収入の減少や失業によって家計が苦しくなり、国民健康保険料を納める余裕がなくなることがあります。そんなときのために、国民健康保険料が軽減・免除となる制度があります。

新型コロナウイルス感染症の影響で収入が大幅に減ってしまった人でも、国民健康保険料が減免されるようになりました。本記事では、国民健康保険料の軽減・免除について、わかりやすく解説します。

  • 国民健康保険料を軽減・免除する方法は? コロナ禍で減収した人も対象に

    国民健康保険料を軽減・免除する方法は? コロナ禍で減収した人も対象に

国民健康保険料を軽減・免除する方法と注意点

日本は国民皆保険制度を導入しているため、誰もが医療保険に加入する必要があります。

会社に勤めている人は会社の健康保険に加入しますが、それ以外の自営業者やフリーランス、無職の人、あるいは会社を退職して加入していた健康保険を脱退した人などは、国民健康保険に加入することになっています。

基本的に国民健康保険料は、前年の所得によって決まる「所得割額」、世帯の加入者数によって決まる「均等割額」、1世帯ごとで一律にかかる「平等割額」から算出されます(※1)。定められた国民健康保険料を納めることで、医療機関を自己負担割合のみで受診することができます。

しかし、失業したり事業が廃業になったりして収入が激減、もしくはなくなってしまった場合、国民健康保険料を納めるのが困難になることがあります。そんな不測の事態に備えて、国民健康保険料が免除・軽減される制度が存在します。

国民健康保険料の軽減制度

まずは、国民健康保険料を軽減する制度について紹介します。国民健康保険料の免除として多くの自治体で実施されているものは「1. 国民健康保険料の均等割額の軽減」と「2. 非自発的失業者の保険料軽減」の2つです。

  • 1. 国民健康保険料の均等割額の軽減

前年の合計所得が一定額以下になった世帯は、国民健康保険料の均等割額が軽減される制度があります(※2)。この場合、加入者が申請する必要はありません。市区町村が毎年、基準日となる4月1日時点において世帯全員の前年度所得合計額で判定し軽減対象となるかどうかが決まります。国民健康保険への加入が年度の途中の場合は、国民健康保険の加入日を基準日として判定します。

ただし、1つ注意点があります。それは、確定申告または住民税の申告をしておく必要がある点です。これらの申告をしていないと市区町村が所得の判定ができないため、もし軽減制度の要件に該当していても、その恩恵を受けられなくなります。くれぐれも、確定申告もしくは住民税の申告は忘れないようにしましょう。

  • 2. 会社都合など非自発的失業者の保険料軽減

会社の倒産や突然の解雇、雇い止めといった会社都合の離職や、やむを得ない理由で会社を退職した人を「非自発的失業者」と呼びます。非自発的失業者の場合も、保険料が軽減されます(※3)。この場合、「雇用保険受給資格者証」の離職理由コードが「11・12・21・22・23・31・32・33・34」のいずれかになっている人が対象で、65歳未満の人が利用できます。

また、この軽減を受けるには申請が必要です。以下の書類を持参し、住んでいる市区町村の国民健康保険の担当窓口で申請します。

<申請時に必要な書類>

  • 雇用保険受給資格者証
  • 国民健康保険被保険者証(保険証)
  • マイナンバー確認書類
  • 本人確認書類

ただし、こちらも注意点があります。この軽減措置には適用期間がある点です。適用期間は、離職日の翌日の属する月から、その月の属する年度の翌年度末となります。以下に一例を挙げます。

離職日 : 2020年3月31日
適用期間 : 2020年4月(2020年度)~2021年3月(2021年度)

また、ほかの健康保険に加入した場合は国民健康保険を脱退した時点までが適用期間となります。つまり、適用期間内に申請しなければならないのです。もし申請が遅れた場合は軽減が受けられないことがあります。

さらに、この軽減措置は前年の給与所得だけが対象となります。不動産所得や事業所得などは対象とならない点は留意しておきましょう。

国民健康保険料はどれくらい軽減される?

先ほど解説した「国民健康保険料の均等割額の軽減」と「非自発的失業者の保険料軽減」の2つの軽減制度では、保険料がどれくらい軽減されるかを見ていきましょう。

1. 国民健康保険料の均等割額の軽減では、どれくらい減額される?

国民健康保険料の均等割額の軽減制度は、基準日となる4月1日時点における世帯全員の前年度所得合計額が、定められた世帯の軽減基準額以下だった場合に、国民健康保険の均等割額が所得合計額に応じて7割、もしくは5割か2割、減額されます(※4)

2020年度(2020年4月1日~2021年3月31日)での均等割額軽減基準額と減額割合は、以下の通りです。

減額割合 均等割額軽減基準額
7割減額 33万円
5割減額 33万円+(28.5万円×加入者数)
2割減額 33万円+(52万円×加入者数)

※上記は、後期高齢者医療制度へ移行した人の所得と人数も含みます。

2. 非自発的失業者の保険料軽減では、どれくらい減額される?

