テレビ解説者の木村隆志が、先週注目した“贔屓”のテレビ番組を紹介する「週刊テレ贔屓(びいき)」。最終回は、2018年1月のスタートから267回にわたる当連載の総括をしていく。

5年3カ月の間に、どんな地上波バラエティが放送され、どんなトピックスや変化があったのか。そして令和の今、誰のどんな番組作りが求められているのか。

  • NHKと民放キー5局

    NHKと民放キー5局

■世帯視聴率を狙う最後のヒット番組

初回の“贔屓”番組に選んだのが、すっかり元日恒例の番組となった『芸能人格付けチェック』(ABCテレビ・テレビ朝日系)。しかし、ゴールデンタイムの本選ではなく、夕方放送の『大予選会』を選んだ。その理由は、「80~90年代の古き良きバラエティを彷ふつとさせる過激な演出が魅力的だった」から。しかし、この『大予選会』は翌年で終了してしまった。

予算の縮小、コンプライアンスの遵守、クレーム予防など、さまざまな背景があったが、当番組に限らずこの流れは現在まで変わっていないだけに、やはり寂しさを感じさせられる。

連載序盤は、『ねほりんぱほりん』(NHK Eテレ)、『水曜日のダウンタウン』(TBS系)、『激レアさんを連れてきた。』(テレビ朝日系)など演出の自由度が高い番組を選んでいた。「希少性が高い」から選んでいたのだが、5年後の今なお放送され、しかも古さを感じさせないところが素晴らしい。

序盤の中で印象に残っているのは、第11回でピックアップした『NEO決戦バラエティ キングちゃん』(テレビ東京系)。「千鳥のMCもブレイクもここから始まっていった」という感があり、企画とアドリブの面白さで勝負するスタイルはYouTube的な楽しさがあった。

レギュラー化直後の2018年10月に書いた『ポツンと一軒家』(ABCテレビ・テレビ朝日系)は、視聴率ランキングのトップに君臨。裏番組の『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ系)を上回る結果に、一時は他局が類似企画を放送するほどだった。2020年の視聴率調査リニューアル以降、コア層)主に13~49歳(に向けた番組制作が進められるようになったこともあり、「高齢層の影響が大きい世帯視聴率を狙う上で最強かつ最後の番組」と言っていいかもしれない。

近年、プロ料理人のジャッジ企画で賛否の声が飛び交う『ジョブチューン』(TBS系)も、数年前まではさまざまな職業を週替わりでフィーチャー。近年は、より視聴者にとって身近な飲食チェーンや食品メーカーをメインに据えた構成に切り替えたが、生き残っていくためのシビアな姿勢であり、賛否を織り込み済みなのだろう。

  • 『ポツンと一軒家』

■お笑い賞レースの熱気はなお上昇中

以下、これまでピックアップしてきた番組名のリストを見て感じたことをランダムにあげていく。

・『今夜くらべてみました』(日本テレビ系)は、どの番組よりもテロップの量と色の種類が多かった
・“タレントが一切食べない”というコンセプトを貫き続ける『人生最高レストラン』(TBS系)はカッコイイ
・長寿の深夜番組に近い生命力の強さを感じた『有吉ジャポン』(TBS系)は実際続いている
・視聴率調査が変わった今、『爆報!THEフライデー』(TBS系)のような番組はもう生まれないだろう
・2020年4月スタートの『土曜はナニする!?』(カンテレ・フジテレビ系)はいきなり緊急事態宣言でロケを封じられてつらそうだった
・『テラスハウス』(フジテレビ)の不幸な出来事以来、恋愛リアリティーショーは地上波で見られなくなっている
・『逃走中』以外のゲームアトラクション型のバラエティは、結局うまくいかない
・動物番組は年を追うごとに保護犬・保護猫の無難な企画ばかりになってしまった
・この1年で親子視聴を狙った昭和がテーマの番組が急増した
・タモリ、上沼恵美子、桂文枝、草野仁…大ベテランMCの番組がどんどん減っていく

これらの番組以外でもう1つあげておきたいのは、お笑い賞レースの存在感。毎年のように『M-1グランプリ』(ABCテレビ・テレビ朝日系)、『キングオブコント』(TBS系)、『R-1グランプリ』(カンテレ・フジテレビ系)をピックアップしていたが、それは賞レースの熱気が色あせないどころか、SNSを味方につけてますます上がっているから。しかし、「生放送の緊張感をベースに、プロたちが人生を懸けて技量を競い合う」というコンセプトは、芸人だけでなく他のタレントや職業でも見せてほしいところだが、まだ成功例は生まれていない。

また、個人的にゲスト出演させてもらった『全力!脱力タイムズ』(フジテレビ系)と『超逆境クイズバトル!!99人の壁』(同)の裏側を書いた“特別編”も印象に残っている。テレビ解説者という立場から番組の裏側を忖度せずに書かせてもらったことで多くの反響を得られたし、良い経験をさせてもらった。