冬ドラマが中盤戦に入り、視聴率や配信再生数、ネット上の記事やコメント数などの結果に明暗が生まれている。
現在放送中のドラマで話題を集めているのは、主に『御上先生』(TBS)、『クジャクのダンス、誰が見た?』(TBS)、『ホットスポット』(日本テレビ)だろう。ネット上の話題はこの3作が圧倒的であり、ほかは「記事やコメントすら少ない」という苦況が続いている。
この3作に共通しているのは、「連ドラの脚本家としては異色の経歴を持つ、詩森ろば、金沢知樹、バカリズムが脚本を手がけていること。今冬、地上波の連ドラではなく別の場所で活躍してきた3人が、トップシーンでそろい踏みした背景にはどんなことがあるのか。
ここでは、脚本家という入口からドラマシーンの現状・課題・未来を、テレビ解説者の木村隆志が掘り下げていく。
舞台経験豊富な3人が連ドラに
まず、3人の簡単な経歴と脚本の魅力をあげていこう。
『御上先生』を手がける詩森は、劇作家・演出家として活動を続けてきた“舞台の人”。高石昭彦、藤井道人と共作した19年の映画『新聞記者』で脚光を浴び、21年の『群青領域』(NHK総合)で初めて連ドラを手がけた。
22年に単発ドラマ『この花咲くや』(NHK BS)の脚本も担ったが、民放のドラマも連ドラを1人で書くことも今回が初めて。一般企業で働くなどの苦労人だが、その経験を作品に生かしている上に、ジャンルやモチーフを徹底的に取材・調査するスタンスで、細部までリアルかつ迫力十分な物語に定評がある。
『クジャクのダンス、誰が見た?』を手がける金沢は、恋愛バラエティ『あいのり』(フジ)の出演歴を持ち、芸人から放送作家を経て脚本家に転身。長年、舞台の脚本を手がけながら10年代には映像作品を増やし、20年代に入ると『サンクチュアリ -聖域-』(Netflix)をヒットさせたほか、今冬は『東京サラダボウル』(NHK総合)も手がけている。
『ホットスポット』を手がけるバカリズムは、同名のコンビ解散後は長年トップを走り続けるピン芸人。多くの単独ライブを手がけてきたほか、10年代中盤からドラマ脚本に挑んでいたものの単発的で、ゴールデン・プライム帯の連ドラは1作のみだった。
しかし、23年の『ブラッシュアップライフ』(日テレ)がドラマ各賞を受賞するヒット作となったことで、同じスタッフが手がける今冬の『ホットスポット』につながり、今後も連ドラ執筆頻度が上がりそうなムードがある。
3人の共通点は、ジャンルこそ異なるが舞台の豊富な経験。それぞれセリフの臨場感で見る人々を引き込み、没入感を誘うような人間描写に定評がある。また、金沢は74年生まれの51歳、バカリズムは75年生まれの49歳と業界経験十分の同世代。さらに詩森は2人のひと世代上のベテランであり、いずれも「他の作品を手がけ続けてきたあと、連ドラに本格参戦して円熟した技術を見せている」ことが分かるのではないか。