添加物も食塩同様、摂取量と生体への影響を考える必要がある

おそらく一番多くの人が気になっているであろう添加物の「危険性」について、最も大事なことを本日はお伝えしておこうと思います。この話さえ覚えておけば、様々な情報で足下がふらつくこともないはずです。

添加物の安全の基準点って?

まずはイヤかもしれませんがグラフを見てください。添加物だろうが食塩だろうが砂糖だろうが、この世のあらゆる口に入る物質には、無害な量、利益のある量、毒性が見られる量、そして致死量というものがあります。

例えば、食塩の致死量は3g/kg(3gを体重倍するという意味)です。この場合の致死量は、体重60kgの成人10人が、3gの60倍で180gを摂取すると、10人のうち5人が死亡するであろうという数値であり、100%この量を食べると誰でも死ぬというわけではありません。食塩の場合、人間は取らないと死んでしまいますので、成人男性の推奨食塩摂取量、1日6gが下記のグラフのオレンジの丸あたりに来るわけです。

物質の摂取量と生体への影響の関係

そして致死量はともかく、食品添加物が健康に何らかの影響を及ぼしていいわけがないので、1日の摂取量をユーザーが気にしなくても達成できるよう、ADI(一日摂取許容量)という数値が義務づけられています。ADIは生涯毎日摂取しても無害な量として、先の図の無毒領域の量のさらに100分の1になるように決められています。

しかし、その中毒量が正しくないと主張する人たちもいます。その人たちは、添加物ごとに義務づけられた実験データをあげて、中毒量でのデータを添加物としての微量摂取でも起こりうるという理論展開をすることがあります。ですが、この中毒量は1社どころか1国ですらなく、WHO(世界保健機構)をも巻き込むレベルの研究の積み重ねで得られた情報です。筆者としては、これを信じないと言い出すと、そもそも科学とはなんなのか?という話にさえなってしまうように思うのです。

前回お話した、人工甘味料を例に挙げてみましょう。アセスルファムKの致死量は7.4g/kgであり、少なくとも食塩の倍は安全と言えます。悪く言われることの多いアスパルテームでさえ、1日に100包以上摂取しない限りADIにすら届かない。それでも無毒領域はさらにその100倍なので、1万包、30箱以上摂取して初めて毒性が出るかも……という量なわけです。

ちゃんと栄養を取れているかに意識を

では、急に発がん性などが見つかったらどうするの?という疑問にも答えておきましょう。当然様々な研究の結果、新たな危険性が見つかることがあります。最近ではアカネ色素などに安全性の問題がありそう……ということで、使用禁止になっています。しかし、そもそもの利用量が少ないので、被害は当然出ていません。消費者が気にしなくて安全に快適に使えるよう、食品業界だけでなくあらゆる業種、政府、そして世界機関まで連携しおびただしい数の人が働いています。

確かに、添加物はあらゆる食品の味を変えてしまう万能性を持つため、低栄養高カロリーなものを「栄養豊かな食べ物」と錯覚させてしまうことができます。要するに、食べ物の本質を見て、ちゃんと栄養を取ることにも頭を使うえるかどうか、すべては貴方次第と言えます。ただ単純に、「添加物=悪い」という考えは改めていただきたいのです。

筆者プロフィール : くられ

『アリエナイ理科ノ教科書』(三才ブックス、シリーズ累計15万部超)の著者。全国の理系を志す中高生から絶大な支持を得ており、講演なども多数展開している。近著に『ニセモノ食品の正体』(宝島社)がある。メールマガジン「アリエナイ科学メルマ」ツイッターなどで、日々に役立つ話を無料配信している。また、12月20日には、「シリーズ刊行10周年記念イベント」を開催する。