コロナ禍を機に海外出張の代わりに、ウェブ会議を頻繁に行うことが国際業務のスタンダードになりました。英語関連事業を行う当社(レアジョブグループ)の調査によると、英語で仕事をしている人の8割(N=578名)が、「オンラインのコミュニケーションが定着する」と言っています。

急に英語のウェブ会議に参加することになっても、コツさえ押さえておけば、怖くありません。このシリーズでは、英語業務で使えるウェブ会議の“コミュニケーションのコツ”をご紹介していきます

1.やりたい業務に必要な「やりとり」のレベルを知る

みなさんは、ウェブ会議で、英語でやりとりするというと、どんなシーンを思い浮かべますか?

英語のウェブ会議での「やりとり」において、リスニング力と、スピーキング力を伸ばすことが、とても重要になってきます。

ひとことで「やりとり」といっても、日常的な打ち合わせから緊張感のある交渉まで、レベルがかなり違いそうですね。めざすレベルと今の実力を知っておけば、GPSで位置情報を確認しながら最短距離で山登りをするように、効率よくスキルアップできます。

実はこのGPSに該当するものがあるのです。しかもグローバルに通用する基準です。

それは、CEFR(セファール:ヨーロッパ言語共通参照枠)です。言語を使う基礎段階から熟達段階までをレベル分けし「できること」を定めています。CEFRはすでに日本の学校教育や大学入試の基準、そして企業でも使われています。ほとんどの英語テストも結果を換算できる対照表をだしています。

今回は、「やりとり」にフォーカスしてお話していきましょう。CEFRレベルとはこの図のように、語学力を下からpre-A1、最上級のC2まで設定しています。

  • CEFR(セファール:ヨーロッパ言語共通参照枠)

英語を学んでいる、あるいはこれから学ぼうかなと考えている人のゴール設定としてA2からB2Highまで、レベル別にウェブ会議でできることをまとめてみました。あなたがWeb会議で実現したいやりとりに当てはめて、めざすべきスピーキングのレベルを見つけてください。ここで気を付けていただきたいのは、ゴール設定ではスピーキングのCEFRレベルのほうを基準にしてほしいということです。

というのは日本語を母語とする人のほとんどはリスニング力よりスピーキング力がかなり劣っているからです。リスニング力は、スピーキング力と同じかそれより上をめざしてください。TOEIC®リスニング&リーディング(L&R)のスコアを持っている方も参照いただけるよう、おおよその対照スコアを( )に記載しています。

もし自分のスピーキング力をCEFRレベルで、わからないようであれば、無料ですぐにチェックできるアプリもあります。

そして自分の実力とやりたいこととのギャップを把握し、どんなふうにスキルアップするか考えましょう。たとえば社会人になって仕事で英語を使っていなくて数年たっている人があるとき年間プロジェクトの英語会議に出てくださいと言われたら、最初はA2、そしてなるべく早いうちにB1にはなりたいですね。

もちろん、実際のウェブ会議でどんなやりとりができるかは、業務知識や経験、立場や人間関係、ものおじしないタイプかなどの個人差も影響しますので、上の表はあくまで学習の目安として考えてください。

2.レベルに合わせインプット学習とアウトプット学習のサイクルを回す

スピーキングで「やりとり」のスキルを上げることは、「知っている・わかる」状態を「言える」状態に変えていくプロセスとも言えます。

それにはインプットとアウトプットの繰り返し学習がおすすめです。ここで言うインプットとは、リスニングを中心に、聞く、読む、自分で言ってみるという学習です。アウトプットは、オンライン英会話などでリアルな会話練習をすることがおすすめです。

スピーキングを要素分解すると次のようになります。

・語彙、文法、音声など言語活動に関わること
・言語能力で足りない部分のジェスチャー・言い換えなどによる補足
・相手との関係性や場所・状況・文化の違いなどへの対応
・論理的に一貫性のあるメッセージを組み立てる

