2019年秋ドラマ18作をガチ採点! 『G線上』『俺の話は長い』なぜ高評価?

主要18作がそろった2019年の秋ドラマ。今回もドラマ解説者の木村隆志が、全作品の初回放送をウォッチ。俳優名や視聴率など「業界のしがらみを無視!」したガチンコでオススメ作品を探っていく。

別記事(2019年秋ドラマ傾向分析! 『俺の話は長い』日テレ3作、仕掛けの背景とは)において、2019年秋ドラマの主な傾向を［1］「あのドラマに再会」の秋　［2］わが道をゆく日テレの勝算は?　の2つと分析。

おすすめドラマとして、『G線上のあなたと私』(TBS系 火曜22時)、『俺の話は長い』(日テレ系 土曜22時)、『まだ結婚できない男』(カンテレ、フジ系 火曜21時)、『少年寅次郎』(NHK 土曜21時)、『シャーロック』(フジ系 月曜21時)の5作を選んだ。

本記事では、それらを含む全作品のショートレビューと、目安の採点(3点満点)を挙げていく。

■『シャーロック』　月曜21時～　フジ系

出演者：ディーン・フジオカ、岩田剛典、佐々木蔵之介ほか
寸評：いい意味で「目につく鼻につく」ディーンの存在感にフィーチャー。魅力を知り尽くす太田Pと西谷弘監督の手腕が光る。倒叙スタイルで謎解きに意外性はないが、ゲスト俳優の豪華さも含め安定した娯楽作。
採点：【脚本☆☆　演出☆☆☆　キャスト☆☆☆　期待度☆☆☆】

■『ハル～総合商社の女～』　月曜22時～　テレ東系

出演者：中谷美紀、藤木直人、白洲迅ほか
寸評：総合商社の経営企画部という職域の広さが「カッコイイ主人公」を印象づける。「シングルマザーで元夫が上司」のベタさは中谷の凛とした佇まいでカバー。同枠らしく、ゲストにバイプレーヤーがズラリ。
採点：【脚本☆　演出☆☆　キャスト☆☆　期待度☆☆】

■『まだ結婚できない男』　火曜21時～　カンテレ・フジ系

出演者：阿部寛、吉田羊、稲森いずみほか
寸評：13年の経過を巧みに活用。変えるところと変えないところの判断も手堅く、遊び心も効いている。鍵を握る新キャストの女優3人もバランスがよく、パグ人気も含め、成功すれば続々編も期待できそう。
採点：【脚本☆☆　演出☆☆☆　キャスト☆☆☆　期待度☆☆☆】

■『G線上のあなたと私』　火曜22時～　TBS系

出演者：波瑠、中川大志、松下由樹ほか
寸評：悩みを抱える3人の感情を軽やかに描写。悲しみも、ときめきも、振り切らないことでリアリティを呼び込み、一歩ずつ前進する様子を連ドラらしいペースで描いている。作り手の良心を感じる作品。
採点：【脚本☆☆☆　演出☆☆☆　キャスト☆☆☆　期待度☆☆☆】

■『同期のサクラ』　水曜22時～　日テレ系

出演者：高畑充希、橋本愛、椎名桔平ほか
寸評：空気を読まない変わり者ヒロインは遊川和彦脚本のデフォルト。時折いい子キャラをにおわせるなど時代に合わせた変化も。ここまで「1話1年」「重い脳挫傷」などの作為的な仕掛けに必然性はない。
採点：【脚本☆☆　演出☆☆　キャスト☆☆　期待度☆☆】

■『死役所』　水曜24時12分～　テレ東系

出演者：松岡昌宏、黒島結菜、松本まりかほか
寸評：シ役所の設定などは、「なるほど」と「なぜ」の紙一重。松岡の役作りは『ミタゾノ』と大差ないが、黒島と松本のキャラが世界観を支えている。各キャラの謎も含め、各話のストーリーには見ごたえアリ。
採点：【脚本☆☆　演出☆☆　キャスト☆☆　期待度☆☆】

■『ドクターX ～外科医・大門未知子』　木曜21時～　テレ朝系

出演者：米倉涼子、岸部一徳、西田敏行ほか
寸評：前シリーズで「余命3カ月」の重病から生還した未知子は令和も健在。「経営再建」「ハゲタカ」という新たなキーワードもあるが、「失敗しない」ワンパターンを楽しむ安心感で今作も支持を得るだろう。
採点：【脚本☆☆　演出☆☆　キャスト☆☆　期待度☆☆】

■『モトカレマニア』　木曜22時～　フジ系

出演者：新木優子、高良健吾、山口紗弥加ほか
寸評：「モトカレ」という恋愛絶頂の平成初期を思わせるテーマが不安。「なぜ好き?」「どこが魅力?」の説得力がほしいところ。ぶっ飛んだ演出は楽しいが、ターゲット層を考えるとイケメン俳優の絶対数が足りない。
採点：【脚本☆　演出☆☆　キャスト☆　期待度☆☆】

