会社員や公務員が受給できる厚生年金は、国民年金に上乗せされる年金です。加入期間と年収によって、受給額が変わってくるため、国民年金の受給額の計算と比べると複雑になります。そこで、厚生年金の受給額の早見表を作成しました。ここで、将来受け取ることができる年金額の大まかな目安を知ることができます。年金がいくらもらえるのか不安になっている人はぜひチェックしてみてくださいね。

  • 厚生年金はだいたいいくらもらえる?

    厚生年金はだいたいいくらもらえる?

■公的年金は二階建て

最初に、公的年金制度を簡単に説明しておきましょう。20歳以上60歳未満のすべての人が加入することが義務付けられているのが国民年金(基礎年金)です。国民年金は、自営業者や学生が対象となる第1号被保険者、会社員や公務員が対象となる第2号被保険者、専業主婦(主夫)など第2号被保険者の配偶者が対象となる第3号被保険者に分類されます。このうち第2号被保険者は厚生年金の加入者ともなるため、国民年金の上に厚生年金が上乗せされ、両方の年金を受け取ることができます。これがいわゆる二階建てと称される年金制度です。

■国民年金の計算式

国民年金の年金額は保険料の納付済期間が分かれば、簡単に出すことができます。

78万1,700円(※)×保険料納付済月数÷480ヵ月(40年)
※令和2年度の老齢基礎年金の満額です。

ただし、免除期間がある場合は、免除の種類によって決められた割合を乗じますので、少し複雑になります。正確に知りたい人は年に1回届く「ねんきん定期便」、または「ねんきんネット」で確認できます。こちらについては、この記事の最後でも紹介します。

■厚生年金の計算式

厚生年金の場合、加入期間と給与の平均額(標準報酬)に応じて年金額が変わります。また、平成15年4月を境に給与の計算方法が変わったため、より複雑になっています。平成15年3月までは、賞与を含まない月収のみで平均給与を算出していましたが、平成15年4月からは、賞与を含めた総報酬制で算出することになりました。

(1)平成15年3月以前=平均標準報酬月額(※1)×7.5/1,000×平成15年3月以前の月数
(2)平成15年4月以後=平均標準報酬額(※2)×5.769/1,000×平成15年4月以後の月数
(1)+(2)=厚生年金の年金額

※1月給の平均額
※2月給と賞与の総額(年収)÷12

7.5や5.769という数字は生年月日ごとの乗率であり、ここでは昭和21年4月2日以降生まれの人の乗率を使用しています。また、現在価値に再評価するための「再評価率」も乗じますがここでは省略します。

このように、正確な金額を出すには複雑な計算となるので、簡単に目安を知りたい人は次の早見表を参考にしてみてください。

■厚生年金の受給額早見表

平成15年4月以後の計算式で算出した概算となりますので、平均給与は年収÷12で求めた金額に近い項目を見てください。

<厚生年金の受給額(年額)早見表>

  • 厚生年金の受給額(年額)早見表 ※筆者作成(クリックで拡大)

    厚生年金の受給額(年額)早見表 ※筆者作成(タップで拡大)

この金額は厚生年金だけの金額なので、実際はこれに国民年金(基礎年金)の金額が加わります。たとえば、国民年金に40年間、厚生年金に30年間加入し、厚生年金時代の平均給与が30万円だった場合は、合計で約140.5万円の年金が受給できます。月額にすると11.7万円です。

■公的年金の平均月額

現在、年金を受給している人の年金額(月額)の平均を見てみましょう。

<公的年金の平均月額>

  • 出典:厚生年金保険・国民年金事業の概況(平成30年度)|厚生労働省を元に筆者作成

    出典:厚生年金保険・国民年金事業の概況(平成30年度)|厚生労働省を元に筆者作成

ここで示した厚生年金保険は基礎年金を含んだ金額であるため、当然国民年金だけの人と比べると年金額は多くなります。また、高齢夫婦の世帯としてみると、年金収入は2人分となるため、そこから生活費を引いた場合のシミュレーションをすれば、ある程度、年金生活の収支状況が想像できると思います。

■もっと正確に知りたい人は

詳細に年金額を知りたい人は、年に1回届く「ねんきん定期便」で確認をしてみましょう。また、ねんきんネットで見込額を試算したり、年金記録を確認したりすることもできます。

ねんきんネットの利用するには、最初に登録をします。登録には年金手帳などに記載されている「基礎年金番号」が必要です。ねんきん定期便が手元にある場合は、そこに記載されているアクセスキーを利用すると迅速に登録ができます。申し込み画面に必要事項を入力すると、登録したメールアドレスに24時間以内にユーザーID確認メールが送られてきます。そこで承認をすれば完了です。アクセスキーがない場合は、申し込み後、5営業日ほどでハガキが送られてくるので、そこに記載されているユーザーIDによって登録が完了できます。

ねんきんネットでは、年金見込額の試算だけでなく、保険料を納めた月の詳細な記録、追納可能月数や金額の確認もできます。また、電子版「ねんきん定期便」の閲覧やダウンロードもできます。

厚生年金の受給額は加入期間と給与収入に比例して増えていくため、できるだけ長く加入し、保険料を多く納めることで二階建て部分の年金額を増やすことができます。厚生年金の保険料は労使折半(本人負担半分)であるため、その点でも恵まれています。まずは、漠然として不安をなくすためにも、いくら年金を受け取ることができるのか、把握するところから始めてみてくださいね。