基礎段階の人は知っている語彙や文法などの言語活動が中心になりますが、とにかく個人学習でも、文章を組み立てて口に出して言ってみましょう。そして実際の場面で使ってみましょう。うまく口から出てこなかったら、最初は言いたいことをメモしておいて身振りをつけて言ってみるところから始めても大丈夫です。そうした練習を繰り返しているうちにアプトプットできる範囲が増え、スピードが上がってきます。上達してきたら2番目以降の要素もだんだん意識できるようになります。

リスニングを要素分解すると次のようになります。 ・単語・言い回し・文法・文章の語順を踏まえた内容を流れてくるスピードのまま理解する
・英語の単語や表現が聞き取れなくても文脈から推測する

聞き取れない原因は主に次のようなものです。

・英語の語順や音やリズムに慣れていないため、文字では知っているのに音で理解できなかった
・固有名詞が聞き取れなった
・知らない単語や言い回しがあった

リスニングの上達には、聞き取れない原因を特定すると効率がいいです。基礎段階の人は、あちこち手を広げるより、自分のレベルにあう、ゆっくりはっきりした会話のやりとりのリスニング教材を繰り返し聞いて、使い切ることをおすすめします。使い切るというのは、聞いて、聞き取れなかった部分を特定し繰り返し練習することです。聞くだけでなく文字で確かめ、自分で発音をまねてみます。使えそうな文章や表現は、オンライン英会話や社内のグループ英語研修でどんどん使いましょう。

このインプット・アウトプットの繰り返しで、頭のなかで音声が処理できるようになるのです。リスニング教材はこの原理を反映し、発話練習(リピーティングやシャドウイング=聞きながら同時に口に出して言うこと)がついているものがおすすめです。

ここまで書くと、もうお気づきでしょうが、英語の「やりとり」が上手になるためには、リスニングとスピーキングを、インプット学習とアウトプット学習の繰り返しで一緒に学習したほうが効率が良いのです。ときどき「リスニングが上達してからスピーキングをのばしたい」という方がいますが、リスニング力とスピーキング力は表裏一体なので同時に学ぶことをおすすめします。

インプット学習は、毎日朝食後の仕事の前、アウトプット学習は、週数回のオンライン英会話などの実践機会、というように習慣化して自分のスケジューラーに入れてしまうのがいいでしょう。

3.ウェブ会議では音声以外の手段も活用

CEFRは、言語を使って実際に何ができるかという行動指標を示しています。数年前に「オンラインでのやりとり」というカテゴリができました。実はこのカテゴリでは、スピーキングとライティングを区別していません。なぜなら、しゃべり言葉を文字にしたようなチャットのやりとりや、ウェブ会議でのテキスト情報や図解の併用、リンク情報の共有など、多様なメディアが同時に使われているからです。

ということは、英語のウェブ会議で、スピーキング、リスニング以外にもいろいろな手段を使わない手はないですね。例えば、こんなことを試してみてはいかがでしょう。

・発言を差し込みたいときの手上げサインを送る
・補足したい情報をチャットで送る
・スライド資料を使って文字・画像で視覚でも説明する
・画面共有で議事録作成を同時に進めて内容の共通理解をする
・発言がテキストで画面に示される機能を使う

会社によって使えるものが違うでしょうから、同僚と「こんな機能をつかってみたよ」という情報を交換しあうのもいいでしょう。ビジネス英語コミュニケーションはウェブ会議を通してどんどん進化していますね。

次回のテーマは「ローコンテクストでいこう」、異文化コミュニケーションのお話です。

参考資料:
「英語到達度指標CEFR-Jガイドブック」投野由紀夫編、大修館書店 2013
COMMON EUROPEAN FRAMEWORK OF REFERENCE FOR LANGUAGES: LEARNING, TEACHING,ASSESSMENT
TOEIC® Program各テストスコアとCEFRとの対照表