■『チート～詐欺師の皆さん、ご注意ください～』　木曜23時59分～　読テレ・日テレ系

出演者：本田翼、風間俊介、金子大地ほか
寸評：「悪徳詐欺師を懲らしめる」というコンセプトを左右するのは、詐欺師の腕と悪さ。詐欺師たちの間抜けさが爽快感を得られない要因に。本田のアイドルシーンや福原遥も含め、男性を癒す深夜ドラマか。
採点：【脚本☆　演出☆　キャスト☆☆　期待度☆】

■『ミス・ジコチョー～天才・天ノ教授の調査ファイル』　金曜22時～ NHK

出演者：松雪泰子、堀井新太、高橋メアリージュンほか
寸評：「失敗学」「事故調査」は新鮮で、しかもオリジナル。扱う事故も多彩だが、どこまで企業責任を掘り下げられるか。自分勝手な主人公、振り回される助手、決めゼリフとフォーマット感の強さが視聴者を選ぶ。
採点：【脚本☆☆　演出☆☆　キャスト☆☆　期待度☆☆】

■『4分間のマリーゴールド』　金曜22時～　TBS系

出演者：福士蒼汰、菜々緒、横浜流星ほか
寸評：「死の運命が見える」「余命1年の義姉と恋愛」とファンタジーがてんこ盛り。菜々緒の清楚キャラ、常に暗く物憂げな福士のモノローグが多い、救命シーンで考えすぎなどのツッコミどころを楽しめるか。
採点：【脚本☆　演出☆　キャスト☆☆　期待度☆】

■『時効警察はじめました』　金曜23時15分～　テレ朝系

出演者：オダギリジョー、麻生久美子、吉岡里帆ほか
寸評：12年ぶりの続編だが、「時効廃止」の違和感はクリアし、シュールなムードや小ネタは普遍。ただし、各話で脚本・演出の出来にバラつきが大きい。小雪、向井理、中山美穂とゲストの人選も楽しみの1つ。
採点：【脚本☆☆　演出☆☆　キャスト☆☆☆　期待度☆☆】

■『少年寅次郎』　土曜21時　NHK

出演者：井上真央、毎熊克哉、石丸幹二ほか
寸評：山田洋次×岡田惠和で寅さんの前日譚なら人情話としては鉄板。序盤は母の涙と子の笑顔、中盤以降は恋の切なさや家出のエピソードで泣かせるのか。割烹着が似合う井上の熱演もあり、5話終了が惜しい。
採点：【脚本☆☆☆　演出☆☆☆　キャスト☆☆☆　期待度☆☆☆】

■『俺の話は長い』　土曜22時～　日テレ系

出演者：生田斗真、安田顕、小池栄子ほか
寸評：「30分2本立て」「ホームドラマへの回帰」への挑戦は見事。“愛すべきダメ男”が得意な金子茂樹の技が冴え渡る。安田、小池、原田美枝子ら名優に囲まれつつ、清原果耶の存在感があまりにも大きい。
採点：【脚本☆☆☆　演出☆☆　キャスト☆☆☆　期待度☆☆☆】

■『決してマネしないでください。』　土曜23時30分～　NHK

出演者：小瀧望、馬場ふみか、ラウールほか
寸評：傑作続きの『よるドラ』で期待値は高かったが、凝りすぎた演出で難解な印象。「ピュアゆえに空回りする片想い男を笑えるか?」、小瀧の技量が問われている。「大学生の恋」は希少で貴重な作品ジャンル。
採点：【脚本☆☆　演出☆　キャスト☆　期待度☆】

■『リカ』　土曜23時40分～　東海テレビ・フジ系

出演者：高岡早紀、小池徹平、大谷亮平ほか
寸評：『大人の土ドラ』十八番のサイコサスペンスで品質に不安なし。脚本の粗さもあり、「怖い」か「笑える」か人それぞれ。かつてストーカーに狙われる役でブレイクした高岡が当役を演じることに隔世の感。
採点：【脚本☆　演出☆☆　キャスト☆☆　期待度☆☆】

■『グランメゾン東京』　日曜21時～　TBS系

出演者：木村拓哉、鈴木京香、沢村一樹ほか
寸評：料理はどれも美しく、映像もヴィヴィット。されど心が躍らないのは、連呼される「三ツ星」「日本人の恥」を軸にしたアンリアルな物語のせいか、傲慢な主人公のキャラか。厨房を舞台にした群像劇が見たい。
採点：【脚本☆　演出☆☆☆　キャスト☆☆　期待度☆☆】

■『ニッポンノワール ―刑事Yの反乱―』　日曜22時30分～　日テレ系

出演者：賀来賢人、広末涼子、井浦新ほか
寸評：オープニングから飛ばしまくりのハイテンション。不穏と暴力と嫌悪感を集めた世界観は視聴者を選び、バズ狙いは露骨だが、やり切る勇気はなかなかのもの。ミステリーが後回しになっているのが残念。
採点：【脚本☆　演出☆☆　キャスト☆☆☆　期待度☆☆】