テレビ解説者の木村隆志が、先週注目した“贔屓”のテレビ番組を紹介する「週刊テレ贔屓(びいき)」。第177回は、12日に放送されたフジテレビ系バラエティ番組『超逆境クイズバトル!! 99人の壁』(19:00~21:00)をピックアップする。

「得意ジャンルのクイズに5ステージ連続で正解すれば100万円獲得できる」というコンセプトのクイズ番組で、レギュラー放送スタートから約2年8カ月が経過。放送開始直後から「ゴールデン・プライム帯ほぼ唯一の視聴者参加型番組」という意欲的な企画と希少性でコアな人気を集めていた。

しかし2020年4月、過去に100人の出場者が集まらなかった際、エキストラを参加させていたことが発覚し、約3カ月にわたって放送休止。番組存続の危機に陥ったが、コロナ禍に対応したリモート収録システムを開発して、“99人の壁”というスケールを保ったまま放送を続けている。

今回は幅広いジャンルの音楽クイズが出題される中、筆者は「ドラマソング」というジャンルのチャレンジャーとして収録に参加させてもらった。撮影当時の裏側を交えながら、この番組の現在地点を忖度なしで掘り下げていきたい。

  • (手前左から)筆者、佐藤二朗=『99人の壁』6月12日放送より (C)フジテレビ

人もっと評価されていい“ブレない姿勢”

番組は「平成・令和ヒットソング」というジャンルのクイズからスタート。音楽系YouTuberの高橋宏誠さん(27歳)が登場し、「平成元年~令和2年のCDシングル年間売り上げランキング1位を見せながらクイズを出していく」という形式の1stステージが始まった。

1stステージは「ブロッカー25人と計6問の合計点で勝負する」という形式のクイズで、高橋さんは苦戦しながらも最後の1問でクリア。1stステージで敗退してしまったら、番組の盛り上がりも踏まえて作られた2問目以降が消滅し、放送の尺も危うくなってしまう。現在の構成では、あらかじめチャレンジャーの人数が決まっているため、現場では「頑張って」と応援しているスタッフが少なくなかった。

2ndステージの「TikTokバズりソング」は順調にクリアし、3rdステージも突破したが、このクイズ内容と解答はカット。4thステージの「99人vs1人」早押しクイズで純烈・酒井一圭に阻まれ、惜しくも敗退してしまった。

高橋さんは「出演前の数日間、ほとんど寝ていない」というほど情熱をもって臨んでいただけに、もしリニューアル以前の構成だったら、その人柄や知識の深さを掘り下げて人間ドラマを濃くしていたのではないか。もちろん現在の盛り上がり重視の構成も時流に合っていて、「どちらがいいか」ということではないだろう。『99人の壁』が人間ドラマ重視、盛り上がり重視の2パターン構成できるのは、「希少な視聴者参加型のクイズ番組だから」であり、そのブレない姿勢はもっと評価されてもいいはずだ。

2人目のチャレンジャーはA.B.C-Z・河合郁人で、ジャンルは「男性グループ」。1stステージのクイズは、「人気爆発! 新進気鋭の若手グループを紹介&知られざる秘密」だった。Snow Man、King & Prince、Travis Japan、HiHi Jets、美 少年、Aぇ! group、なにわ男子が紹介され、河合は5問すべて正解して順当に突破。2ndステージは、人気男子グループのミリオンヒット曲を歌い上げるカラオケ問題で、河合、AKB48・武藤十夢、純烈・酒井がそれぞれ得意の歌を披露し、危なげなく突破した。

しかし、河合は3rdステージの「6組のグループのうちメンバーが多い5組を選べ」というババ抜きサドンデスクイズで敗退。「間違えるかもしれない」という想定はしていただろうが、盛り上がる4thステージ以降を逃したことで、現場のディレクターたちとクイズ作家は残念だったのではないか。

■手間を惜しまずアニソンから大量出題

ここまで2時間の中、約50分が過ぎたところで、「99秒の壁 アニソン団体戦」がスタート。「芸能人3人(声優・古谷徹、中川翔子、桜・稲垣早希)がレコード会社関係者と3vs3で戦う」という実験的な構成が面白い。

放送されたクイズの数は、アニソンの作品当て14問、歌詞の穴埋めカラオケ6問、アニソンアンケートランキング当て12問、アニソン早押し6問。権利関係などの手間を惜しまず、こんなに多くのアニソンを放送し、アニメファンを楽しませていた。

また、クイズの合い間にレジェンド声優の古谷が「アムロ、99秒の壁行きま~す」のほか、「キャラクター七変化」と題してこれまで演じた役の名ゼリフを次々に再現。カラオケクイズでは、主人公の声優を務めた『聖闘士星矢』の主題歌「ペガサス幻想」を歌ってネット上を賑わせた。

そして最後に、「ドラマソング」というジャンルで、ドラマ解説者の筆者が出演。1stステージは「10問連続ドラマイントロクイズ」で、先行のブロッカーは8問正解した。後攻の筆者は「10問中2問しか間違えられないの?」と少し焦ったが、無事に9問目で正解数8問に並んで突破。

2ndステージは「ヒットドラマの主題歌と主演女優を正しくつなぐ」線つなぎクイズ。問題の難易度は低かったが、ヒットドラマの主題歌と主演女優のバリューがあるだけに、土曜ゴールデンの放送にふさわしいクイズだった。3rdステージはカットされたが、これは朝ドラ主題歌とアーティストに関するクイズで、筆者には簡単な問題だった。

4thステージは、「3つの画像ヒントから正解を導き出す」早押し3ヒントクイズで、何とか突破。ただ、以前100人がスタジオに集まって対決していたときのような「99人vs1人の対決」という熱気を感じられず、少し寂しかったのも事実だ。仕方がないとは言え、コロナ禍が落ち着いたら、ときどきでいいから、あの熱気を再現してほしいと思ってしまう。