今、毎日のようにワイドショーを賑わせているニュースといえば、セクシャルハラスメント。セクハラをきっかけに、地位や信頼を失ってしまった著名人は数知れない。しかし、これは決して他人事でなく、私たちの『職場』でも起こりうること。この連載では、日本最大級の社労士事務所「大槻経営労務管理事務所」の薄井崇仁氏に解説してもらい、『現代のセクハラ』に迫る。第四回は「職場でセクハラに遭わないためにすべきこと」。

  • 職場でセクハラに遭わないためにすべきこと

今日からできるセクハラ防御法

これまで、実際にあったセクハラの事例ボーダーラインについて紹介してきましたが、今回は、セクハラ被害に遭わないためには、日頃どんなことを意識して行動する必要があるのか、職場でのセクハラ防衛策4つを紹介しましょう。

1.【意思表示をする】

職場で起こるセクハラの中には、加害者が自覚していないケースが多くあります。「場を盛り上げようとして」「好意があるから」といった身勝手な理由から、無意識のうちに相手が不快に思う行動をとってしまう場合があるのです。そのような行為を受けたときには、「やめてほしい」とはっきり自分の意思を伝えて、「その行為は、他人を不快にさせている」と相手に自覚してもらうことが重要になります。

ただし、上司や先輩など立場が上の相手に対しては、直接言いづらいこともあるため、会社の人事部や相談窓口など第三者を通して伝える方法をとることが望ましいでしょう。不快に思っている行為については、一人で抱え込まずに、声を上げて拒絶するといった意思表示が大切になります。

2.【誤解を生む格好をしない】

露出度の高い服装や派手な化粧など、性的な印象を与えやすい身なりはセクハラの対象となる可能性が高いです。本人にはそんなつもりがなかったとしても、周囲に「性的なアピールだろう」と勘違いされてセクハラ行為をされてしまうといったことがあるかもしれません。人は見た目で判断されることが多いです。

勘違いしたセクハラ加害者から「誘っていると思った」「ハニートラップだ」なんて言われることのないよう、日頃から職場に適した格好をすることを心掛けましょう。

3.【私用のメールやLINEは交換しない】

職場で「業務連絡のため連絡先を教えてほしい」と言われ、断れずにプライベートのメールアドレスやLINE IDを交換してしまったという経験がある人も多いのではないでしょうか。業務連絡にプライベートの連絡先は必要ありません。きっぱりと断るようにしましょう。連絡先の交換をきっかけに、業務連絡だけではなくプライベートな連絡まで届くようになり、トラブルに発展することは多々あります。また、注意すべきは、社内だけではありません。過去にはこんなケースがありました。

ある女性社員が接待の席で取引先の部長からLINE IDを聞かれ、断りきれず交換してしまったそうです。最初のうちは、仕事の連絡が多かったのですが、そのうち「食事に行こうよ」といった誘いや「かわいいね」「好きだ」といったメッセージが毎日送られてくるまでにエスカレート。本人では解決できず、最終的には会社間の問題にまで発展する事態を招いてしまったのです。

このようなトラブルに巻き込まれないよう、取引先など断りづらい相手に対しては、「会社のルールで交換できないことになっています」「ご用件があれば、会社の携帯電話へご連絡ください」などといった断る理由をあらかじめ用意しておくことも重要でしょう。

4.【周囲に目を向ける】

セクハラ被害者にならないためには、周囲に目を向けることも必要です。今までセクハラ行為を受けていなかったとしても、職場内にセクハラが存在する場合、次の標的となる可能性もあります。

もし、セクハラと疑われる行為を目撃した場合は、上司への報告、被害者へのフォロー、相談窓口の活用を促すなど、対処に向けた行動をとりましょう。また、セクハラ行為が発生した際に相談し合えるよう、日頃から周囲と連携しておくことも重要です。

「私には無関係」と目をつぶった結果、職場内でセクハラが蔓延してしまい、自分自身も巻き込まれてしまう、なんてことがあるかもしれません。セクハラは対岸の火事では済まされないのです。

セクハラの餌食にならないために……

新型セクハラ、逆セクハラなど現代のセクハラには、さまざまな種類があり、セクハラなのかどうか判断しがたいケースも数多くあります。セクハラ被害者にならないための一番の防御法は、不快に感じている行為については、はっきりと「NO」と伝えることです。相手に対して声を上げて意思表示をすることが重要となります。

また、日頃から職場内にセクハラの芽がないか注意を向けて、周囲と連携を図っていくことも大切になります。万が一セクハラを受けてしまったいうときに備えて、事前に就業規則や社内ガイドラインなどの社内ルールや相談窓口をチェックし、セクハラが発生した際の対処方法を理解しておくことも必要となります。職場全体でセクハラがない環境づくりを心掛けましょう。

筆者プロフィール: 薄井 崇仁

大槻経営労務管理事務所 人事BPO事業部 執行役員。2007年の入所後、大小様々な規模のクライアントの労務相談およびアウトソーシング業務を担当。その後従業員からの問い合わせに直接対応する「社労士ダイレクト」事業部に配属。現職では、執行役員としてクライアントに対し総合的なアウトソーシングサービスを提供しており、人事BPOサービスの開発にも積極的に取り組んでいる。労働環境に様々な変化が起きている現在、企業にとってベストは何かを考えて課題解決へと導く。丁寧なヒアリングをモットーにクライアントのチャレンジを全力でサポートしている。