テレビ解説者の木村隆志が、先週注目した“贔屓”のテレビ番組を紹介する「週刊テレ贔屓(びいき)」。第188回は、8月28日・29日に放送されたフジテレビ系バラエティ特番『FNSラフ&ミュージック ~歌と笑いの祭典~』(第1夜18:30~、第2夜18:59~)をピックアップする。

コロナ禍で『FNS27時間テレビ』を休止しているフジテレビが今夏は新たな特番を生放送。“歌と笑い”の2点に絞り、「2夜連続放送」「総合司会に新人アナ3人を抜てき」「サポート役に松本人志、中居正広、ナインティナイン、千鳥、アンタッチャブル」などの思い切った仕掛けは功を奏したのか。

約9時間の生放送を振り返り、「収穫・課題ともに、何が残ったのか」を掘り下げていきたい。

  • 『FNSラフ&ミュージック』が生放送されたフジテレビ本社=東京・台場

■笑いと感動を巻き起こす圧巻コラボ

番組冒頭、「スポーツの祭典に沸く日本に新たな祭典が誕生する。今宵、一流のアーティストと一流の芸人がフジテレビに大集結」「この夏最大のエンタテインメント」というナレーションが流れた。

直後に3人の新人アナと松本人志、中居正広、ナインティナインが登場してオープニングトークがスタート。さらに、19組のアーティストと41組の芸人が出演することが発表されるなど、スケール感のアピールに終始していたが、新企画だけに当然だろう。

まずは以下、すべての放送内容をつづっていきたい(「LIVE表示なし」以外はすべてLIVE)。

第1夜は、千鳥の漫才、霜降り明星の漫才。乃木坂46の歌。ミキの漫才。出演者トーク。歌姫を取り巻くプロのTORIMAKI・白木善次郎(ロバート・秋山竜次)と中島美嘉。ハライチの漫才。ロッチのコント中に森高千里がスペシャルサプライズ。出演者トーク。TORIMAKI・白木善次郎と齋藤飛鳥。森高千里の歌。川崎鷹也の歌。かまいたちのコント。見取り図の漫才。

どぶろっくとIMY(山崎育三郎、尾上松也、城田優)のコラボ(LIVE表示なし)。出演者トーク。TORIMAKI・白木善次郎。ミルクボーイの漫才。浜崎あゆみの歌(LIVE表示なし)。出演者トーク。直電! 生ブッキング 明日来てくれませんか。

クセスゴ歌謡祭(LIVE表示なし)。出演者トーク。マヂカルラブリー×GENERATIONSの漫才×歌コラボ。ナイツの漫才。Awesome City Clubの歌。出演者トーク。第2夜オープニングアクト視聴者投票。フットボールアワーの漫才。中島美嘉の歌。爆笑問題の漫才。出演者トークで終了。

特筆すべきは、どぶろっくとIMY(山崎育三郎、尾上松也、城田優)のコラボだろう。バカバカしさでは最高峰のネタと、ミュージカル俳優たちの圧倒的な表現力、さらにそれを盛り上げる生バンド演奏やライティングは、『ラフ&ミュージック』の番組名にふさわしい笑いと感動があった。

「LIVE」表示がなく収録だったが、絶対に失敗できない目玉コンテンツだけに、クオリティファースト、セーフティファーストのスタンスで正解か。2夜を通じて最高のパフォーマンスだったからこそ、単なる漫才、コント、歌を並べるのではなく、“FNS”らしいコラボをもっともっと増やしてほしかった。

■生ブッキングで大物出演も不発に

第2夜は、松本人志&中居正広 生YOUNG MAN。アンタッチャブルの漫才。チョコレートプラネットのコント。日向坂46の歌。出演者トーク。悪い顔ニュース。ゆりやんレトリィバァのコント。Kis-My-Ft2の歌。出演者アフタートーク。

AMEMIYA×西川貴教「人生180度変わりました」。前日ブッキングゲスト・笑福亭鶴瓶が登場。EXITの漫才。EXILEの歌。出演者トーク。前日ブッキングゲスト・山田孝之が登場。サンドウィッチマンの漫才。バイきんぐのコント。

Toshl×美炎-BIEN-のコラボ歌。出演者トーク。悪い顔ニュース。前日ブッキングゲスト・本田翼が登場。出演者トーク。さだまさしの歌。リクエスト歌謡祭。東京03のコント(LIVE表示なし)。JO1の歌。出演者トーク。竹原ピストルの歌(LIVE表示なし)。

前日ブッキングゲスト・内村光良が登場。悪い顔ニュース。DA PUMPの歌。T.M.Revolutionの歌。ハイヒールの漫才。出演者トーク。MC陣で「明日があるさ」。

