テレビ解説者の木村隆志が、先週注目した“贔屓”のテレビ番組を紹介する「週刊テレ贔屓(びいき)」。第187回は、21日に放送された日本テレビの情報バラエティ番組『ゼロイチ』(毎週土曜10:30~)をピックアップする。

「トレンドや次世代のスターを“ゼロイチ”で生み出す」というコンセプトで今年4月3日にスタートし、まもなく5カ月になる。

はたして指原莉乃、松丸亮吾、石川みなみアナというフレッシュな顔ぶれは機能しているのか。裏番組のライバル『王様のブランチ』(TBS)との比較も含め掘り下げていきたい。

  • 『ゼロイチ』に出演する(左から)石川みなみアナ、指原莉乃、松丸亮吾

■土屋太鳳と宮下草薙が情報寄りの街ロケ

番組は「ゼロイチ経験旅」というロケ企画からスタート。案内役の宮下草薙がゲストに土屋太鳳を招いて、「今、住みたい町」の東京・阿佐ヶ谷をめぐるという。「おうちでお出かけ気分をご堪能ください」というナレーションがあったように、コロナ禍の現状を踏まえたコーナーだが、そもそも土曜午前中はロケ番組が渋滞気味だけに、この番組ならではの試みがほしいところだ。

まず3人は住宅街の開運スポット・馬橋稲荷神社で、「鳥居の昇り龍をさわる」「開運の鈴で柏手を打つ」「難除けの宮神輿を見る」などを体験。続いて、栽培・収穫体験ができる成田西ふれあい農業公園へ行き、夏野菜やハーブなどの畑を見たあと、とうもろこしの収穫体験を行った。土屋が穫れたてのとうもろこしをかじり、「おいしい。食べたらもう消化されてる感じです」とリポートすると、すかさず宮下が「早くトイレ行ってください」とツッコミを入れて笑いを誘ったものの、ここまでゲストの魅力や笑いにつながるトークは少なく、情報寄りの構成・演出に見える。

だからこそ気になったのが、「杉並区民のみ体験可能」「撮影のため特別に収穫しています」の文字。視聴者が体験できないことを紹介するのなら、もっとゲストの魅力を引き出し、笑いを誘うような構成・演出でなければいけないだろう。

その後3人は、はちみつ専門店・ラベイユを経て、ナポリピザ選手権3位の料理人がいるピッツェリア トラットリア ダ オカピートへ。土屋がピザ作りに挑み、宮下草薙が試食する。「世界1位!」と絶賛された土屋が「私、そういう人がいいです。作るのが好きなので」と思わせぶりに喜ぶと、草薙が「全然結婚できます、僕」と返すなど、最後にようやく両者が噛み合い、笑いが起きるシーンが見られた。

もう1つ、ロケの合い間に放送されていたのが、“松丸亮吾のゼロイチゲーム”。これは「Twitterで正解の単語を予想して“#ゼロイチ”でツイートし、最初に予想できた人が勝ち」「その単語はスタジオの誰かがどこかで言う」「賞品はポシュレの人気商品・鹿児島県産はねだしウナギの蒲焼き300g」というルールのゲームであり、「キ○○○○」という最初の1文字が発表された。

放送の間、スタジオのメンバーは「キ」からはじまる単語を連発していたが、番組前半パートの最後に正解の「キュート」を発表して終了。ただ、当選者発表もなく、あっさりしていたのはなぜか。「とにかくTwitterを使おう」という方針と、視聴者プレゼントをすることが優先され、それほど「盛り上げよう」という気持ちがないのかもしれない。

■大喜利に強い芸人がほしい生放送

天気予報とニュースをはさんで、11時55分から後半パートがスタート。「SNSでよく見る異常なほどモノを買いまくる人たち。その正体と理由を密着して解き明かす、『爆買いさんはどんな人?』」というナレーションで1つ目のコーナーが始まった。

画面左上に「5000万円爆買い」「8000万円高級車」「世界の経営者を客に持つ?(38歳)」の文字が映され、レポーター役のチョコレートプラネットが待ち構える中、ロールスロイス「ファントム」に乗ったセレブ女性が登場。カバン、腕時計、宝石、絵画、焼肉などの爆買いに密着し、そのたびに金額表示が加算されていくという演出に圧倒される。土曜日の昼にこれだけ散財する映像は「悪趣味」と紙一重だが、珍しいことは確かだ。

同時に「お客さんの90%が経営者」「海外によく行く」などのヒントを出しながら、スタジオメンバーに「爆買いさんのお仕事は?」というクイズが繰り返し出されていく。これに指原は「シンプルに親がお金持ち」、フワちゃんは「宝石ドロボー」とボケる一方、松丸は「投資家」、期間限定レギュラー“ゼロイチ推し”の曽田陵介は「経営者の事務所を売ってる人」と解答。生放送だけに、大喜利に強い芸人の必要性を感じてしまった。

女性の正体は、「象がいるホテルに泊りたい」「1日2000本以上のバラを集めてほしい」などのむちゃなオーダーに応えているという富裕層向けコンシェルジュ会社の代表・かぐみさん。コーナーは「買い物とは何?」という問いに「カッコイイ自分でいるためのツール。周りの方々が尊敬できる方ばかりなので、そういう方と会うときに合う身のこなしができるようになりたいなという憧れがあって」とコメントして終了した。

