ネット拡散を意識した画面構成

――やっぱり気になるのは、レギュラーのシーズン3があるのかというところです。番組ホームページには「シーズン3でお会いできるといいですね…」と書いてありますが、予定はあるんでしょうか?

そうですね。ただ、正直ネタがなくて(笑)。なかなかリサーチが進まないんです。でも、なんとか頑張って放送できるようにしたいと思います。

――冒頭でお話しされた「若者のテレビ離れ」というテーマに戻るんですが、あらためてそれはよく感じますか?

ものすごく感じますね。だから若い人の目に少しでも触れて“試食”してもらうよう、ネットで拡散されることを意識して番組を作るようになりました。ネットって、画面が切り取られて拡散していくじゃないですか。今までは30分番組なら30分トータルで見て面白かったと思ってもらえることだけ考えてたんですが、ネットではどこを切り取られるか分からないので1秒たりとも気が抜けないんですよ。逆に言えば、切り取ってもらえるように画面を面白く作らないといけないと思っていて、さっきの「脳天に響く言葉じゃないといけない」ということにもつながるんですけど、パワーワードがあるとそこが切り取られますよね。そうなるとテロップの仕方とか画面構成も変わります。あとは人形劇の使い方ですね。こんなにかわいい人形がベッドで血だらけになって死んでたら、それは絶対切り取られて回りますよね(笑)。だから、そこを意識した制作をしなきゃいけないと思ってます。

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「広い取材」の重要性

――「テレビの規制が厳しくなってきた」とも言われますが、そのあたりはいかがでしょうか。『ねほりんぱほりん』は、結構過激なテーマを扱っていますが。

ありますね。規制が厳しくなって叩かれるのか、叩かれるから規制が厳しくなったのか、どちらが先なのかよく分からないですけど、そういうのが進んで、自分たちも遠慮が働いてしまうことがあると思います。我々で言うと、やっぱり広く取材できてない回は、ネットで叩かれたり、反対意見を持っている人たちから抗議を受けることがありますね。介護士さんを取り上げた時、「この仕事はこんなに大変だ」という話をしてくれたんですけど、養成する学校の先生とかにしてみたら、ただでさえ人手不足なのに、そういう声を放送されたら困るわけですよ。だから、僕らとしては、先生たちがどう見ているのか、ということも取材しないといけなかったなぁと反省しました。やっぱり広い取材。それがない回は、「やっぱりきたかぁ…」みたいな感じはありますね。

――今後、こんな番組を作りたいという構想はありますか?

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その番組を見たら次にそのジャンルを見たときに楽しみ方が1つ生まれてるという番組をずっとやりたいと思っています。前に『ディープピープル』という、その道のプロ3人が深いトークをする番組をやっていたんですが、ボクシングの世界チャンピオンが登場した時に、畑山隆則さんが「ボディーをやられたら次の日に(血で)コーラ色のおしっこが出る」と言ってたんです。長谷川穂積さんだと、相手の呼吸を読んで吸った時にパンチを打つとか。そういうのを知ってると、次にボクシングを見る時に面白いじゃないですか。かみじょうたけしっていう高校野球通の芸人に、どこを見るかを聞いたら、プレーボールでホームベースの所に集合するときに一番早くに到着するやつはそのチームのムードメーカーで、必ず試合のキーマンになるから注目すべし!とか(笑)。閉塞感でいっぱいのこの時代に、物事のいろんな楽しみ方を提供するのもテレビの役割の1つかなぁと。

――そんな大古さんが、影響を受けたテレビ番組を挙げるとすれば何ですか?

テレビの世界っていいなと思ったのは、小学5年生の時に『ベルトクイズQ&Q』(TBS)という番組に出たんですよ。広島県予選を突破して夏休み子ども大会に出て、押阪忍さん司会で。「ミリオンステージ」で自転車を獲得したんですけど、その時に画面に映らないところが、面白いなと思いましてね。照明やカメラはもちろん、打ち合わせスペースがあったり、ディレクターさんに事前に学校生活のことを質問されたり、本番のカウントダウンも「5、4、3」まで言うけど、「2、1、0」は言わないんだとか(笑)。それが原体験です。

あと、作り手として影響を受けたのは、『探偵!ナイトスクープ』(ABCテレビ)ですね。秘書の人が「私は◯◯で悩んでます」って相談の依頼を読むじゃないですか。そこで一時停止して、自分だったらどうやるかなぁと30秒くらい考えるんですが、大抵あちらのほうが面白いです(笑)。一般の人に寄り添うという姿勢や、真面目だけじゃなくて笑えてなんぼみたいなところは、『ねほりんぱほりん』の目指すところでもあります。人の喜怒哀楽を描くというテーマも共通しているので、ものすごい影響を受けています。本当に大好きで、1回、観覧で見に行ったことがあって、もう最高でした(笑)。松村邦洋と仲良しなので、客席から目が合ったら驚かれましたけど(笑)

――いろいろお話を聞かせていただき、ありがとうございました。最後に、気になっている番組をお伺いしたいのですが…

『関ジャム 完全燃SHOW』(テレビ朝日系)です。バラエティに富んだ解説陣が奥深いプロの技の公開する中で、音楽の魅力を因数分解したり解体したりしながら伝えてくれるというのが、毎回面白いですよね。特に感動した回は、スタジオミュージシャンのすごさを伝える水野良樹さんの持ち込み企画。サイコロを振って出た言葉の組み合わせで、いきものがかりの「ありがとう」を即興アレンジするんですが、「派手な」×「お祭り風」でサンバ調に、「真夏の」×「逃亡風」でルパン調にと、いとも簡単に変わっていくのを見せつけられて、すごいなと思いました。

次回の“テレビ屋”は…

テレビ朝日『関ジャム 完全燃SHOW』プロデューサー・演出 藤城剛氏