テクノロジーが進化し、AIの導入などが現実のものとなった今、「働き方」が様変わりしてきています。終身雇用も崩れ始め、ライフプランに不安を感じている方も多いのではないでしょうか。

本連載では、法務・税務・起業コンサルタントのプロをはじめとする面々が、副業・複業、転職、起業、海外進出などをテーマに、「新時代の働き方」に関する情報をリレー形式で発信していきます。

今回は、コンサルティング会社と会計事務所の代表を務め、スタートアップを中心に会計面・資金調達面からサポートを行っている岡野貴幸氏が、事業の収益性を示す指標として、IRR(内部収益率)の考え方について解説します。

  • 事業の収益性を見る指標「IRR」とは?


IRRとは?

会社は事業に投資をして、どのぐらいの利益を得られるかを計画します。決算書だと、会社全体で保有している資産や会社全体の利益を見ることは出来ます。しかし、ある1つの事業の利益率がどうなっているかは確認することが出来ません。そのため、ある1つの事業の利益率がどうなっているかを確認する指標として「IRR」があります。

IRRとは、Internal Rate of Returnの略であり、日本語では「内部収益率」と言います。簡単に言うと毎年の利回りがどれぐらいになるかということです。IRRでは他の指標と異なり、投資期間を考慮して計算します。貨幣の時間価値を考慮して計算するためです。

IRRの算出方法は?

IRR(内部収益率)の計算は、投資金額(マイナスのキャッシュフロー)と将来キャッシュフローの現在価値の総和(すべての合計)が0(ゼロ)になるときの割引率( r )の値を求めることで計算できます。具体的には、次のような計算をします。

投資金額(マイナスキャッシュフロー) + 1年目のキャッシュフローの現在価値 + 2年目のキャッシュフローの現在価値 + 3年目のキャッシュフローの現在価値 + …… が 0(ゼロ)になる時の割引率

この時の割引率( r )がIRRとなります。とはいえ計算式を見ても分かりづらいため、実際に使用する際はExcelでの関数や、関数電卓で求めましょう。今回は、具体的な計算方法というよりは、感覚で掴んでいただきたいので、実際の数字を使って考えてみたいと思います。

例えば、100万円を投資して、3年間合計で150万円のキャッシュフローが得られる下記表のような投資案件A~Cの3つがあったとします。あなたならどれに投資をするでしょうか?

どれも似たような数字ですが、1年目、2年目いずれもBのキャッシュフローが一番大きいため、Bの案件が一番良いと感じると思います。

ここで難しいのは、AとCの比較です。1年目、2年目のキャッシュフローの合計額はCのほうが大きいですが、1年目のキャッシュフローの金額はAのほうが大きい状態となっています。このような時にIRRを求めることが有効です。

この3案件のIRRは下記となります。
・投資案件A IRR 16.46%
・投資案件B IRR 17.18%
・投資案件C IRR 16.16%

やはり、Bの案件が一番高いIRRとなりました。次にAとCですが、Aのほうが高いIRRとなっています。より1年目(投資から早い段階)で大きくキャッシュフローを得られたほうがIRRは高いことが分かりました。

このようにIRRを計算することによって、単純にキャッシュフローの金額ではなく、投資した金額とその回収のタイミングを考慮して投資効率を図ることが可能となります。複数の投資案件を検討している時にはIRRを算出して参考にしてみると良いでしょう。