大河ドラマ『青天を衝け』(NHK総合 毎週日曜20:00~ほか)で、主人公の渋沢栄一役を演じてきた吉沢亮。東京2020パラリンピックによる2回の放送休止を挟み、9月12日の第26回より放送が再開されるが、大政奉還を経ていよいよ時代は明治となり、栄一は“日本資本主義の父”となるべく奮闘していく。放送再開を前に吉沢に話を聞くと、1年以上演じてきた栄一役について「体の中に染みついています。これまでそういう経験はしたことがなかったです」と手応えを語った。

  • 大河ドラマ『青天を衝け』で主人公・渋沢栄一を演じている吉沢亮

「ずっとここまで栄一としていたので、意識とかではないところで栄一が出てくるというか、ただそこに居るだけで栄一になれるみたいな感覚は、大河ならではの経験かと。僕自身、どちらかというと、自分の中では、意識的にオンオフをきっちりと切り替えて役を演じるほうだと思っていましたが、ここまで同じ役を演じてくると、NHKのセットに入った瞬間、もう栄一になっている気がするので、そういう点ではすごく面白い経験だなと思います」

また、栄一役をこれまで演じてきて「すごく刺激を受けています」と興奮気味に話す吉沢。「話が進むにつれて、関わっていく人物がどんどん変わっていくし、栄一自身も年齢が上がっていき、今まではただ純粋に進んできたのに、いろんな回り道を覚えていきます。栄一がどんどん成長していくので、それに合わせて僕自身も成長していかなければいけない。すごくクオリティの高いことを求められているから、毎回全力でやらないといけないという意識は、最初のころから変わらないです」

ここ数回で、栄一は「おかしれえ」(面白い)という言葉をよく口にしているが、これは堤真一が演じた平岡円四郎がよく使っていた、このドラマで生み出された言葉だ。円四郎は徳川慶喜(草なぎ剛)の側近で、栄一の恩人でもあったが、志半ばで暗殺されてしまった。吉沢は円四郎について「栄一にとって特別な存在の人」と捉えている。

「円四郎はこれまで栄一が抱いていたお武家様のイメージとは真逆な人。栄一にとっては理想の人で、心から尊敬していたのではないかと思います。彼が亡くなってからも、栄一は円四郎の魂を受け継いでいるので、第17回以降、20回くらいまで、円四郎のしゃべり方が栄一にうつっているというか、彼が話すような、ちょっと強めの江戸っ子口調を意識的に取り入れてしゃべっていました」

また、栄一に多大な影響を与え、彼の人生を変えた人物として筆頭に上がるのが、草なぎ剛演じる徳川慶喜だが、今後の栄一と慶喜との関係性はどうなっていくのだろうか。

「栄一にとっての慶喜は、将軍になる前から尊敬していた人で、彼がその任から外された後もその思いは変わらないのかなと。栄一自身がどんどん偉くなり、上に立つ存在になっていっても、やはり慶喜のいる静岡へ足を運びます。また、『青天を衝け』という作品全体を通しても、栄一と慶喜という2人の線が軸になってきた点が大きかったかと。もちろん栄一と喜作、慶喜と円四郎、円四郎と栄一など、ほかにも2人の関係性がそれぞれ描かれてきましたが、そのなかでも栄一と慶喜の関係性は、一番色濃く残っていく気がしています」

慶喜役の草なぎに対しても、役柄と同様に心からリスペクトしているという吉沢。「草なぎさんは、僕がこの業界に入る前から、それこそ小学生の頃から見てきた大スターです。いわば栄一が慶喜に対する尊敬と、僕・吉沢亮が草なぎさんに感じている尊敬が、少し形は違うかもしれないけど、リンクしている部分があると思います。役者としての草なぎさんの出演作もいろいろと観させてもらっていて、共演する前からすごい人だなあと思っていたので。その憧れは一緒にお芝居をしていてもずっとあって、その関係性が自然に投影されていたらいいなと思いながら演じています」