今、毎日のようにワイドショーを賑わせているニュースといえば、セクシャルハラスメント。セクハラをきっかけに、地位や信頼を失ってしまった著名人は数知れない。しかし、これは決して他人事でなく、私たちの『職場』でも起こりうること。この連載では、日本最大級の社労士事務所「大槻経営労務管理事務所」の薄井崇仁氏に解説してもらい、『現代のセクハラ』に迫る。第五回は「セクハラ加害者にならないために、今すべきこと」。

  • セクハラ加害者にならないために、今すべきこと

セクハラ加害者にならないために、すべきことは?

これまで解説してきた通り、最近のセクハラは、知らず知らずのうちにセクハラを行ってしまっているケースが多くあります。冗談やコミュニケーションのつもりだった行動が「セクハラだ」と言われてしまうこともあるのです。最終回の今回は、セクハラ加害者にならないためには、日頃どんなことを意識して行動すればいいのか。3つのポイントに分けて解説していきます。

1.【セクハラの知識をつける】

セクハラに対する正しい知識がないばかりに、無意識のうちにセクハラをしてしまっているケースが多く存在します。どのような行為がセクハラに当たるのか、過去にどんなケースが発生していて、どういった判断基準でセクハラと認定されているのかを知っておきましょう。

また、同じ言動や行動だとしても、セクハラとなる場合とならない場合があります。例えば、ある女性が「スタイルいいね」と言われたとします。同性の同僚から言われたとすれば、褒め言葉と受け取れますが、それが男性上司から言われたことであれば、「いつも見られているのかしら? いやらしい目で見られているのかも?」と不信感と不快感を同時に与えてしまう可能性もあります。

受け手がどう感じるかは、相手やシチュエーションによって変わってくるのだということを理解しておきましょう。

2.【自分の立場や日頃の行動を自覚する】

職場における日頃の自分の言動や行動が、周囲にどれだけの影響を及ぼすのか。業務を遂行するために本当に必要なものなのか。そういったことを常に意識していなければなりません。

特に、役職者やベテラン社員の中には、昔のノリで女性を軽視するような発言や、下ネタを言ってしまう人もよく見かけます。本人は冗談のつもりかもしれませんが、周囲にとっては不快に感じる行為です。そのような上司の軽率な発言に部下は敏感なのだということを認識しておかなければなりません。自分の立場わきまえて、責任ある行動をすることを心掛けましょう。

また、そのために日頃から自分の言動や行動が適切かどうかをセルフチェックすることが大切になります。何をすればいいのかわからない場合には、官公署が公表している「セクハラチェックリスト」などの活用をおすすめします。セルフチェックだけでなく、周囲の人たちの客観的な意見を聞いてみるというのも、自分の行動を認識するためには効果的です。

3.【問題意識を持つ】

SNS上でのセクハラ告発「#MeToo」。アメリカのハリウッド女優が映画プロディーサーに対して行ったことがきっかけとなり、その活動が日本にも広がっています。今や、セクハラが問題化する場面は職場だけではないのです。自分がとった行為が、SNS上にさらされ、大騒動となってしまうこともあり、その影響は計り知れません。「そんなつもりはなかった」「軽いノリのつもりだった」という言い訳が通用しない事態を招いてしまうこともあります。

もちろん、セクハラと認定されれば会社からのペナルティや、最悪の場合には損害賠償責任、刑事罰に問われるといった社会的制裁を受ける可能性もあります。「セクハラが許されない社会」なんだということを理解しておかなければなりません。最近では、女性から男性への逆セクハラや同性間でのセクハラも問題視されていますので、性別を問わず、誰もがセクハラ当事者になるということも認識しておきましょう。

セクハラへの問題意識を持つべし

重要なことは、どれだけセクハラに対して問題意識を持っているかです。セクハラ加害者の大部分は、セクハラに対しての認識の甘さや自分には無関係といった、いい加減な考えから、無意識のうちに行為を犯してしまっています。問題意識を持ったうえで、正しい知識を身につけ、自身の日頃の言動や行動を認識することがセクハラ加害者にならないためには必要となります。

また、セクハラ加害者となるのは、セクハラの行為者だけとは限りません。会社に対して使用者責任が発生する場合があります。過去の判例ではセクハラ行為者に対してだけでなく、会社にも賠償責任を命じたケースがあります。

会社としては、「どんなことがセクハラに該当するのか」「セクハラをしたらどのような処分になるのか」といったことを従業員に周知することが大切になります。その方法として、社内研修やグループディスカッションの実施をおすすめします。セクハラに対する社内での目線合わせも重要なことです。

筆者プロフィール: 薄井 崇仁

大槻経営労務管理事務所 人事BPO事業部 執行役員。2007年の入所後、大小様々な規模のクライアントの労務相談およびアウトソーシング業務を担当。その後従業員からの問い合わせに直接対応する「社労士ダイレクト」事業部に配属。現職では、執行役員としてクライアントに対し総合的なアウトソーシングサービスを提供しており、人事BPOサービスの開発にも積極的に取り組んでいる。労働環境に様々な変化が起きている現在、企業にとってベストは何かを考えて課題解決へと導く。丁寧なヒアリングをモットーにクライアントのチャレンジを全力でサポートしている。