8日夜、『R-1グランプリ2025』の決勝戦がカンテレ・フジテレビ系で生放送され、23歳の友田オレが史上最年少王者に輝いた。

放送中からネット上にはさまざまなコメントが書き込まれ、終了後には結果速報、審査内容、ファイナルステージのフリップネタなどに関する記事などが続出。毎年低視聴率が報じられ、存在意義を問う声があがる一方で、それでも生放送の賞レースとして貴重なコンテンツであることに気づかされた。

『R-1グランプリ』そのもの、ひいては5月にグランプリファイナルが予定されている『THE SECOND』も含め、フジ系のお笑い賞レース全体にスポットを当てた記事やコメントは見当たらない。フレッシュな新王者・友田オレの今後、相変わらず新王者に絡んでくるお見送り芸人しんいちなども含め、テレビ解説者の木村隆志が掘り下げていく。

  • 『R-1グランプリ2025』王者の友田オレ

    『R-1グランプリ2025』王者の友田オレ

ネット上で目立つのは怒りより落胆

『R-1グランプリ』の生放送を見ながらネット上の動きを追い続けていたが、目立っていたのは「例年よりネタが面白い」というポジティブな声。これは昨年大会から芸歴10年の出場制限を撤廃した効果が現れたのではないか。実際ファイナリストの9人中、芸歴10年以下は友田オレと吉住の2人のみであり、中堅・ベテランの実力優位がうかがえる。

しかし、それでもネット上には称賛以上に不満の声が目立ち、それをすかさず記事化したネットメディアも多かった。さらに特筆すべきは、不満の理由が「審査員の基準と採点」にほぼ集約されていたこと。これまでも『R-1グランプリ』は「ネタうんぬん以前に、審査への不満が『M-1グランプリ』や『キングオブコント』よりも評価が上がらない理由の1つ」と言われていた。

例年、「王者への祝福そっちのけで審査への不満が書き込まれる」という事態が続いていたからか、制作サイドは審査員を歴代王者の佐久間一行と女性第一人者の友近を加えた計7人に増員。ところがそれでも「『審査基準が偏っている』『視聴者の見方とかけ離れている』という不満を改善できたか」と言えば疑問符が付く。

事の重大さを感じさせられるのは、不満を書き込んでいる人々に無理難題を言っているようなニュアンスが感じられないこと。「友田オレのネタが笑えなかった」という人ですら、「王者を変えろ」などとエキセントリックに怒っているわけではなく、審査基準に一般目線が入らないことへの落胆をこぼすような声が散見された。

なかでも最も多かったのは「吉住とマツモトクラブの得点が低すぎる」という不満であり、事実これらの声を報じた記事やコメントには多くの「共感した」が押されている。これは同時に「審査員が自らのコメントでそんな不満を軽減させられなかった」ことの証しだろう。

現役芸人限定の審査員は適切か

この「審査基準に『視聴者目線』『一般人がウケたかどうか』がほとんど加味されない」という問題は『R-1グランプリ』だけでなく『女芸人No.1決定戦 THE W』でも指摘され、両者のステイタスが上がらない一因とされている。

はたしてお笑い賞レースの審査員を現役芸人に限定することは適切なのか。視聴者には分かりづらい内輪向けのマニアックな大会にならないか。審査員を現役芸人限定にするとしても、テレビコンテンツである以上、視聴者目線を含められる人材を入れるべきではないか。そんな声があがっていたように、これらの問題は来年の大会に持ち越されたと言っていいだろう。

だからこそ気になるのは、5月にグランプリファイナルが開催予定の『THE SECOND~漫才トーナメント2025』。わずか2か月後に同じフジで生放送されるだけに、その盛り上がりや納得感などが『R-1グランプリ』と比較されるのではないか。

ただ、これまでの『THE SECOND』は、すでに審査への不満が極めて少ない大会だった。「観客100人による3点満点」の審査であり、顔が隠されている一方で「席ごとにすべての点数を表示する」という透明性もある。

同大会はまだ今年で3回目だが、『R-1グランプリ』が審査でつまずき続ける中、相対的に評価が上がっていくのかもしれない。もちろんフジとしては『M-1グランプリ』と『キングオブコント』に対抗する上で、両大会ともに支持を得ていきたいところだろう。