元国税局職員 さんきゅう倉田です。好きな芥川賞受賞作は「限りなく透明に近い青色申告」です。

「ジェネリック」ってなに?

薬局に行くと「ジェネリックを希望されますか?」と聞かれます。ジェネリック医薬品とはなんなのでしょうか。

新しいくすりを作るには、莫大なコストがかかります。お金も時間も人手も必要です。でも、新しい画期的なくすりを開発できれば、製薬会社にとって大きな利益になります。発表すれば株価も上がって、良いことばかりです。

でも、苦労して開発したくすりを、成分を分析されて他の人にまねされたら、誰も新しいくすりを開発しなくなってしまいますよね。だから、くすりを開発したら、特許をとって、他の人が同じものを作れないようにします。

しかし、特許の期間というのは決まっていますから、20年とか25年で切れてしまいます。そうすると、そのうち、違う会社が同じ成分のくすりを作るようになります。これが、ジェネリック医薬品です。

ジェネリック医薬品はどのくらい使用されている?

ジェネリック医薬品は、開発コストが著しく低いので、ジェネリックでない元々のくすりより安くなります。だから、国としては、多くの人にジェネリック医薬品を使ってほしいと考えています。

みなさんが処方箋を出してもらって購入するくすりは、3割の価格で手に入れることができます。残りの7割は国が負担してくれているからです。価格の安いジェネリックなら、国の負担が軽減されます。ジェネリック医薬品をどの程度利用しているかというアンケートの結果が、日経新聞に出ていました。

業種ごとにジェネリック医薬品の使用率を計測すると、全業種の平均は68%なのに対し、医師、看護師、病院のスタッフでは、64%だったそうです。特に、40歳以上の方の使用率が低い、とのことでした。

この記事を見て、なぜそのようなことが起こるのか分からなかったので、知人の40代の薬剤師さんに、この記事について聞きました。すると「ぼくもジェネリック使いません」とおっしゃいます。

なぜですか、と尋ねると「ゴディバと明治だったら、ゴディバ食べるじゃないですか」とおっしゃっていました。つまり、価格は高いけれど、価格が高い方が品質はいい、という考え方が、くすりにも当てはまるのかもしれません。

また、別の薬剤師さんは「酒で言うと、ナポレオンと鏡月くらい違う」と例えられたそうです。ここで、念のために言っておきたいのですが、明治が悪いとか鏡月が悪いとかそういうことを言っているわけではありません。

もちろん、高いものの方が味や品質においては良いものである可能性が高く、コストパフォーマンスやリーズナブルを求めた場合は安いものの方が良いわけですから、絶対的にどちらがいいとかないのですが、薬剤師さんはそのように例えてらしたのです。

そこで、ジェネリックについてさらに聞いたところ、元々のくすりと全く同じではないそうです。添加物とか形状も異なりますし、成分は同じでも、製造方法が異なるので、完全に同一のものとはならないのです。一部には、全く同じものもあるそうですが、そのような事実を踏まえると「ぼくはジェネリック使いません」という薬剤師さんの気持ちは理解できます。

薬剤師さんの話を聞いて、元々のくすりが良いか、ジェネリック医薬品が良いかは判断できません。ぼくは、週に3回は明治のチョコレートを食べますし、週に1回は鏡月を飲みます。ゴディバは、誰かにプレゼントするときに買いますが、ナポレオンは飲んだことがありません。

くすり屋さんで勧められたらジェネリックを買うでしょうし、新薬を勧められたら迷わずに買うと思います。誤解なく正しい情報を手に入れて、責任を持って自分で判断するのが大切です。

さんきゅう倉田

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さんきゅう倉田

さんきゅう倉田

芸人、ファイナンシャルプランナー。2007年、国税専門官試験に合格し東京国税局に入庁。100社以上の法人の税務調査を行ったのち、よしもとクリエイティブ・エージェンシーに。ツイッターは こちら