――ここまで伺った『ゼウス』『神さまぁ~ず』『さまぁ~リゾート』『さまぁ~ずチャンネル』『夜会』『レベチ』のほかにも『有吉ダマせたら10万円』(フジテレビ)など、水野さんは手がけてきた番組のジャンルが本当に幅広いですよね。
僕は結構、他の演出家の人たちに比べて、小器用なほうだと思うんです。それがあんまり良くないっていうのもあるんですけど(笑)、『さまぁ~リゾート』みたいな情報番組もできますし、『さまぁ~ずチャンネル』みたいなバラエティも好きですし、『夜会』みたいにプライムタイムでファミリー向けに作るというのもできますという、その番組によって使い分けるというのをやってますね。
――まるで有吉さんのように!
いやいや(笑)。でも、もちろんそれぞれの番組にこだわりはあります。『さまぁ~リゾート』だったら土曜の夜に疲れてテレビを見た人にリラックスしてもらいたいし、30分で2回は笑ってもらいたいというのを意識してますし、コロナ禍でなかなかいいロケができていないですけど、ただ情報を見せるだけじゃないという工夫は、いろいろしようと考えています。
――他にもいろいろな番組を手がけてきたと思いますが、特に印象に残る演者さんを挙げるとすると、どなたになりますか?
パッと思いつくのは、東野幸治さんですね。特番で何回かしかご一緒してないんですけど、めちゃくちゃすごいなと思うんです。我々が「だいたいこのくらいの上がりだな」って想像しながら作ったVTRを、2倍3倍にして面白くしてくれる。東野さんにMCをやってもらった『最強文化系コロシアム 天下一文道会』(TBS)という番組で、ホリエモンさんとDaiGoさんがババ抜きをやったんですけど、その2人のイジり方が抜群にうまかったんですよね。東野さんはよく、番組に求められることを淡々とやるだけだと言って「自分はチーフADみたいなもんです」とおっしゃるんですが、こちらからしたらめちゃくちゃ助かるんです。
――『ドッキリGP』(フジテレビ)って、スタジオ収録のスケジュールの関係でたまにVTR中に東野さんのワイプがないときがあるんですけど、やっぱりあそこにいるといないで全然面白さが違いますもんね。
それってすごいことですよね。しかも、BS-TBSで『アドベンチャー魂』という冒険する番組も始まって、運動神経がいいからトライアスロンとかもやってるし、『カリギュラ』(Amazonプライム・ビデオ)で鹿狩ってるし、同じ奥様と2回結婚してるし、娘さんとYouTubeでラジオやってるし、『街録ch』にも出てるし、その生き様がめちゃくちゃ面白いですよ。僕の書いた企画書には結構、東野さんの名前がMCで入ってるんですけど、なかなか通らなくて(笑)
■社内で『イッテQ』演出について語る会
――今後こういう番組や作品を作っていきたいというものはありますか?
何も考えなくていい「バカだなあ」って言われるような、ただただ面白いバラエティを作りたいのと、もう1つは、世の中には埋もれているすごい人がいっぱいいるので、そういう人たちを紹介する番組をやりたいなと思いますね。今、HIKAKINを見て育って、ヒューマンビートボックスのすごい子たちがいっぱいいるんですよ。彼らが世界でヒューマンビートボックスの対決をやる動画は1,000万回再生とかになってて、YouTubeとの相性がすごくいいから、テレビでも『フリースタイルダンジョン』みたいにヒューマンビートボックスの対決番組をやりたいと言ってるんですけど、あんまりピンときてない人が多くて(笑)。『レベチ』をやって、世の中には才能にあふれた人がいっぱいいるんだなあと思ったんですよね。
――ご自身が影響を受けた番組を挙げるとすると、何ですか?
昔『SRS』っていうフジテレビの格闘技番組があって、100人組手をやる八巻建弐さんという空手家の方のドキュメンタリーがあったんです。大学に落ちて、浪人しようか就職しようか悩んでるときにそれを見て、「俺、こんなので負けてる場合じゃないな」と思って、人生が変わったんですよね。
そういうのもありつつ、この業界に入ってから一番すごいなと思ったのは、『(世界の果てまで)イッテQ!』(日本テレビ)でした。あまりにもすごいと思ったから、うちの会社で(演出の)古立善之さんについて語る会を開催したくらい(笑)
――ご本人のいないところでですか!?
もちろん(笑)、うちの会社は古立さんと1回も仕事したことないですから。『イッテQ』だけじゃなくて、『嵐にしやがれ』『月曜から夜ふかし』についても、みんなで集まって何がそんなにすごいんだというのを話し合ったんです。古立さんのことを知りたすぎて、『さまぁ~リゾート』の編集所のミキサーさんを『夜ふかし』と同じ人にしてもらって、「今週の古立さん、どうだったの?」って聞いてたくらい(笑)。ナレーションのうまさと、人を嫌な気持ちにさせない編集、そしてスピード。すべてにおいてめちゃくちゃすごいじゃないですか。一時期、テレビのディレクターがみんな真似してましたからね。
――いろいろお話を聞かせていただき、ありがとうございました。最後に、気になっている“テレビ屋”をお伺いしたいのですが…
『ゴッドタン』や『あちこちオードリー』(テレビ東京)をやっている斉藤崇さんです。佐久間(宣行)さんの右腕みたいな存在で、『キングちゃん』(同)、『チャンスの時間』(AMEBA)やNetflixで今度やる『トークサバイバー! ~トークが面白いと生き残れるドラマ~』もやって、千鳥さんからの信頼度がすごく高いんですよ。今我々の世代で一番番組を抱えてるんじゃないかなと思います。めちゃくちゃ仕事してるから、「どうやってやってるんですか?」って聞いてみたいです(笑)