もう1つふれておきたいのは、新王者となった友田オレについて。

23歳という若さに加え、一般的な知名度の低さはフレッシュさを強調し、さらに早大卒のインテリであり、ルックスと高身長も含め、「新スター誕生か」という期待感がふくらむ存在なのは間違いない。しかし、期待の新星だからこそウエストランド・井口浩之の「R-1には夢がない」というネタが続行していることの危うさを感じさせられる。

8日夜、『R-1グランプリ2025』と『ENGEIグランドスラム』の間に放送されたミニ番組『ENGEIグランドスラムみどころ』に2022年大会王者のお見送り芸人しんいちが登場した。トップバッターとして「R-1王者へようこそ」というネタを披露し、これが反響を集めている。

しんいちは「優勝したとて、レギュラーは決まらないよ」「優勝したとて、CMなんて来ないよ」「優勝したとて、グリーン車乗せてもらえないよ」「優勝したとて、芸能人と付き合えないよ」とたたみかけて「R-1チャンピオン、今こんな感じです!」と絶叫。

続けて「やまもとまさみさんはクレープ屋さんで大成功してるよ」「なだぎ武さんは2連覇してるのに準決勝審査員止まりだよ」「中山功太さんはとにかくハゲてきたよ」「三浦マイルドさんはもう東京、大阪にもいないよ」と歴代王者の現状をイジリ、「今僕こうやって歌わせてもらってるけど、これ全国放送じゃありません(※『ENGEIグランドスラム』のトップバッター的な演出だったが、実際は関東ローカルのミニ番組)。何でやねん! 前説やん! 何で僕が。チャンピオンやのに!」と締めくくった。

さらに週明けの10日、しんいちは情報番組『ノンストップ!』(フジ)に友田オレが出演した際にも、乱入のような形で登場。土曜に披露したネタを「優勝したとて」というショートバージョンで披露して新王者と同等以上の笑いを取っていた。

  • お見送り芸人しんいち

友田は歌と声をどう生かすのか

この現状を読み解くと、「『ENGEIグランドスラム』の本番でネタを披露した歴代王者はおらず、関東ローカルのミニ番組でしんいちが出演したのみ」「『ノンストップ!』も新王者だけではトーク力の不安や盛り上がりに欠けるきらいからしんいちを呼んだ」という厳しい現実がうかがえる。

実際、『ノンストップ!』ではMCの設楽統が笑いながら「『R-1』はしんいちが天井」とイジっていたが、このコメントが本質を突いていた。なぜ歴代王者の中から3年前のしんいちが選ばれたのか。それは現在、歴代王者の中でトップのポジションにいるからだろう。

「優勝したとて」の体現者であり、井戸田潤から「ヨゴレ芸人」とイジられ、ネット上では「嫌い」というコメントも多いしんいちこそ、友田がまず乗り越えるべきハードルとなる。ちなみにそのしんいちが王者になったときも準優勝のZAZYと2人でバラエティに出演する機会が多く、それが制作サイドからのリアルかつシビアな評価だった。

そもそも友田のような歌ネタベースの芸人は平場のトークに課題を抱えているケースが多く、「ネタの賞味期限が短い」とも言われている。さらに「周囲はかなり年上の先輩ばかり」で、「芸人の少ない事務所に所属しているため援護射撃も期待しづらい」などもあって、難しい道のりが待っているのかもしれない。

ただ、必ずしも他芸人のようにひな壇や街ブラでの活躍が必要というわけでもないだろう。頭の良さは業界内でも評判だった友田がどんな策で勝負していくのか。学生お笑い出身だけに、ブレーンの力を借りることや、歌や声を生かした仕事などへの挑戦も含め、興味深いポイントはまだまだある。いずれにしても友田が上半期における注目タレントに浮上したことは確かだ。