人工甘味料の正体って?

ノンカロリーコーラの類がここ何年か、急激においしくなったと思いませんか? そんなおいしさの立役者こそ、アセスルファムKとスクラロースなどの人工甘味料なのです。ではこの添加物は一体どのようなものなのでしょうか。

甘味は糖類の数百倍

このふたつを簡単に言うと、非常にさわやかで変な味が少ない優れた添加物と言えるでしょう。アセスルファムKは1967年ドイツのヘキスト社(※)の科学者によって、偶然見つけられた強力な甘味を持つ化合物です。

アセスルファムKはショ糖の200倍に当たる甘さを持ち、味わいも砂糖に近いものになっています。高濃度の溶液でも人工甘味料にありがちなメタリックな風味などが少なく、そこに通常の砂糖や他の甘味料(アスパルテーム、エリスリトール)と合わせると苦味がマスキングされ、自然な味に近づきます。

次にスクラロースについてです。分子構造は、砂糖分子に塩素が3つ張り付いたもので、分子構造を見る限りは頼りない気さえするのですが、人工甘味料の中では後発だけに最も高性能といえます。

元々は医薬品の原料となるべく、大学の研究室で作られたものなのですが、教授が生徒に「テストしておいてくれ」と伝えたところ、「テイストしておいてくれ(味見してみて)」と誤って伝わったことで、極めて甘いことが確認されたのが発端。その後、様々な安全検査に合格し、現在使われるに至っています。

スクラロースの甘味は砂糖の600倍。これは現在の他の甘味料に比べても群を抜いて高性能といえます。酸や熱にも大変に強く、オーブンで焼くようなクッキーに使っても、あまり分解しないという堅牢さも、他の甘味料を圧倒しています。

ただし、350度で数分さらされると分解が始まると言われています。これは諸説ありますが、塩化水素などの有害な分解物ができてしまう可能性もあるため、温度の偏りができやすい家庭用オーブンでの使用は推奨されていません。仮に多少分解したとしても、そもそもの使用量が少ないので、毒性があるレベルには底達しません。

企業努力は「配合」にあり

これら人工甘味料はご存じの通り、清涼飲料水はもちろん、歯磨き粉やダイエットシュガーなど幅広く使われています。しかし、人工甘味料の本懐というのは、実は「配合」と言えます。

実際に人工甘味料の単体を仕入れたとしても使用法は非常に難しく、甘すぎる甘味料は苦みを持ち、また、それぞれ独特のエグ味やニガ味、メタリックな風味などを持っています。ゆえに、カロリーゼロの人工甘味料単体で、砂糖に勝るとも劣らない甘さを醸し出すのは極めて困難なのです。この割合こそが本当の意味の企業秘密であり、実際に挑戦してみても、近い味にはなかなかなりません。

いずれも安全性に関しては、心配の部類に入らないと筆者は考えています。よく人工甘味料を使ってもダイエットにならないだの、人工甘味料自体が毒であるといったことが話題になっていますが、その話は次回、説明します。

※1999年にフランスのサノフィ・アベンティス社に合併

筆者プロフィール : くられ

『アリエナイ理科ノ教科書』(三才ブックス、シリーズ累計15万部超)の著者。全国の理系を志す中高生から絶大な支持を得ており、講演なども多数展開している。近著に『ニセモノ食品の正体』(宝島社)がある。メールマガジン「アリエナイ科学メルマ」ツイッターなどで、日々に役立つ話を無料配信している。また、12月20日には、「シリーズ刊行10周年記念イベント」を開催する。