阿部さんに一番感謝しているのは、番組の作り方だけでなく『ニュースキャスター』で、たけしさんと一緒に仕事をさせてくれたことですね。コロナの前まで11年間、生放送終わりで個室の焼肉屋に反省会に行くんですが、こんなところに放送作家なんて連れて行く必要ないんですよ。でも、阿部さんが初回放送終わり、「かつらちゃん、勉強になるから来なさい」と言うので、「怖いです」って言ったんですけど無理やり連れて行かされて(笑)。それから11年毎週たけしさんと夕ご飯を食べながらお話を聞けたのが、めちゃくちゃ勉強になりました。
――たけしさんのお話、すごく興味あります。
たけしさんって冗談でなく、とんでもない怪物なんです。『ニュースキャスター』の反省なんて5分くらいで終わるんです。「刮目NEWSでこんなネタ用意してるんです」って僕らがプレゼンすると、「なるほどね。こことここ間違ってんな。これは構成的に後ろがいいな」って、瞬時に構成を直すんです。それで番組の話が終わると、「映画でめちゃくちゃ面白い発想があるんだけど…」ってシナリオの話を始めたり、夜中の2時過ぎて「今から帰って小説書かなきゃ」って大学ノートにメモしてたり、「豊臣秀吉の新しい説を歴史学者からプライベートで聞いたんだ…」とか「こないだ東大受験の数学の問題やったんだけど…」とか。ものすごい読書量で、分厚い科学の本や宇宙の本を読んでいて、数学とか科学が好きなのはテレビを見ている人も分かると思うんですけど、スポーツも異常に詳しい。野球やボクシングはもちろん、アメフトにサッカーも。若手芸人のネタも全部知ってるし、CSもよく見てるし。
一方で、「甘栗の甘くする機械にイチゴ入れたらどうなるんだろう」とかくだらないこともノートに書いてあるんですよ(笑)。70歳を過ぎているのにインプットとアウトプットの量が半端ないんです。よく、さんまさんが「いつ寝てるんですか?」と言われてますけど、たけしさんも本当にそうなんですよ。
――イーストの角井英之さんも『アンビリバボー』のストーリーテラーの収録の際、取り上げるVTRの内容を相当知っていると言っていました。
引き出しが縦横無尽にあって、こんなとんでもない“知的モンスター”は見たことないです。やっぱり運だけでは売れないんだなって思いましたね。めちゃくちゃ努力してるし、めちゃくちゃアクティブなんですよ。ひと仕事終えて、夜中の2時から小説書く若手芸人なんていないですもん。
藤井さん、阿部さん、テレ東の伊藤Pの3人には、下っ端のネタ出しからチーフ作家をやらせてもらうようになって、放送作家のスキルをちゃんとつけてもらったので、僕の30代を作ってくれた人です。伊藤Pはいい兄貴ですけど、藤井さん、阿部さんは怖い先輩という感じで、局ですれ違ったらいまだに緊張しますね(笑)
――他に印象に残るプロデューサーや演出の方はいらっしゃいますか?
散々、番組に呼んでいただいた『ガチンコ!』を作ったTBSの合田(隆信)さん(現・TBSホールディングス執行役員)や『爆報!THEフライデー』を作ったTBSの大久保竜さん、『おしゃれカンケイ』から『おしゃれイズム』まで、ずっと一緒にやらせていただいてる日本テレビの加藤孝司さん、リーライダーすの李闘士男監督も、初めて会ったときは、どのタレントさんよりもオーラがすごくて、本当に、吹き飛ばされそうになりました。全員、鬼滅で言う“柱レベル”、呪術廻戦でいう特級の戦闘力とオーラです(笑)
■飯尾和樹のリポート術を引き出した“テレ朝・藤井軍団”
――たけしさんのほかに、タレントさんで印象に残る方はいかがですか?
飯尾和樹さんは『シルシルミシル』や『くりぃむナンチャラ』『マネースクープ』という番組で、先輩ですが勝手に一緒に戦ってきた戦友という感じですね。今やどの番組でもリポーターとして大活躍されていますが、飯尾さんの天才レポートの面白さを発見したのはテレ朝の藤井さんで、『シルシルミシル』が最初だったと僕はいまだに思ってます。
当時、世間の方は「『(笑って)いいとも!』に出てた地味な人」くらいの感じだったと思います。でも、藤井軍団はずっと「飯尾さん面白いよね」と会議で言っていて。リポーターをやってもらったら、八ツ橋の工場見学に行くときに「八ツ橋は 2個で十分 飯尾です」ってカメラ下からぬっと登場して、自己紹介したんです。会議でプレビューしながら「やっぱり飯尾さん天才だなあ」って改めて確信してしまいました。それからどんどん出てもらううちに、飯尾さんのリポート技術が各局にバレはじめちゃったんです。
――でも、『かりそめ天国』の「飯尾No.1キャバ嬢」のリポートは、別格ですよね。
飯尾さんのことを一番分かってるテレ朝・藤井軍団ですからね。『シルシルミシル』から『かりそめ天国』に続くあの面白さが広がってるんだと思ってます。飯尾さん本人がよその現場で、「『かりそめ天国』とか『シルシルミシル』のときみたいな感じでやってもらっていいですか?」って頼まれると言ってましたから(笑)
僕は新宿出身なので、やっぱり東京の芸人さんに愛着があるんです。たけしさんもさまぁ~ずさんも、飯尾さんも、そして『志村&鶴瓶のあぶない交遊録』でお世話になった志村けんさんも全員東京。最近では、ラランドのサーヤさんと文化放送でラジオ(『卒業アルバムに1人はいそうな人を探すラジオ』)をやっているんですが、彼女も八王子ですからね。なにかやりやすいというか、勝手に僕だけかもですが、波長が合ってます。
――この並びで、サーヤさんが入ってくるんですね!
文化放送の加藤慶プロデューサーから、ノブコブの徳井(健太)くん、乃木坂の秋元真夏ちゃん、相席スタートの(山崎)ケイちゃんで帯の番組をやろうと思うので、どの曜日がいいかと言われたんです。それで、僕は最初「徳井さんがいいな」って言ったんですよ。ラジオのパーソナリティと作家って密接して仲良くならないといけないから、世代的にも近いし、入りやすいだろうと思ったんですけど、たまたまその曜日が僕のスケジュールが合わなくて、それだったらサーヤさんがいいかなあと思って。さまぁ~ずさんに面倒見てもらって、飯尾さんと戦友で戦ってきたんですが、先輩でも同世代でもない年下の人とやるっていうのがなかったので、やってみようかなと。
そしたら、年下なのに毎回いじられるんです(笑)。「雑魚キャラの癖に生意気な車に乗ってる」とか言ってくるし、「かっつぁん」って呼ばれるし。プロデューサーもディレクターもいつも怖い人ばかりと仕事してきたので、根っからの怒られ屋なのかもしれないですね(笑)
――サーヤさんは、どんなところが魅力ですか?
まずグイグイしてないんです。たけしさんも志村さんもさまぁ~ずさんもそうなんですけど、毒舌なんだけど息の根を止めない、寸止めな感じが東京風なんですよね。
それと、20くらい年齢が離れてるんですけど、僕がずっと敬語使われるとやりづらいのが分かってるんでしょうね。あえてガンガンいじってくれてます。精神年齢もあっちのほうが上なのか、僕も知らぬまに「サーヤ姉」とか言ってますし。