次戦はいよいよ挑戦者決定三番勝負進出を懸けて羽生善治九段と対戦

豊島将之竜王(名人)への挑戦権を懸けた、第33期竜王戦決勝トーナメント(主催:読売新聞社)が進行中。7月27日には▲梶浦宏孝六段-△佐藤康光九段戦が東京・将棋会館で行われました。結果は123手で梶浦六段の勝利。これでトーナメント4連勝とし、準決勝に進出となりました。

5組優勝の梶浦六段は決勝トーナメントの一番低い山からの参戦。挑戦権を得るには、挑戦者決定三番勝負も含めて7勝が必要となります。果てしなく険しい道ですが、ここまで梶浦六段は高野智史五段(6組優勝)、石井健太郎六段(4組優勝)、木村一基王位(1組5位)を破って本局を迎えました。

梶浦六段の4戦目の相手は、1組4位の佐藤康九段。現行の決勝トーナメント制度になった第19期以降で、1組5位、1組4位を4組優勝以下の棋士が連破したのは、第28期の永瀬拓矢六段(当時)のみです。

本局は後手番になった佐藤康九段が、得意の角交換向かい飛車を採用。梶浦六段は角を序盤で手放し、一歩得を果たします。一方の佐藤康九段も角を打って応戦。激しい攻め合いになりました。

先に駒得となったのは梶浦六段。飛車金両取りに銀を打ち、金得となります。しかし、佐藤康九段も敵陣に銀を打ち、角・銀・と金で梶浦玉へと迫ります。将来的には佐藤康九段も金か飛車を手に入れられることが確定し、実質的な駒の損得はなくなりました。

そうなると形勢を左右するのは駒の働きです。佐藤康九段の角は攻防の要所に陣取っているのに対し、梶浦六段の角は攻めにも守りにも働いていません。むしろ狙われる駒になってしまっています。つまり、形勢は佐藤康九段が良くなりました。

梶浦六段は相手のと金、成銀、角の攻め駒が自玉へ押し寄せてくる前に相手玉へ迫らなければなりません。自陣の駒を目一杯働かせますが、わずかに届かず。以下は自玉が寄せられるのを待つのみのはずでしたが……

佐藤康九段は持ち時間10分のうち、7分を使って梶浦玉に王手をかけます。そして、98手目に馬で桂を入手し、勝利は目前……ではなかったのです。

ここで梶浦六段は99手目から猛然と佐藤玉に王手をかけ始めました。佐藤玉は詰むのか詰まないのか。駒を次々と成り捨てていく梶浦六段。攻め駒を減らすだけのようにも見えましたが、その狙いがついに117手目に明らかになりました。

今まで何の役にも立っていなかった自陣の角が飛び出て王手。これが決め手でした。今までの成り捨ては、この角の利きを通すためのものだったのです。最後はこの角も成り捨てて、見事佐藤玉を詰まし上げました。31手詰という長手順の詰み筋でした。

角の飛び出しが生じたのは、98手目に佐藤康九段の馬が移動したため。大半の時間帯では佐藤康九段の角(馬)のほうが働いていたのに、最後の最後で立場が逆転しました。

佐藤康九段としては、馬さえ動かさなければこの大逆転劇はなかっただけに、無念の敗戦。翌日Twitterで、「(信じたくないが)幻を見ていたようです。【中略】目眩がする、はよく比喩で使われますが帰途で久々に味わいました。」とつづっています。

一方、難局を制した梶浦六段は破竹の4連勝で準決勝に進出。次なる相手は1組優勝の羽生善治九段です。次も勝てば挑戦者決定三番勝負への進出となります。快進撃はどこまで続くのでしょうか。ちなみに前述の先駆者、永瀬六段は挑戦者決定三番勝負まで進み、そこで敗れています。

竜王戦ドリームを実現中の梶浦六段。勢いはとどまることを知らない
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