テクノロジーが進化し、AIの導入などが現実のものとなった今、「働き方」が様変わりしてきています。終身雇用も崩れ始め、ライフプランに不安を感じている方も多いのではないでしょうか。

本連載では、法務・税務・起業コンサルタントのプロをはじめとする面々が、副業・複業、転職、起業、海外進出などをテーマに、「新時代の働き方」に関する情報をリレー形式で発信していきます。

今回は、中小ベンチャー企業などへの経営コンサルティングのかたわら、デジタルハリウッド大学院客員教授、グロービス・マネジメント・スクール講師、パートナーCFO養成塾頭等も務める高森厚太郎氏が、ミーティングを活性化させる「論点整理」のスキルについて語ります。

  • 「論点整理」のスキルについて


数字とロジックで経営と現場をExit(IPO、M&A、優良中堅)へナビゲートする。ベンチャーパートナーCFO、高森厚太郎です。

今回は、「『ファシリテーション』のスキルと、必要なマインドやプロセスは? 」で取り上げた、「議論を活性化する」ために効果的な、「論点整理と議論の見える化」について詳細を説明したいと思います。

議論の活性化には「論点整理」が重要

「議論の活性化」はミーティング、幹部クラスが参加する経営会議など企画検討や意思決定するミーティングでは特に期待されます。そして議論を活性化するために、効果がありファシリテーターとして腕の奮い甲斐があるのが「論点整理」です。

論点を整理する目的には二つあります。一つは「議論の全体像と現在地を示す」ことです。

議論が白熱してくると、話のスジが見えなくなって迷子になってしまいます。特に、当事者として参加していると、背景も含めて内容を全部知っているあまり、逆に議論の中で迷子になってしまうことがよくあります。そこで、全体像の確認をしつつ現在地を示すことが大切です。

この整理により、「結論を出すために今何を考えないといけないのか、話さないといけないのか」、参加者が議論している内容の全体での位置づけを再認識することができます。

もう一つの目的は、「議論の捌き方を示す」ことです。ミーティングには、30分なり1時間なり制約時間があります。その限られた時間で、納得のいく議論をして、妥当性のある結論にたどりつかないといけません。

そのために、議論をガイドする捌き方、プロセスやポイントを押さえる枠組みが有用です。「今はこういうことを考えて議論すればいい。次はこれ」という捌き方ができれば、議論がブレたり拡散したりせずに行え、効率的に論点検討できます。さらに、しっかりとした捌き方があれば、考えることをモレなく検討することができ、議論の効果も担保できるのです。

論点整理の有効な方法とは

論点整理をしていく上で有効な方法として、「事前に論点が予想できるのであれば、自分なりの論点整理の枠組みを準備しておく」と良いでしょう。論点をその場でパッと考え付くのは難易度が高いです。例えば新規事業の検討であれば、業界内環境を分析する3Cなど使えそうなフレームワークを仕込んでおくのです。

また、「意見が活発に出る場合は、早い段階で一度話を止めて論点を整理する」のも有効です。活発に意見が出てくると、あれもこれもと意見が出てきて逆に収拾がつかなくなりがちです。意見が広がった状態で議論をたたむのは大変なので、ある程度早めに……ということです。

議論の展開が読めない、途中で議論が整理できない、といった状況は往々にしてあります。そのときは、「主要な意見のキーワードだけでも板書しておく」と良いでしょう。議論が落ち着いてきた段階で、整理してみましょうと、キーワードをグルーピングして整理し、話を前に進めていくのです。

また、「書記役を決めて、論点のみ板書してもらう」という手もあります。ファシリテーターが板書する時間がない場合や、議論の趨勢を追うことに集中したい場合は有効な手です。

さらに、「自分で全て論点整理ができない場合は、参加者の意見をもらう」のもアリです。思ってもみなかった有効なアイデアが出てきたりしますし、参加者に思考モードの転換(例えば、拡散から収束へ)を促すきっかけになったりもします。

最後に、「ある程度話が煮詰まってきた、論点が一通り出てきたら、論点を板書して、その後の議論はどの論点についての話なのかを共有しながら議論する」のは良策です。現在地を一旦確認し、ゴールに向けての論点を押さえた上で、話を転がしていきましょう。

論点整理には、論理思考のツールが使える

論点整理の有効な方法を見ると、論点を整理するために、少なくともファシリテーターは「全体像、現在地、これからの方向性のことは分かってないといけない」ことになります。さらに、整理した論点を参加者にホワイトボードなど何らかの手段で見せるため、「議論の見える化の方法を持たないといけない」ことがわかります。

そこで使えるのが、自分が話を整理するためのツール、可視化するための方法論である「MECEやロジックツリー、フレームワークなどの論理思考のツール」です。議論は目に見えないからこそ必要以上に話が複雑になり、大きくなりがちです。そんな空中戦の議論を構造化するために、ロジカルシンキングなどで学べる論理思考のツールが有効なのです。

いずれにせよ、目に見えない議論の交通整理を、その場の当意即妙でできるというのは、かなりの高等技術と言えます。だからこそ、これができるとバリューが高いのです。ファシリテーターはぜひ論理思考のツールを駆使して、論点整理と議論の見える化を行い、議論の活性化にチャレンジしてください。

執筆者プロフィール : 高森厚太郎

一般社団法人日本パートナーCFO協会 代表理事。
東京大学法学部卒業。筑波大学大学院、デジタルハリウッド大学院修了。日本長期信用銀行(法人融資)、グロービス(eラーニング)、GAGA/USEN(邦画製作、動画配信、音楽出版)、Ed-Techベンチャー取締役(コンテンツ、管理)を歴任。現在は数字とロジックで経営と現場をナビゲートするプレセアコンサルティングの代表取締役パートナーCFOとしてベンチャー企業などへの経営コンサルティングのかたわら、デジタルハリウッド大学院客員教授、グロービス・マネジメント・スクール講師、パートナーCFO養成塾頭等も務める。著書に「中小・ベンチャー企業CFOの教科書」(中央経済社)がある。