大手私鉄の特急には、乗車券だけで利用できる列車と、乗車券の他に特急料金などが必要な列車がある。京王電鉄や東急電鉄、阪急電鉄の特急は料金不要。小田急電鉄や西武鉄道、近鉄の特急列車は特急料金が必要になる。

東武鉄道の特急「リバティ」「スペーシア」などは特急料金が必要な列車だ。ところが、ある方法で特急「リバティ」に特急料金なし、つまり乗車券だけで乗れるという。それはいったいどんな方法だろうか。

  • 東武鉄道の新型特急車両500系「リバティ」

答えは東武鉄道サイト内「特急リバティの特急料金」のページにある。「東武日光・鬼怒川温泉・会津田島方面」の料金表の下に、小さな文字でこのように書かれている。

下今市以北停車駅相互間(下今市~東武日光間、下今市~会津田島間)のみ乗車の場合に限り、乗車券のみでご利用いただけます。

つまり、下今市駅から北側の区間で、その区間のみ「リバティ」に乗車する場合に限り、特急料金は不要ということになる。「停車駅相互間のみ」とは「この区間外から乗降する場合を除く」という意味。たとえば都心から日光方面へ行く場合、浅草駅から下今市駅まで特急券を買い、下今市駅から東武日光駅まで乗車券だけで引き続き乗車するような利用は不可。同様に都心へ向かう場合も、東武日光駅から乗車券だけで乗車し、特急券は下今市駅から……というような利用はできない。

  • 特急料金なしで「リバティ」に乗車できる区間(国土地理院地図を加工)

「特急リバティの特急料金」のページでは、さらに続けてこう書かれてある。

ただし、乗車券のみでご乗車の場合、座席の指定は行いません。座席の指定を行う場合は特急券が必要です。

これは「特急券なしでリバティに乗るときは、空いている座席に座っていいですよ。ただし、その座席を指定した特急券を持っている人が来たら移動してください」ということを示す。「座席を確保したい事情があるときは特急券を買ってください」である。

また、とくに気をつけたいこととして、この特例は「リバティ」のみ適用され、「スペーシア」では適用されない。「リバティ」がデビューした2017年4月のダイヤ改正で快速・区間快速が廃止され、下今市駅以北の区間を中心に乗車券のみで乗れる列車が減ってしまった。「リバティ」の特例はこれにともなう救済措置といえそうだ。

それにしても、下今市~会津田島間は62.3kmもあり、東武鉄道、野岩鉄道、会津鉄道の3社にまたがる長い区間だ。これだけの長距離を新型特急車両の快適な座席で、特別料金なしで乗れるとはお得感がある。かつて「AIZUマウントエクスプレス」が旧名鉄キハ8500系で運行された頃を思い出す。

SL「大樹」から特別料金不要の「リバティ」で会津田島へ。さらに会津若松に至れば「SLばんえつ物語」につながる。一度は旅してみたいルートだ。なお、「リバティ」を使用する通勤時間帯の特急「スカイツリーライナー」「アーバンパークライナー」も、一部区間において乗車券のみで利用できるとのこと。