元国税局職員さんきゅう倉田です。プロポーズの場所は『銀行』です。

毎年6月になると、国税局査察部、通称“マルサ”のお仕事の結果が発表されます。去年一年間に、どんな脱税を見つけたのか、どんな業種に脱税が多かったのか、何件くらい脱税を見つけたのか、さらに、今後どのような脱税を重点的に強制調査するのかを明らかにしてくれています。

ちなみに、“マルサ”という隠語は、映画『マルサの女』で有名になってしまったので、あまり使われなくなって、今では「サ」とか「6階」と呼ばれることが多くなっています。6階というのは『マルサの女』の上映当時、東京国税局の建物の6階に査察部があったからですが、そのため、他の国税局では、別の階で呼ばれているようです。

  • ことしのマルサ情報

近年、マルサの調査でよく聞くのは、消費税を利用したものです。みなさんは、物を買ったとき、サービスを受けたとき、対価としてお金を支払います。そのときに、消費税がかかります。みなさんはいつも消費税を払う側です。でも、お店からすると、消費税を受け取った側になります。お店は、たくさん物を売るので、たくさん消費税を受け取ります。

でも、お店も仕入れがあるので、消費税を払うことがあります。もらう消費税と払う消費税が発生するのです。お店は、もらう消費税と払う消費税の差を国に納めなくてはいけません。これが消費税のシステムです。

この消費税のシステムを悪用して、国に消費税を納めるのではなく、国から消費税を奪う人たちがいます。そういう悪質な人は増えていて、金額が大きくなると、マルサがやってきて退治してくれます。

去年は、化粧品の販売を利用した、消費税泥棒がいたそうです。

確定申告をせずに、税金を払わないで済ませようとする“無申告”の人たちも見つかりました。

無申告の人たちは全国的にたくさん存在しますが、マルサが強制調査をする悪質かつ大型の人間は、多くありません。去年は、4件でした。そのうちの一つは、とある会社員の人が、不動産の売買をして、もらったお金を他人の名義の預金口座に貯めこんで、申告も納税もさぼっていたそうです。

また、最近では、国際的な取り引きを行っている会社への調査を積極的に行っています。先ほどの、消費税を不正に奪っていく事件も、ほとんどが海外取り引きを利用したものです。日本は、他国と税金の条約を結んでいて、脱税者の情報をもらったりあげたりできるようになっていますが、すべての国と条約を結んでいるわけではないので、脱税者全員を告発することは難しいようです。でも、とってもがんばっています。

脱税が多かった業種は、建設業と不動産業でした。毎年のようにマルサの情報を見ていると「この業種はいつも脱税しているなあ」という印象を受けます。頻繁に「脱税の多かった業種ベスト3」にランクインしますし、「渋谷のギャル500人に聞きました。脱税の多そうなお仕事は何ですか」でも、トップ10入りしています。ちなみに、そのアンケートの1位は「おまわりさん」でした。

他にも、スパコンの開発を行う会社の脱税やネットを利用したカウンセリングセミナーをやっている人が脱税を行うなど、今どきっぽい事件があったようです。

脱税をすると、みんなお金をどこかに隠します。現金や金を他人に預けたり、他人名義の口座に預金したり、自分の隠し口座に預金することが多いのですが、やはり、一部には自宅に隠す人間がいます。

どんな所にお金があったか、マルサは毎年公開していますが、隠し場所は毎年同じです。

「寝室のクローゼットに、紙袋やダンボールに入れて置いてある」

ほぼこれ、いつもこれ、全く変わりばえしません。寝ているときがもっとも不安なのか、安心する隠し場所なのか、圧倒的に寝室に隠します。その脱税でためたお金をどうするかというと、借金を返したり、貯金したり、ギャンブルに使ったり、仕事で使ったりするそうです。

今後のマルサは、社会的に関心が高い所に調査をしていくそうです。メディアで目立ち、いけいけの事業をやっているそこのあなた。次は、あなたのまちにやってくるかもしれません。

さんきゅう倉田

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さんきゅう倉田

さんきゅう倉田

芸人、ファイナンシャルプランナー。2007年、国税専門官試験に合格し東京国税局に入庁。100社以上の法人の税務調査を行ったのち、よしもとクリエイティブ・エージェンシーに。ツイッターは こちら