2019年10月に予定されている消費増税が目前に迫ってきています。2%分の増税が家計に与えるインパクトは決して小さくなく、国民の家計に配慮した対策が政府から次々発表されています。今回は、消費税が8%から10%に上がる代わりに家計負担を抑えるための対策のうち、日常の家計運営に取り入れたい3つの対策を紹介します。

  • キャッシュレス決済、使っていますか?

    キャッシュレス決済、使っていますか?

キャッシュレス決済時のポイント還元

2019年10月からの消費増税に向け、軽減税率と並ぶ消費増税対策の柱として注目しておきたいのが、2020年6月までの9カ月間実施される「中小店舗でのキャッシュレス決済時のポイント還元制度」です。

これは、買い物や飲食の代金を現金払いではなく、キャッシュレス決済をした消費者にはポイントを還元するというものです。ポイント還元率は5%ですが、フランチャイズチェーン店では2%の還元率が適用されます。

同じ商品を買っても現金で払えばポイントはありませんが、クレカやデビットカード、電子マネーなどでキャッシュレス決済をすれば、ポイントが還元される仕組みです。クレジットカードなどでポイントを貯めている人はイメージしやすいのではないでしょうか。

ただし、中小・個人の店で買うことが要件で、対象外の店でキャッシュレス決済をしても、ポイント還元制度は適用されません。対象となる店は資本金や従業員数で決められるので、消費者が判断するのは難しい部分もありますが、7月下旬頃から消費者に向けたポスターやチラシ、アプリなどによる対象店舗の広報が行われる予定です。

ちなみに、商品自体がポイント還元制度の対象外のものもあります。商品券やプリペイドカード、郵便切手類、宝くじ、自動車、新築住宅などは対象となりません。一方で、軽減税率の対象となる食品類でもポイント還元されるようですから、買い物をする店や支払い方法によっては実質負担が今より軽くなるものもあるようです。

たとえば、(中小の)スーパーで本体価格5,000円分の食品を買うと、軽減税率の8%が適用されますね。現金払いなら5,400円を支払わなければなりません。ところが、キャッシュレス決済すれば5%分ポイント還元されて、実質負担額は5,130円となる計算です。

税込支払額:5,000円+消費税400円=5,400円
ポイント還元金額:5,400円×5%=270円
実質負担額:5,400円-270円=5,130円

うまく活用しておトクな買い物を目指しましょう。

プレミアム付商品券

キャッシュレス決済を行うすべての消費者を対象とするポイント還元制度に対し、対象者が決められているのが「プレミアム付商品券」の販売です。

プレミアム付商品券とは、地方自治体が発行する商品券で、額面500円の商品券を1枚あたり400円で買えるというものです。実際には10枚セットで額面は5,000円分(商品券価格は4,000円)からの販売となりますが、上限1人あたり額面2万5,000円(同2万円)まで購入可能です。

このプレミアムが付いた商品券を購入できるのは、次の条件に該当する人です。

・2019年度住民税非課税者(課税基準日2019年1月1日/※住民税課税者と生計同一の配偶者・扶養親族、生活保護被保護者等は除く)
・学齢3歳未満の子(2016年4月2日~2019年9月30日までの間に生まれた子)が属する世帯の世帯主

プレミアムは20%ですから、この商品券で買い物すれば2%の増税になっても、今より18%おトクに買い物ができる計算になります。軽減税率が適用されるものなら今より20%おトクになりますね。

ただし、この商品券には利用制限もあります。利用できるのは発行自治体にある小売店。また、原則2020年3月までの6カ月間に使用と決められています。

それでも、ほとんどの家庭では6カ月間で食費や日用品などにかかる費用は2万5,000円を軽く超えるはず。対象となる人は上手に利用しながら、6カ月間で最高5,000円分の家計節約につなげてみてはいかがでしょうか。

幼児教育・保育の無償化

こちらも対象世帯が絞られてはいるものの、多くの子育て世帯に関係してくる制度が「幼児教育・保育の無償化」制度です。消費増税分を財源とした子育て支援策の充実を政府は検討していましたが、5月10日に改正子ども・子育て支援法が成立。消費税増税に合わせて2019年10月から幼児教育の無償化が決定されました。

「幼児教育・保育の無償化」は、具体的には次の利用料が無料になります。

・幼稚園
・認可保育所
・認定こども園

対象となる世帯は、

・3~5歳児:原則全世帯
・0~2歳児:住民税非課税世帯

なお、国の基準を満たさない認可外保育所やなどベビーシッターなどでも、経過措置として5年間は月3万7,000円(0~2歳は月4万2,000円)を上限に補助されます。

通園送迎費、食材料費、行事費など実費として支払いが必要な費用は無償化の対象外ですが、子育て世帯にとって幼児教育費が抑えられるのは、増税後の家計の強い味方となることでしょう。

政府の対策よりも自己の家計管理が大切

消費税率が10%となったとしても、消費者の利用次第で今よりも2~20%程度、家計負担が抑えられることも可能になりそうなポイント還元制度やプレミアム付商品券。10%という過去最高の消費税率にも負けない家計を維持できるかもしれません。

しかしながら、これらは期限が限られた一時的な措置です。「今より割安に買い物できるから」と、節約意識を失ってしまうと期限経過後の家計にずっしり響くことは容易に想像できます。消費増税から家計を守れるのは個々世帯の家計管理にほかなりません。今一度、自分の家計を見直してムダなものは買わないクセをつけ、長期的な視点で家計管理を心がけましょう。

たとえば、ポイント還元で5%割安になった分を貯金に回したり、教育費が無料になったりする世帯では、浮いたお金で学資保険や定期積み立てを始めるのもいいでしょう。利用できるものは賢く活用し、家計管理を怠らないようにしてください。

■ 筆者プロフィール: 續恵美子

女性のためのお金の総合クリニック「エフピーウーマン」認定ライター。ファイナンシャルプランナー(CFP)
生命保険会社で15年働いた後、FPとしての独立を夢みて退職。その矢先に縁あり南フランスに住むことに――。夢と仕事とお金の良好な関係を保つことの厳しさを自ら体験。生きるうえで大切な夢とお金のことを伝えることをミッションとして、マネー記事の執筆や家計相談などで活動中。