• 『7.2 新しい別の窓』(C)AbemaTV,Inc.

――ターニングポイントの1つに挙げられた『72時間ホンネテレビ』から、現在も『7.2 新しい別の窓』と続いていますが、新しい地図の3人の番組は、どのように始まったのですか?

あれだけ国民的なアイドルグループが解散することになって、お三方が事務所を退所するというのに触れたときに、当然3人の一挙手一投足や、次に何をやるんだろうというのは国民の関心事だと思って、純粋にたくさんの人の心に訴えかける番組になると思ってオファーしました。

最初はインターネットをはじめSNSに触れたこともないようなお三方でしたので、SNSから世界とつながるといったテーマで、いろんな意味でドキドキしたり、ちょっと不安になったり、一緒に喜んだりするみたいな形で番組の編成としてもすごく拡張性があったし、ドキュメンタリー性もあって、予定不調和な感じがすごく良かったんだと思います。

――『オオカミくんには騙されない』に代表される恋愛リアリティ番組は、ABEMAさんの代名詞にもなっていると思います。

『オオカミくん』は、テレビ朝日から出向してくれているプロデューサーたちを中心にバラエティをいっぱい企画開発する中で、女性が見るものが少ないというお題があったんですね。そこで、女性向けの恋愛バラエティというのを方針として狙いに行ったんです。雑誌のカリスマカップルが、渋谷だとトップクラスの俳優さんより人気になるみたいな現象が昔はあったんですけど、媒体のパワーバランスが変わってそれぞれのSNSの中に留まって、個別の熱狂みたいな形になっていたので、メディアとしてそれを再解釈して捉え直すという切り口が1つ。

それと、地上波にも恋愛バラエティがたくさんあったけど、一般の方が出演する中での難しさとか、おそらく世帯の視聴率を獲るために若者だけの数字だと担保できなくなったのではないか、ということもあって、世の中に恋愛番組の枯渇感があると思ったんです。それから、『今日、好きになりました。』(17年10月16日~)も多くの若者に視聴される番組となり、この狙いが当たったという感触がありました。

  • 『オオカミくんには騙されない』(C)AbemaTV,Inc.

――恋愛リアリティに加え、元フジテレビの藤野良太さんがプロデュースするドラマでも、若者層を強く意識している印象があります。

藤野さんとはこれまで『僕だけが17歳の世界で』『17.3 about a sex』『30までにとうるさくて』という3作品をやっているんですが、どれも若者に向けて思いっきり放ちたいという思いが藤野さんからありました。特に、『僕だけが17歳の世界で』については、以前の月9ドラマのような恋愛への憧れが、恋愛リアリティ番組に代わっている現状把握があって、そんな若者に対してどんなフィクションであればより大きく心を動かしていけるだろうとなったときに、リアリティではなく、現実からエスケープできるような強い没入感がもった素敵な恋愛SF作品なら求められるのではないかという企画の成り立ちでした。

――そうした若者をターゲットとする企画を多く出していく中で、渋谷を本拠地に構えるという意味は大きいのでしょうか。この街の空気を感じ取ることでコンテンツにもつながっていくという意識はありますか?

そうですね。もともと藤田が、若い人がいきいきと働く象徴的な場所として捉えていますし、こういうエンタメコンテンツ産業に軸足を置いて働く中で、やっぱりクリエイターのみんなが、いわゆるビジネス街で決まった時間に駅からオフィスに向かって行進していくような環境より、渋谷という雑多さや混沌さみたいなものがある中で新しいクリエイティブを開発するほうがいいのではないかというのは、考えとしてありますよね。

  • 『僕だけが17歳の世界で』(C)AbemaTV,Inc.

■「最高品質か、唯一無二か」でないと生き残れない

――現在27のチャンネルを運営されていますが、編成局長として掲げる全体の編成方針は何ですか?

インターネットの利便性を生かして、新たな若いファンを獲得できるようなものや、コアな熱狂があって世の中にまだ敷き詰められていないもの、そういったものが集まる「無料の神アプリ」と言ってもらえるものを目指しています。その中で、「〇〇と言えば、ABEMAだよね」と視聴者に言ってもらえるように各ジャンルを進化させています。

また今後はグローバルで品質に対する水準が上がっているので、「最高品質か、唯一無二か」でないと生き残れないというところと、昨今のスポーツライブのインターネットでの潮流はすごく重視していますね。

――各チャンネルに責任者がいらっしゃいますが、チャンネル同士で切磋琢磨してやっているような形でしょうか?

当然叩き出す数字で「すごいな、あの番組」と触発し合っている感覚もあると思いますが、捉える熱狂が違ったり、それぞれのやり切りたい世界観も違ったりするので、どちらかというと外に目が向いている人のほうが多いかもしれないですね。

――編成フロアの大部屋を見ていると、テレビ局みたいに「視聴率〇〇%獲得!」みたいな張り出しがありませんよね。

あれって、シンプルだけどすごく効くと思うんですよ。誰が見ても分かる指標のもと、局にひとたび足を踏み入れたら、どの番組に今一番勢いがあって、熱狂をつかんでいるかが一目瞭然で分かるというすごい仕組みだと思ったので、あれを真似させていただいていろいろ掲出していたこともあったんです。ただ、コロナ禍で働き方が変わったこともあって、今は「〇〇と言えばABEMA」といういかに自分たちの領域で熱狂の輪を広げていけるかというのを追求するポスターを掲げてますね。