1つ目の理由はロケバラエティの安定した人気。TVerなど動画配信サービスやスマートテレビの普及でリアルタイム視聴してもらうことがさらに難しくなる中、「ロケバラエティはイージーウォッチングにうってつけのジャンル」とみなされている。
なかでも、「道の駅」特集は名産・特産の魅力がある上に、地元生産者や販売者の熱気やユニークなキャラクターがテレビ映えしやすく、景色などの映像美も楽しめるバランスのいいコンテンツ。特に新鮮な食材を使った料理と愛きょうたっぷりの地元住民に癒やされる中高年層は多い。
2つ目の理由は不景気や物価高が続いて旅行のハードルが上がったこと。道の駅をめぐる旅行は「安・近・短」の象徴であり、コスパやタイパなどの面で、この点でも中高年層の人気が高い。
また、「車移動の人は電車移動の人より外食など夜の外出が少なく家にいる」とみなすテレビマンもいる。リアルタイムで見てもらえる可能性が高いのは車移動の人であり、彼らは「安・近・短」を好むという判断なのだろう。
3つ目の理由は北関東を主要エリアに設定しやすいこと。ビデオリサーチによる視聴率のベースは関東地区の数値であり、だからこそ関東の各地域を特集すると局地的な高視聴率を獲得し、全体の結果を押し上げられる。
なかでも、最も局地的に視聴率が上がりやすいのは、在宅率の高い北関東。振り返ると、5年前の春にスタートした『ヒューマングルメンタリー オモウマい店』(中京テレビ・日テレ系)が北関東を手厚く扱って成功して以降、各局が北関東をフィーチャーするようになっていた。7月19日放送の『ナニコレ珍百景』で群馬・栃木・茨城の北関東3県特集が組まれ、「道の駅珍百景対決」が扱われたことからもそれがわかるだろう。
4つ目の理由は系列局の各エリアも扱えること。北関東を手厚く扱いつつ、ネット局の道の駅も扱うことでモチベーションが上がり、連携や信頼関係を高められる。そのネット局は地元自治体と綿密な関係にあるだけに、全国放送の番組で「道の駅」を扱ってもらうことの価値は高い。
5つ目の理由はいくつかの点で制作上の都合がいいから。リサーチ、台本作成、ロケ準備、ロケ当日など、多くの点で他の企画より制作の難易度が低く、現地自治体などの協力を全面的に受けて制作費が抑えられる。
さらに道の駅ロケに派遣するタレントのリポートもポイントの1つ。道の駅でのロケは愛すべきキャラクターの地元住民や名産・特産などネタが豊富で、リポートのハードルが高くないため、若手アイドルやアスリートなどでも十分こなせる。また、「来客は観光目的で来ているため都会よりもインタビューがしやすい」こともメリットの1つと言っていいだろう。
道の駅で広がる勝ち組負け組の差
ここまで5つの理由をあげてきたが、道の駅ロケは人も物も魅力的で、ロケがしやすい上に「食べる買う遊ぶ」の3要素が充実。「道の駅」特集が組まれることは理にかなった選択と言っていいのかもしれない。
ただ道の駅特集は「行く人いるの?」「本当に流行ってる?」などの声もあるように、「まったく食指が動かない」という人も少なくないジャンル。北関東をメインに扱うとれば、さらに観る人を選んでしまう。『笑ってコラえて!』の「道の駅伝」は売上No.1商品を当てながらスゴロク方式で全踏破を目指すという『桃太郎電鉄』のようなゲーム要素でエンタメ度を高めようとしているが、それでも好き嫌いが分かれやすい企画という感は否めない。
春にはじまったばかりの新番組『超調査チューズデイ』や局の看板番組『笑ってコラえて!』が「道の駅」特集を選択しているところに、民放各局の苦境が見て取れる。より多くの人々に向けたものではなく一部の人々に向けた企画を選ばなければいけないのは、リアルタイム視聴をベースにした収益構造を変えられないからだろう。
また、「全国に1,230か所あると言っても、盛況なのは一部のみで赤字の道の駅も多い」という指摘もある。8日放送の『笑ってコラえて!』「道の駅伝」では新潟県糸魚川市能生のズワイガニ(3,000円以上の大きさ)が番組最高金額の月間売上1,200万円だったが、勝ち組と負け組の格差は広がる一方なのかもしれない。
加えて「道の駅」特集が増えるほど“かぶり”が発生し、飽きられかねないのも不安材料の1つ。その他でも、同地域にある他施設との連携不足や交通渋滞問題など地元住民とのトラブルで「取り扱い注意の道の駅もある」という。
「全国各地の自治体と連携して効率的に地方を活性化する」という取り組み自体は素晴らしいだけに、今後は道の駅ばかりにとらわれないバランス感覚が求められていくのではないか。