――今後こういう番組を作っていきたいというものはありますか?

具体的にはまだ固まっていないのですが、昨年末、誰もが認めるテレビ界のレジェンドであるフジテレビの片岡飛鳥さん(『めちゃ×2イケてるッ!』総監督)と初めてお会いして、がっつり食事をしてお話しする機会があったんですよ。『ホンマでっか』に玉野鼓太郎くんという若きエースディレクターがいて、飛鳥さんの最後の弟子なんですけど、彼に飛鳥さんが「北本かつらって名前知ってるけど会ったことないんだよ。1回会ってみようかな」と言ってくれてみたいで、「あーまた怖い人かよ!」と思ったんですけど(笑)、緊張しつつ3人で会ったら、お互い新宿出身だと分かって、勝手に僕は打ち解けたのでは?と思いました(笑)

だから今年は、飛鳥さんに企画をぶつけてみたいなぁと。一切歯が立たない結果に終わるかもしれませんが、飛鳥イズムを今まで全く注入してこなかったバラエティの違う作法、文法を学んだ僕が、どれだけ飛鳥さんにぶつけられるか。楽しみでもあるし、自信喪失で勉強し直しの1年になるかもな…とも思ってますが。というより、飛鳥さんのバラエティをまた見たいんです。こうやって企画を見てくれるということは、絶対やられるはずですから。

――これは楽しみです! 一方で最近、YouTubeなどネット配信が盛り上がってきている中で、テレビの役割はどのように考えていますか?

「業界再編成」とか「過渡期」とか、「テレビやラジオは斜陽じゃないか」とか言われていて、それについてどう思いますか?という業界の構造的な話もよく聞かれるんですけど、本当に申し訳ないんですが、そういう難しいことはもっと偉い大御所の方、頭の良い方に考えていただいて、僕は沈みゆく船かもしれないですけど、相変わらずテレビやラジオで頑張らせてもらおうと思ってます。

みんなお世話になっている人との仕事でずっと受け身で流されるままやってきましたが、ここに来て初めてサーヤ氏と番組をやるとか、飛鳥さんに企画をぶつけてみるとか、1回自分のキャリアをリセットして新しい挑戦をテレビでしてみようと思ってます。この間、テレ東の若手ディレクター・古川(智)くんに呼ばれて、フワちゃんの特番(『芸能人飼育バラエティ 視聴者様に飼われたい!』)をやったんですが、去年だったら断ってたと思うんですけど、この流れだからちょっとやってみようかなと思って。これから若い演者さん、若い演出家の方とやるのも僕の今年の課題としています。4月から、ぼる塾やハライチ岩井さんの新番組、深夜ドラマも参加させていただき準備中です! だから業界全体のことを考える余裕は正直全然ありません。すいません…。

――ここに来て、新たなスタートという感じですね。

はい。将来の夢は、ジジイになったレジェンド演出家とプロデューサーを、僕がマネージャーとして売り込んでいくことなんです。今確約取れているのは、伊藤Pと合田さん。藤井さんには「そんなに言うんだったら考えてやるよ」と言ってもらってます。飛鳥さんにはもし企画が通ったら、「こんなこと考えてるんですけど…」って誘ってみようかと。阿部さんも口説こうと思ってるんですけど、リアルに怖いからどうしようかな…(笑)

――ドリームチームですね! バラエティ制作者専用の“やすらぎの郷”的な。

そうですそうです。

■周りが『ごっつええ感じ』に浮気しても…

――ご自身が影響を受けた番組は、何ですか?

『(天才・たけしの)元気が出るテレビ!!』『カトちゃんケンちゃんごきげんテレビ』はもちろんですが、深夜番組が好きで、日テレでやってた『天才どんぐり連合』というのがあったんです。MCが毎週違って、デンジャラスさん、バカルディさん、木村祐一さん、東野幸治さんだったかな…。『電波少年』みたいに、結構過激なことをやってたんですよ。ほかにも、TBSの『いかすバンド天国』に、竹中(直人)さんとビシバシステムの『東京イエローページ』、関根(勤)さん、ルー(大柴)さん、ラッキィ(池田)さんの『ギャグ満点』、テレ東の『ギルガメッシュないと』とかも、普通に見てましたね。

でも、王道はやっぱりたけしさんなんですよ。僕らの世代は『元気が出るテレビ』から『(ダウンタウンの)ごっつええ感じ』に浮気してそっちに行った人たちが結構いたんですけど、僕は最後までたけしさんを見てましたから。

――いろいろお話を聞かせていただき、ありがとうございました。最後に、気になっている“テレビ屋”をお伺いしたいのですが…

先ほどから何度も登場していますが、テレ朝の藤井さんですね。有名な話で、藤井さんがディレクターだったとき、カラオケでADと騒いでたらヤクザみたいな人が「うるせえな!」って来て。でも、局員で手を出せないから「僕を殴ってください」って言ってアゴの骨折れるまで殴られてADを逃してあげたっていう、本当に侠気の塊のような人なんですよ。

しかも、ディレクターとして本当に天才的で、VTRを見てまあまあ面白いなという空気になっても、100個くらいダメ出しするんです。しかも100個、全部納得。いろんなプロデューサーやディレクターを見てきましたけど、日本で一番編集がうまいと思います。

  • 次回の“テレビ屋”は…
  • テレビ朝日・藤井智久氏