コロナ禍を機に海外出張の代わりに、ウェブ会議を頻繁に行うことが国際業務のスタンダードになりました。英語関連事業を行う当社(レアジョブグループ)の調査によると、英語で仕事をしている人の8割(N=578名)が、「オンラインのコミュニケーションが定着する」と言っています。

「今回採用した外国人のエンジニアと一緒にプロジェクトを進めることになった」 「海外の複数拠点のメンバーと新商品を開発することになった」 これを読むあなたも、日本にいながらある日突然、英語を使う業務が飛び込んでくる可能性もあります。

急に英語のウェブ会議に参加することになっても、コツさえ押さえておけば、怖くありません。このシリーズでは、英語業務で使えるウェブ会議の“コミュニケーションのコツ”をご紹介していきます。

英語のウェブ会議と一言で言っても、社内メンバー同士が気軽に打ち合わせをするものから、取引先との重要な交渉や大型案件の受注プレゼンのように重いものまで、いろいろとあります。ここでは複数の海外拠点も含めたグループ内のプロジェクト会議という設定で話を進めていきましょう。

あなたは日本とグローバルビジネスの会議の進め方の違いはわかりますか? 日本企業の従来の会議と、グローバルな業務で行う会議は、似て非なるものと思ったほうが良いでしょう。その背景にはビジネス文化の違いがあります。伝統的な日本のビジネス文化では、対立を好まず、序列を重んじる傾向が強く、会議の目的が情報共有や進捗報告であったり、決定することが必要な会議では事前に関係者とすり合わせて、会議外でおおよその合意形成をしておくことがよくあります。ではグローバルでビジネスするときの会議とは何かを見ていきましょう。

1.出席者は発言を期待される

参加者には会議のゴール達成のために積極的な役割を果たすことが期待されます。したがってずっと黙って何もいわないと「あの人は、一体何のために出席しているのだろう」と思われてしまいます。

日本のビジネスパーソンで英語の会議で何も話さない人がときどきいます。だいたい次のような理由があるようです。

●「状況をわかっておいてほしいから、とりあえず一緒に出て」と言われて参加した
●「上司と違うことを言ったらまずいので黙っておこう」「自分がそこで意見を言う立場ではないと思った」と気を遣う
●「何か聞かれたら答えよう」と思っているうちに、ミーティングが終わってしまった
●「リスニング力が足りなくて、何を言っているのかわからなかった」「発言しようとおもったがタイミングがつかめなかった」

実は最後の理由以外は、英語力とあまり関係がありません。英語力はもちろん必要ですが、英語ができるようになれば、自然に会議で発言できるかというと、必ずしもそうとは言えません。その証拠に、同じくらいの英語力をもつノンネイティブの外国人と日本人が同席している会議でも、日本人の発言の少なさは際立っています。

日本人同士の会議では、参加者は、進行役から指名されるか「何か意見はありませんか?」と聞かれてから発言します。発言も上下関係を気にして、空気を読む雰囲気があります。しかし、このような日本独自の理由は、グローバル環境では通用しません。自分のモードを切り替えることが大切です。一緒に出席している日本人メンバーにもこうした違いを認識してもらうのがいいですね。

2.参加者への関心を示す

日本人同士のオンラインミーティングでは特に気にならなくても、グローバルビジネスではお互いの意思の疎通が難しく、円滑なコミュニケーションのために気をつけることがいくつかあります。日本のビジネス文化のままで参加すると、海外の参加者に「表情が乏しい」「リアクションが少ない」「考えていることがわからない」という印象を与えがちです。自分では気づいていなくても、メモなどをとって下ばかり向いていて、かつ何も発言しないと、「この人は上の空で何か別のことをしている」と誤解されてしまいます。

「聞いていますよ」ということをはっきり伝えるためには、顔を上げ、あいづちをうったり、“Uh-huh”“OK”などの慣用句を使ったり、相手の言ったフレーズを、代名詞を使って繰り返すことも有効です。ただし、自分がわかっていないことをわかっているという誤ったサインを送ることがないように気をつけましょう。

対面のミーティングではアイコンタクトが大事ですが、ウェブ会議では「アイコンタクト=カメラ目線」となります。何か意見を言いたい相手がいると、画面でその人がうつっている部分を見てしまい、ここでカメラ目線を使うのはなかなか難しいものです。その対策としては、伝えたい相手には、最初にその人の名前を呼びかけてから話し出すのが良いと思います。

また、全員に伝えたい大事なことがあるときは、「これから大事なことを言う」といって、カメラ目線を使うことをお勧めします。

3.発言のタイミングをのがさない

英語による会議では、話し合いながらその場で意思決定するスタイルが普通です。したがって、あいまいな態度のままでYes/Noをはっきり示さなかったり、Yes/Noを言ってもその根拠をきちんと示さなかったり、言うべきことを発言しなかったりすると、あとでもめる原因になります。

もし、その場で決められなければ、「このような理由でここでは決められないので、保留にしてくれ」と言い切らなければなりません。議事録を平行してつくっている場合には、会議が終わる前に、気になる部分を確認させてもらいましょう。

さらに、日本の会議と違って「沈黙を良し」としません。むしろ人の話をさえぎってまで自己主張することも珍しくありません。そんななかで、マイクをオフにしていると、発言の機会を逃してしまうことになりかねませんので、事情が許す限り、マイクはオンにしておくことをお勧めします。

次回は英語でのやりとりに必要なリスニング・スピーキングのレベルについて解説します。