次のコーナーは、「ホテルでバカンス“ホカンス”」がブームであることを受けた「1時間だけ高級ホテル」。昨年オープンした高級ホテル「メズム東京 オートグラフ コレクション」を3組のファミリーが1時間だけ存分に楽しむという企画だ。

1組目は、母(34歳)、長女(12歳)、次女(10歳)、三女(5歳)の4人が訪れ、「アフタヌーンティー、100万円のスイートルーム、客室でメイクレッスン、フォトジェニックドリンク」を体験した。そのプランを合計すると総額115万550円かかるという。

2組目は、ハナコの菊田竜大(34歳)とハルカラ・和泉杏(37歳)の夫妻で、「100万円のスイートルーム、VIPプライベートルーム、客室で高級フレンチフルコース」を体験し、総額は235万1,800円。3組目は、父(29歳)、母(29歳)、長女(7歳)、長男(4歳)の4人家族で、「100万円のスイートルーム、宮崎牛A5ランク鉄板焼き、フォトジェニックドリンク」を体験し、総額は110万2,400円だった。

■指原莉乃のサポート役が足りない

後半パートはどちらのコーナーも高級志向。これは「裏番組のライバル『王様のブランチ』が庶民派路線だから逆を行っている」のだろうか。いずれにしてもマスを狙いに行っているとは思えず、重点ターゲットであるコアターゲット(13~49歳)のニーズにも疑問を感じてしまう。

最後は後半パートでも行われていた「ゼロイチゲーム」の正解を発表したが、ここでも「優勝者は番組終了後に番組公式Twitterで発表されます」というアナウンスのみで盛り上がることなく番組は終了した。結局、「ゼロイチゲーム」の賞品は、うなぎ300g×2名のみで、コーナーの高級志向とは真逆なのが気がかりだ。

ただ、それでも当初の賞品は「そらジローポーチ&トートバッグ」などの自社製品だっただけに、少しはレベルアップしているのだが……。次週のおでかけロケ出演ゲストを1週前に数分のみ登場させて出演者数を稼ぐやり方なども含めて、コスパ重視の方針が随所に見える。

番組全体を振り返ると、3時間弱で主なコーナーは「おでかけロケ」「セレブ女性密着」「高級ホテル体験」の3つのみと少なく、「トレンドや次世代のスターを“ゼロイチ”で生み出す」というコンセプトの面影はなかった。

エンタメニュース、テレビコーナー、週末トラベル、映画コーナー、BOOKブックコーナー、ごはんクラブ、買い物の達人、トレンド部、物件リサーチ、マンガコーナーと圧倒的な情報量でエンタメを網羅しつつハイテンポで見せていく『王様のブランチ』と比べると、物足りなさを感じてしまう。

そして最後にもう1つ触れておきたいのが、MC・指原莉乃のパフォーマンスについて。スタート当初からスタジオにトークの達者な芸人が少なく、期待の松丸亮吾と2年目・石川みなみアナも発言数はわずかで、盛り上がるシーンが少ないどころか、微妙な間が生じるあやうい瞬間もあった。

MCとして実績十分の指原ですら、「困って気心の知れたフワちゃんに助けを求める」という姿が目立つほど彼女の負担が大きいのは明らかだ。藤森慎吾、ニッチェ、横澤夏子、児嶋一哉、ミキ、パンサーが笑いを詰め込んで佐藤栞里を盛り立てる『王様のブランチ』と比べると一目瞭然であり、現状では「指原の魅力を最も感じづらい番組」という印象に留まっている。

ちなみに、視聴率の前4週平均は、前半の1部が個人3.1%・世帯5.8%、後半の2部が個人2.2%・世帯4.1%と、番組スタート時からほとんど変わっていない(ビデオリサーチ調べ・関東地区)。

数字にシビアな日テレがこの数字をどう見ているのかはわからない。しかし、前向きな試行錯誤を重ね、視聴率はさておき指原の支持世代が「毎週必ず見てツイートしたくなる」ような番組になってほしいところだ。

■次の“贔屓”は…勝負を賭けた2夜連続の生放送特番『FNSラフ&ミュージック』

『FNSラフ&ミュージック ~歌と笑いの祭典~』のMC陣

今週後半放送の番組からピックアップする“贔屓”は、28日・29日に放送されるフジテレビ系バラエティ特番『FNSラフ&ミュージック ~歌と笑いの祭典~』(第1夜18:30~23:10、第2夜18:59~23:09)。

コロナ禍で『FNS27時間テレビ』を休止しているフジテレビが、今夏は新たな特番を生放送。“歌と笑い”の2点に絞り、「2夜連続放送」「総合司会に新人アナ3人を抜てき」「そのサポート役に松本人志・中居正広・ナインティナイン・千鳥・アンタッチャブル」などの思い切った仕掛けが目を引く。

発表済みの「クセスゴ歌謡祭」から、生放送らしいシークレット企画まで、約9時間の生放送で何を見せてくれるのか。コロナ禍に苦しむ人々に笑顔と感動をもたらす番組になることを期待したい。