大きな規模でやる作品も出てくるだろうし、そういう時に自分も出られるような実力は付けていきたいです。そういう意味でもいろいろ経験しておくことが大事かなと思っています。

――もう主力メンバーとして期待されているのでは…?

いやいや、全然、白帯です! 素敵な作品があった時に「小野塚が出たらいいんじゃない」と名前が挙がるような俳優になれたらいいなと思います。

――LDHさんの企画の面白さでいうと、最近はスマホアプリのパズルゲーム『Jr.EXILE/劇団EXILE Kitchen Kingdom Blast』も配信されましたね。

僕、さっきもやってました!

――けっこうストーリーも意外な展開だったりしてびっくりしました。

僕たちはストーリー制作には全然絡んでいないんですが、本当にみんな言いそうなセリフばかりなんです。どれだけ特徴を掴んでるんだろうと驚きました。アフレコでも「なんで、俺がこれを好きなの知ってるんだろう」と聞くと、「○年の雑誌のインタビューで言ってましたよ」と逆に教えてくれるくらい、下調べをしてくれて、面白いです。パズルに失敗すると、自分から「あー、ダメだったか」「もうちょっと考えないとなー」と言われて、「うるせえわ」とつっこんじゃうし、先輩のセリフにもつっこみながらやっているときがあります(笑)

企画を聞いた時は恋愛シミュレーション系なのかなと思っていたけど、がっつりパズルゲームでしたね。個人的には、ああいうパズルゲームってやり始めると止まらないんです。ただ、出る方になると、撮影が大変でした(笑)

――また作品の話に戻りますが、最後に注目してほしいところも教えていただければ。

田尾下(哲)さんの演出で素敵な世界観になると思うし、常識にとらわれず打ち込む姿が描かれていて、無邪気な好奇心だったり、純粋さだったり、どれだけ失敗しても諦めないまっすぐな思いが表れています。今、情報社会で色々なチャレンジができる世の中になっているので、そういう人たちの闘志の源になるような作品になれたら嬉しく、ぜひ注目してもらえればと思います。

■小野塚勇人
1993年6月29日生まれ。千葉県出身。2012年、舞台『あたっくNo.1』出演をきっかけに劇団EXILEに加入。『仮面ライダーエグゼイド』(16年)出演で話題を呼ぶ。主な出演作に『橋田壽賀子ドラマ 渡る世間は鬼ばかり 3時間スペシャル2019』『特命刑事 カクホの女2』(19年)、『共演NG』(20年)、映画『HiGH&LOW』シリーズ(16年〜17年)、『恋のしずく』『jam』(18年)、『GOZEN -純恋の剣-』(19年)、『いけいけ! バカオンナ〜我が道を行け〜』(20年)、舞台『勇者のために鐘は鳴る』(20年)、『INTERVIEW〜お願い、誰か僕を助けて〜』『TXT vol.2「ID」』(21年)、『結 -MUSUBI-』(22年)など。8月〜10月にかけてミュージカル『DOROTHY〜オズの魔法使い〜』出演を控える。