国民健康保険の保険料は、さきほど解説したように所得割額・均等割額・平等割額から成り、前年1月~12月までの所得、世帯内の加入者数、年齢をもとに計算します。

このとき保険料額を大きく左右するのが前年1月~12月までの所得です。失業したばかりの人の保険料は前年の会社員のときの給与所得をもとに計算されるので、どうしても負担が大きくなってしまいます。そのため、失業状態が続くと保険料を納めるのが困難になる場合があります。そんなときに利用できるのが「非自発的失業者の保険料軽減」です。

この軽減制度を利用すると、前年の給与所得を10分の3とみなして計算されます。この減額はかなり大きいので、該当する人は利用することをおすすめします。

  • 軽減対象となる人は申請をお忘れなく

    軽減対象となる人は申請をお忘れなく

新型コロナウイルス感染症の影響による国民健康保険料の軽減・免除

新型コロナウイルス感染拡大の影響で、休業などに追い込まれ、収入が減って生活が苦しくなった人も少なくありません。国民健康保険料を納めるのが困難になった家庭もあるでしょう。

そんな状況から、新型コロナウイルス感染症の影響で主に生計を支えている人の収入が減少する見込みである世帯に対し、国民健康保険料の減免が実施されることになりました。

減免対象となる世帯

減免の対象となるのは、次のような世帯です。

  • 新型コロナウイルス感染症によって、主に生計を支える人が死亡、または1カ月以上の入院など重篤な傷病を負った世帯
  • 新型コロナウイルス感染症の影響で、主に生計を支える人の事業収入、不動産収入、山林収入、給与収入の減少が見込まれ、次の【1】~【3】のすべてに該当する世帯
    【1】主に生計を支える人の2020年中の事業収入・不動産収入・山林収入・給与収入のいずれかの減少見込み額が、前年の収入の10分の3以上であること
    【2】主に生計を支える人の2019年の合計所得金額が1,000万円以下であること
    【3】前年に減少見込みの所得以外にも所得があり、その所得の合計額が400万円以下であること

参考 : 世田谷区「新型コロナウイルス感染症の影響による国民健康保険料の減免について【7月1日更新】

減免される保険料

減免となるのは、2019年度と2020年度の保険料です。2020年2月1日から2021年3月31日までの間に納期限が設定されている保険料の全額もしくは一部が対象となります。

減免される割合

主に生計を支えている人が死亡、または重篤な傷病を負った世帯は全額免除となります。そのほか、主に生計を支える人の収入が減少した世帯の場合は以下の計算式で減額または免除の割合を計算します。

<保険料減免額の計算式>

保険料減免額=対象保険料額(A×B/C)×減額又は免除の割合(1円未満は切り捨て)

  • A : 世帯の加入者全員について算定した保険料額
  • B : 減少が見込まれる事業収入等の前年の所得額
    (減少が見込まれる事業収入等が2つ以上ある場合はその合計額)
  • C : 主に生計を支える人と世帯の加入者全員について算定した前年の合計所得金額

<減額または免除の割合>

主に生計を支える人の前年の合計所得金額 減額または免除の割合
300万円以下 全額免除
400万円以下 8割
550万円以下 6割
750万円以下 4割
1,000万円以下 2割

申請方法

新型コロナウイルス感染症の影響による国民健康保険料の減免を受ける際は、下記の書類をお住まいの市区町村の担当門口に郵送または持参して申請します。

  • 国民健康保険料減額免除申請書
  • 新型コロナウイルス感染症の影響による収入減少等申出書
    (いずれも自治体ホームページでアウトプット可)
  • 死亡診断書、医師の診断書等(死亡や重篤な傷病を負った場合)
  • 帳簿など2020年の収入が減少する見込みであることが確認できる書類
  • 2019年の源泉徴収票や確定申告書の写し など

たいていの自治体では2021年3月末まで申請ができますが、自治体によって申請期限の日程が異なりますので、必ずお住まいの自治体ホームページで申請期限を確認しましょう。

該当する減免制度は早めに利用しましょう

収入の激減や失業などで国民健康保険料を納めるのが困難になった場合、保険料が減額、あるいは免除となる制度があります。この制度の対象者や申請方法についてご紹介しました。

国民健康保険は自営業者やフリーランス、無職の人など、会社勤めではない人がいつでも安心して自己負担分のみで病院などを受診するための大事な保険です。生活が苦しいからと国民健康保険料を未納にするのではなく、ご紹介した減免制度を利用するようにしましょう。

また、現在(2020年11月時点)は、新型コロナウイルス感染症の影響による収入減少でも保険料が減免となります。該当する場合は、早めに申請されることをおすすめします。

参照 :
(※1)松戸市「国民健康保険料の計算方法
(※2)目黒区「国民健康保険料の軽減
(※3)世田谷区「非自発的失業者の保険料軽減制度
(※4)世田谷区「国民健康保険料の均等割額の軽減制度