注目を集めるテレビ番組のディレクター、プロデューサー、放送作家、脚本家たちを、プロフェッショナルとしての尊敬の念を込めて"テレビ屋"と呼び、作り手の素顔を通して、番組の面白さを探っていく連載インタビュー「テレビ屋の声」。

今回の"テレビ屋"は、あす9日にスタートするフジテレビ系月9ドラマ『コンフィデンスマンJP』(毎週月曜21:00~ ※初回30分拡大)の脚本を担当する古沢良太氏。さまざまな業界を舞台に繰り広げるスケールの大きな作品だが、その背景には「最近、こじんまりしたドラマが多い」と感じることがあったという――。

勝算なく突っ込んだ

001のalt要素

古沢良太
1973年生まれ、神奈川県出身。東海大学卒業後、02年に『アシ!』で第2回テレビ朝日21世紀新人シナリオ大賞を受賞してデビュー。『ALWAYS 三丁目の夕日』(05年)で第29回日本アカデミー賞最優秀脚本賞、『探偵はBARにいる』(11年)で第35回アカデミー賞優秀脚本賞を受賞。主な映画作品に『キサラギ』(07年)、『寄生獣』シリーズ(14・15年)、『エイプリルフールズ』(15年)、『ミックス。』(17年)など。テレビドラマでは、『相棒』シリーズ(テレ朝)、『リーガルハイ』シリーズ(フジ)、『デート~恋とはどんなものかしら~』(同)など。

――当連載に前回登場したテレビ東京『家、ついて行ってイイですか?』の高橋弘樹さんが、「古沢良太さんが、大好きです。絶対に比べてはいけない次元なんですけど、僕も普段から、世相に皮肉を入れながら笑い作るのが好きで…『リーガルハイ』は、本当にすごいし大好きな脚本でした」とおっしゃっていました。

ありがとうございます。『家、ついて行ってイイですか?』は、僕、結構早い段階から見てますよ。レギュラー化する前から拝見しています。

――バラエティ番組はご覧になる方ですか?

昔ほど見なくはなりましたけど、子供の頃から好きですね。テレビっ子だったので。

――早速、『コンフィデンスマンJP』のお話を伺っていきたいのですが、『リーガルハイ』『デート~恋とはどんなものかしら』を一緒にやっていたフジテレビの成河広明さんと、長い期間にわたってやり取りして、今回の作品が生まれたそうですね。

2年くらい前から、また何かやりましょうという話をしていました。もともとコンゲームというか、詐欺師モノはいつかやりたいと思っていたんですけど、作るのが大変なので二の足を踏んでいたんです。でも、成河さんが映画『スティング』(73年、米)が大好きで、「僕は入社試験でも『スティング』みたいなものが作りたいんだと熱弁したので、一緒にやりましょう!」と説得されて、じゃあやろうかなと思った次第です(笑)

――詐欺師モノをやってみようと思ったきっかけはあったのですか?

特に、主人公のダー子を作ったのは、世の中がモラルとか倫理に対して厳しすぎるんじゃないかと日頃思っていたので、そういう常識やモラル、もっと言えば法律とも全く関係なく生きている人を描きたいと思ったのが理由です。そんなダー子を際だたせるために、正反対キャラのボクちゃんが生まれました。でも、詐欺師というのは、誰がどう考えても悪い人なので、"愛されるべき詐欺師"にするにはどうしたらいいのかというのは、苦労した点ですね。

――他にも、脚本を書くにあたって難しかった点はありますか?

1話完結で毎回悪いお金持ちをあっと言わせる手段で爽快に騙すというストーリーを10本作ろうというのがむちゃな話で…(笑)。騙す手口のバリエーションを考えるのは難しいとは思ってたんですけど、勝算なく突っ込んでいきました。「そんな手じゃ騙せないよ」って思われたら人物がすごくバカになってしまうし、もっと言えば、「こう書いたらお客さんはどう考えるだろう」っていう視聴者との駆け引きも考えながら書かなければいけなかったですからね。あとは、騙す相手をすごく悪いやつにしないと、主人公たちが悪く見えすぎてしまうので、毎回のゲストをいかに悪くするかというところは苦労しましたね。

  • 002のalt要素

    『コンフィデンスマンJP』(フジテレビ系、4月9日スタート、毎週月曜21:00~ ※初回30分拡大)
    コンフィデンスマン(信用詐欺師)のダー子(長澤まさみ)、ボクちゃん(東出昌大)、リチャード(小日向文世)が、毎回さまざまな業界の華やかな世界を舞台に、壮大で奇想天外な計画で、欲望にまみれた人間たちから大金をだましとるストーリー。 (C)フジテレビ

結局YouTubeが一番参考になる(笑)

――取材はかなりされたんですか?

最初はリサーチ会社の人に頼んで、いろんな詐欺師の手口などを集めてもらったんですけど、そんなちゃんとした詐欺師の話じゃなくて、手口は荒唐無稽で非現実的なものでいいなと思ったんです。有りもしない物を有るようにして売るというのが基本的な手口なんですけど、それを追求していくと、じゃあ本物って何かというのがテーマになってくることが多くて。例えば「家族編」のときは、何をもって家族というのかとか、本当と真実ってなんだろうということを考えさせられるようになっていると思います。

取材で言うと、毎話ある種の"業界モノ"みたいにしているので、「スポーツ編」だったらその世界やクラブ経営といったものを調べたりしますね。他にも、古代遺跡、美容、美術とか、それぞれの業界で有名でお金をすごい儲けてる人を調べると、そういう人ってみんな講演とかしてるんですよ。で、大体YouTubeにあがってる(笑)。それを延々見たりする感じなので、今でも僕がYouTubeを見ると、すごい胡散(うさん)臭いような学者さんが荒唐無稽な説を一生懸命論じている動画とかがどんどんレコメンドされてくる状態です(笑)

――あまり足を運んで取材されるタイプではないんですね。

そうですね。やっぱり、YouTubeが一番参考になるという結論に達してしまったんです(笑)。映像で分かるし、普段入れないような場所も誰かがアップしてくれたりしますからね。

――詐欺師の世界を描く中で、何か決めていたルールはありますか?

『ルパン三世』のように、変装した人の顔がベリベリベリって剥がれて「実は私でした」って正体を明かすのは、最初にやらないと決めました(笑)。それはないだろうって(笑)。あと、騙すって「虚と実」みたいなテーマで哲学的な要素のあるドラマになると思ったので、哲学者風に名言を言うところから、物語を始めてみようと思いました。みんなが本当と思ってることが事実なのか?っていうようなことを言ってタイトルに行くということを決まりごとにしたんですけど、途中で後悔しちゃって。ストーリーを考えなきゃいけないのに、名言とか探してる場合じゃないなって(笑)

――その他に意識したことはありますか?

とにかく暗くならないよう、明るく痛快にというのは考えています。1話1話が単独の話になっていて、あまり前後の話に相関関係がないようにしているので、放送される順番で起こる出来事は、必ずしも時系列ではないという含みを持たせたかったんです。だから、「あれはいつ起こったんだろう?」と思って見てほしいと思います。

僕は、『ルパン三世』の原作漫画が好きなんですけど、後半になるとアニメの影響を受けて登場人物たちの関係性が固定されてくるけど、前半はそうではなくて、各話ごとに人物設定や関係性が違ったりする。そういうことができたら面白いなと思って、続きモノにしないという挑戦もありました。あんまり人がやっていないことをやって、新しいドラマにしたいと思っているので。