インパクトがあったのは、やはり歌と笑いのコラボで、AMEMIYA×西川貴教「人生180度変わりました」だった。一方で、前日ブッキングされた大物ゲストたちは、さほどトークの盛り上がりもなく、「ほとんどただ来ただけ」の状態で物足りなさを残した。ここは出演者に丸投げしすぎたのかもしれない。

もし歌と笑いのコラボが難しかったのであれば、日向坂46がBTSのダンスを完コピしたようなスペシャルパフォーマンスがもっとあってもよかったのではないか……。そう思ってしまうのは、「“FNS”という冠をつけたのなら、それくらい見られるだろう」と期待していたからだ。つまり、「この日、この番組しか見られない」ものが期待していたより少なかった。

■大型コーナーは9時間で2つのみ

あらためて2日間を振り返ってみると、大型コーナーは、「クセスゴ歌謡祭」「リクエスト歌謡祭」の2つのみ。その他は、通常のネタ番組と同じネタと、歌番組と同じ歌が大半を占め、その他も短尺のコンテンツをつないでいく形だった。

短尺をつなげる構成はネット動画に慣れた現代人向きかもしれないが、大型コーナーが9時間で2つのみだったことで、スケール感に欠ける印象があったのは否めない。しかも「クセスゴ歌謡祭」は、ほぼ通常放送のネタであり、この番組ならではの大型コーナーは「リクエスト歌謡祭」だけか。とはいえ、こちらもどういう意図のリクエストなのか全く分からず、ネット上の反応も微妙なものに終わった。

その一方で作り手の意図を感じたのは、『千鳥のクセがスゴいネタGP』以外、レギュラーバラエティを生かしたコーナーを作らなかったこと。その理由は、「新しいものを作るため」なのか。それとも、「視聴者を引きつけられる強いレギュラーバラエティがないから」なのか。『笑っていいとも!』のテレフォンショッキングを彷彿させる生電話や、「悪い顔」「美炎」など他番組で見慣れたネタが混じっていたことも含め、作り手側の難しさと迷いが見えた。

そんな難しさと迷いを出演者たちが感じ取ったのか、松本、中居、ナインティナイン、千鳥、アンタッチャブルら出演者たちのノリが今いちだった感がある。コロナ禍という背景はあるにしても、「盛り上げよう」「バカになろう」という前のめりな姿をほとんど見せなかったのはなぜなのか。普段はやりすぎて批判が目立つ爆笑問題・太田光の暴走が、今回ばかりは頼もしく見えてしまった。

これは「松本人志」の影響力が大きすぎて、そのキャラクターが番組全体に行き渡ってしまったからなのか。実際、松本がふだん通りのローテンションでクレバーな笑いを生み出すシーンもあれば、たっぷり取られたトークパートで芸人もアーティストも松本に気をつかってトーンを合わせるようなシーンが少なくなかった。

常々、松本は「しんどい」「もうええやろ」「何で俺?」など引き気味のトークをベースにしているが、瞬発力が求められる生放送特番は、「ぜひやりたい」「みんなで楽しもう」という前のめりな明るいキャラクターを中心に据えたほうがいいのかもしれない。

2夜にわたる特番は、新人アナ3人の「最後までご覧いただきありがとうございました」「9時間本当にありがとうございました」「ぜひまたいつかお会いしましょう。さようなら」というあいさつで終了。「またいつか」のフレーズにあいまいな未来がうかがえたが、貴重な生放送大型特番であることは間違いないだろう。

今回は構成・演出を見ると、スタッフサイドの時間、お金、自由が十分ではない様子が散見されただけに、もう少しいい条件のもとでの第2弾に期待したい。そのときは“FNS”らしいコラボ企画をもっと見せてくれるのではないか。

■次の“贔屓”は…コロナ禍の深刻化で有吉はどう振る舞う? 『有吉の夏休み2021』

『有吉の夏休み2021』の出演者たち (C)フジテレビ

今週後半放送の番組からピックアップする“贔屓”は、4日に放送されるフジテレビ系バラエティ特番『有吉の夏休み2021 密着77時間』(21:00~)。

今年で9年目の放送を迎える恒例の夏特番。今回は「グルメ&アクティビティ三昧」を打ち出しているが、コロナ禍が深刻化する中、芸能界屈指の常識人・有吉弘行はどんな姿を見せるのか。さらに「サプライズで有吉の結婚祝いをする」というだけに本人のリアクションにも注目が集まる。

有吉を囲む出演者には、池田美優、たんぽぽ・川村エミコ、小嶋陽菜、アンガールズ・田中卓志、とにかく明るい安村、生見愛瑠(めるる)、藤田ニコル、フワちゃん、平成ノブシコブシ・吉村崇(五十音順)。ファミリー感のある顔ぶれに、初参加のめるるがどんなスパイスになれるのか。