資産形成は、安心して暮らしていくための将来の備えとして、とても大切なことです。少しでも早く資産形成を始めることで、大きな目標金額をより達成しやすくなるでしょう。ただし、資産形成は、基本を知らないまま行うと、資産の損失につながる可能性もあります。

ここでは、資産形成を始める前に知っておきたい3つの基本をご紹介します。

  • 将来に備える資産形成の始め方

    将来に備える資産形成の始め方

資産形成とは?

資産形成とは、資産がほとんどないゼロの状態から資産を形成していくことをいいます。この場合の資産には、現金や有価証券、不動産、金などが該当します。

例えば、給与から毎月5,000円を積み立てることにした場合、最初のひと月で貯めた5,000円はその人の資産となり、「資産形成をしている」といえます。

資産というと、まとまった金額を思い浮かべるかもしれませんが、たとえ少額であっても、その人が持っているお金や有価証券などは、すべて資産に該当します。このような資産を作り、増やしていくことが資産形成です。

意義がはっきりしないままでお金を貯めようとすると、モチベーションが維持できなかったり、目的を見失って投げ出してしまったりすることがあります。資産形成の役割について、あらためて見ていきましょう。

資産形成と資産運用の違い

資産形成に似た言葉に、「資産運用」があります。両者にはどういった違いがあるのでしょうか。

資産運用とは、今保有している資産を運用することを指す言葉です。例えば、5,000円の貯金で株式を買って値上がりを狙うというのも資産運用ですし、3,000万円でマンションを買って人に貸すのも資産運用です。

資産運用を行う目的は、ほとんどの場合、「今よりも資産を増やす」ということでしょう。そのため、資産運用を行うことは、資産形成にも役立ちます。資産形成をし、作られた資産を運用することで、より大きな資産の形成を目指すことができるのです。

資産形成の目的をしっかり掲げよう

資産形成の目的は人によってさまざまですが、多くの人に共通するものとして、「将来への備え」が挙げられます。

高齢化が進む中で、現役を退いた後の生活を支えるための資産形成に注目が集まっています。人生が100年だと考えると、65歳で定年を迎えたとしても、その後、35年間生き続けることになります。この35年を快適で楽しい余生にするためには、やはり、ある程度の資産が必要でしょう。

また、会社の業績悪化による給与の減少や、退職、病気、介護など、万が一のときにも、まとまった資産があれば、物理的、心理的な支えになります。そのほか、住宅や車の購入、旅行、子供の教育費などを目的として資産形成を行うこともあるでしょう。もちろん、複数の目的があることもあります。

お金は、必ず本来の目的で使わなければいけないものではありません。計画的な資産形成を行うことで、老後はもちろん、将来起こり得るさまざまなトラブルや多額の支出に備えることができるのです。

資産形成をする際には、まず、自分なりの目的と目標額について考えてみましょう。

資産形成をする際に大切なこと

資産形成は、継続することが大切です。たとえ毎月5,000円ずつでも、22歳から65歳まで貯金を続ければ、258万円になります。継続する中で昇給があれば、毎月の積立額を増やすことだってできるでしょう。

一方、「一度だけ200万円を貯金した」という方の場合、資産形成を継続的に行う習慣がつかないまま、一度貯金をして終わりということになります。この場合、200万円という資産はあっても、資産形成を継続的に行っているとはいえないでしょう。

資産形成は、継続することでより大きなメリットを得やすくなります。日頃から資産形成を意識し、習慣づけることで、当たり前に貯金や投資が行えるようになっていくはずです。

そのためにも、無理なく続けられるシステムを作ることが大切です。資産形成に回せるお金がどのくらいなのかを検討するとともに、積立預金やつみたてNISA、iDeCo(個人型確定拠出年金)のような制度を活用するのもおすすめです。

知っておきたい資産形成の3つの基本

効率良く資産形成をしていくためには、資産運用が役立ちます。

例えば、毎月1万円を封筒に入れて貯金した場合は、1年で12万円、10年で120万円貯まりますが、これを銀行に預ければ、120万円にプラスして利子を受け取ることができます。債権や投資信託といった投資商品を活用すれば、さらに大きな利益を得ることもできるでしょう。

しかし、資産運用にはリスクもあります。できるだけ損失を抑え、着実に資産形成していくためには、3つの基本を押さえておく必要があります。

1.じっくりと長期運用をする

そもそも、資産形成は長期的に資産を形成していくものですから、資産運用を行う場合も、長期運用が基本になります。長期運用を行うことで、複利効果を得ることができます。

例えば、10万円を年利1% で運用した場合、税金を考慮せず単純計算すると、1年後には1,000円の利息が得られます。これを翌年も運用し続けた場合、今度は10万1,000円に対して1% の利息が受け取れるため、受け取り利息は1,010円にアップします。これが複利効果です。 運用期間が長期になればなるほど、複利の効果は大きくなります。

2.リスク回避のために分散投資をする

分散投資とは、ひとつの投資先ではなく、さまざまな投資先に対して投資をするということです。

例えば、A社の株式に100万円を投資したとしましょう。この場合、A社の株価が下がると、ダイレクトに影響を受けることになってしまいます。一方、A社~E社まで、5社に投資を行えば、A社の株価が下がっても、ほかの会社の株価が上がれば損失をカバーできます。このように、分散投資を行うことは、リスクの分散に役立ちます。

会社だけでなく、業界や国、投資商品(株式なのか、債権なのか、不動産なのか等)など、さまざまな観点から、投資先の分散を検討しましょう。

とはいえ、多くの投資先に投資を行うためには、それだけの元手が必要になりますし、投資先の選定も簡単ではありません。

そこで便利なのが、投資家から集めたお金を複数の投資先に投資する、「投資信託 」や不動産投資信託の「J-REIT (ジェイリート)」、上場投資信託の「ETF (イーティーエフ)」といった投資商品です。これらを活用することで、少額の元手しかなくても、無理なく分散投資が行えます。

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3.少額でも毎月コツコツと積立投資をする

毎月決まった金額を資産形成に回す積立投資は、長期的で着実な資産を作っていくためにおすすめの手法です。

資産運用に役立つ積立投資には、つみたてNISAやiDeCo(個人型確定拠出年金)があります。特に、つみたてNISAは、積立形式の投資に特化したNISAで、約20年間、投資信託の購入額は毎年40万円までという制限はありますが、長期にわたって運用益が非課税 になるというメリットがあります。

ただし、つみたてNISAは2037年までの制度のため、購入できるのは2037年までとなります。なお、2037年に購入した投資信託は、その後20年間、非課税で保有することが可能です。

一方、iDeCo (個人型確定拠出年金)は、老後資金のための資産運用に適した手法です。毎月一定額の金額を払い込んで運用を行いますが、拠出金は全額所得控除の対象となります。節税しながら資産運用ができて、運用益も非課税となるため、老後資金のための資産形成を行いたい方にとってメリットは大きいといえるでしょう。

一方、「原則60歳以上になるまで引き出すことができない」「手数料がかかる」といったデメリットもあります。

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将来への備えのために資産形成を始めよう

資産形成には、長期運用、分散投資、積立投資の3つの基本を押さえた資産運用が効果的です。できるだけ長いスパンで資産運用を行うためにも、早い段階から資産形成を意識した家計管理を行いましょう。

まとまった資産があれば、老後の備えになるだけでなく、不測の事態や不意の出費にも対応することができます。安心して暮らすためにも、自分に合った資産形成方法について考えることをおすすめします。