軽減税率ポイント還元制度など、消費増税に対する政府のさまざまな施策がメディア等で取り上げられてるせいか、過去の増税時に比べて消費者は落ち着いているような感じを受けます。

とはいえ夏のボーナスが入って間もないこの時期、増税前の「駆け込み消費欲」が一気に上がる人が増えてくるかもしれません。後になって損した気分にならないよう、増税前に買うほうがいいものと、買わないほうがいいものを知っておきましょう。

  • 増税前に買ったほうがいいものとは?

    増税前に買ったほうがいいものとは?

増税前に買ったほうがいいもの

軽減税率が適用されず、支払額(税込価格)が上がることがわかっているものは増税前に買っておくことを検討してみるといいでしょう。

・家電製品

テレビやパソコン、炊飯器やオーブンレンジなど、多くの家電製品は万円単位の価格ですから、製品によっては数百円~数千円支払額が増えることになります。買い換えを検討している人は増税前に買っておくのがいいでしょう。

加えて最近の家電製品は省エネ性が向上されてるものが多く、買い換え前後の製品によっては電気代が節約できるものもあります。たとえば、環境省が運営しているサイト「しんきゅうさん」で10年前に買ったテレビの場合で電気代比較をシミュレーションしてみると、年間電気代は約1,500円節約できる結果となりました。今使っている家電製品によっては、ランニングコスト的にも増税前に買い換えするのがいいかもしれませんね。

ただし、後述しますが、地域や買い換える製品によっては増税後に買うほうがお得になる場合もあります。

・入場券の前売り券や乗車券など

買ってすぐに使わなくても、有効期限内ならいつでも使える前売り券などは増税前に買っておくのがいいでしょう。特にアミューズメントパークの入場券などは値上がりが幾度となく行われ、高価なものもあります。レジャー費の負担を和らげるために2%分でも節約しておきましょう。

乗車券も同様です。あらかじめ乗車日が2019年10月1日以降であることがわかっていれば、9月30日までに予約購入することで8%の税率になります。乗車日が特定されていない回数券も9月30日までに買っておけば、増税後にもそのまま使えます。ただし、その回数券に有効期限が設定されているかどうかは確認が必要です。

自動車は増税後に買ったほうがいい!?

本体価格が大きく、増税対策としてのポイント還元制度も対象とならない自動車は増税前に買ったほうがお得と思う人もいるようですが、できれば増税後を待って買うほうが節約につながる可能性が高いです。

自動車を購入するときには消費税以外に「自動車取得税」「自動車重量税」「自動車税」がかかります。しかしながら、消費増税に伴い、現在一般乗用車で3%、軽自動車で2%かかる自動車取得税が廃止されます。また、購入する自動車の環境性能に応じて自動車税が減税あるいは非課税となる予定です。つまり、増税で2%消費税が上がっても、総合的には増税後に買ったほうが税金上はお得になります。

しかしながら、税制改正を見込んでディーラーなどがキャンペーンを行う可能性は考えられますから、情報チェックは欠かさないようにしましょう。

なお、取引価格が50万円以下の自動車を購入した場合には、そもそも自動車取得税はかかりません。50万円以下で中古車を買うような場合には、増税前のほうがトータルの出費を抑えられることもあります。

場合によっては買わないほうがいいもの

・常備薬、ビタミン剤など

医薬品や医薬部外品は軽減税率の対象とならず、10月からは消費税率10%が課されます。

具合が悪いとき、不調なときなどにいつでも服用できるように常備しておく頭痛薬や胃薬などは、おそらくどの家庭でも必要なものですね。少しでもお得にに買うためには、できれば増税前に買っておくのがよさそうです。

しかしながら、セルフメディケーション税制の対象となる医薬品類を買っている人はそうとも限りません。セルフメディケーション税制では1月1日~12月31日までの1年間に購入した対象医薬品類の合計金額が1万2,000円以上になると、その年の所得から控除できて所得税が安くなる優遇税制です。

このセルフメディケーション税制の購入金額は「税込価格」で計算します。1万2,000円まであと少しという人は、10%になるのを待って年末までに購入することで、セルフメディケーション税制の対象金額を積み上げやすくなります。

例:本体価格3,000円のビタミン剤は、増税前は3,240円、増税後は3,300円
60円分支出が増えるが、その分、1万2,000円に近づきやすくなります。

すでに今年の購入額が1万2,000円を超えている人や、そもそも1万2,000円に届きそうにないという人は増税前に買っておくほうが2%分おトクです。

・省エネ家電製品

家電製品は「増税前に買ったほうがいい」旨を上述しましたが、一部の省エネ家電や地域によっては例外もあります。

たとえば、東京都では環境対策も兼ね、消費増税に合わせて「東京ゼロエミポイント」事業を実施することになっています。これは、増税となる10月1日以降に省エネ家電(エアコン・冷蔵庫・給湯器)に買い換えると、機器の容量などに応じて1台あたり1万~2万1,000ポイントがもらえるというものです。1ポイント=1円として商品券などと引き換えられるため、実質負担は少なくなります。

例:本体価格20万円の省エネ冷蔵庫を買う場合、増税前は21万6,000円、増税後は22万円

4,000円分支出が増えるが、仮にもらえるポイントが1万円分だとしても、6,000円分がお得になる計算です。

実際に買い換えを検討している人は、実施要項などで対象となる製品や条件をしっかり調べておくことが大切です。東京都以外に住んでいる人も、自分の自治体で同様な制度があるかどうか確認してみましょう。

「必要だから買う」ことを忘れず!

2%の増税は家計への影響が少なくありませんから、増税前に買えるものは税率が8%のうちに買っておくといいですね。ただし、必要のないものまで買うのは「増税に関係のない単なる支出増」になることに注意してください。増税だからと慌てずに、まずは当面1年くらいの必要性をイメージしながらリストアップし、増税前後のどちらで買うのがいいか、購入タイミングを検討するようにしてください。

■ 筆者プロフィール: 續恵美子

女性のためのお金の総合クリニック「エフピーウーマン」認定ライター。ファイナンシャルプランナー(CFP)
生命保険会社で15年働いた後、FPとしての独立を夢みて退職。その矢先に縁あり南フランスに住むことに――。夢と仕事とお金の良好な関係を保つことの厳しさを自ら体験。生きるうえで大切な夢とお金のことを伝えることをミッションとして、マネー記事の執筆や家計相談などで活動中。